24話「なんとかドラゴンになりたい」
双子の兄の名はケニー。運動神経、頭の良さ、すべてが僕の上位互換。けど、僕はそれでよかった。自慢の兄、僕の目標。兄には、ずっと僕に道を示す存在であってほしかった。
ケニー・アルバート。彼は僕の兄、僕の道しるべ、そして...
彼は、僕自身。
「体に違和感があるものは動くな!戦えるものはあの白いドラゴンだけを狙え!」
戦場はザインの魔法によって混沌と化していた。変身させられた隊員は8人ほど、特にザインに近づいていた者たちだ。
だが、あくまで見た目を変えられただけ、攻撃をしてこなければ問題はない。
ガミルは地を強く蹴ると、一直線にザインの方向へ突撃する。
「君はそれしかないのかい?」
ザインはふっと笑うと、近くにいたドラゴンを手でつかみ、投げ飛ばした。
「...!」
「思考が固定されてんだよ!偽物は本物より自由なんだ!」
投げ飛ばされたドラゴンは、そのままゴロゴロとガミルの方向に転がっていく。
「運命を掴みし怪物」
ガミルは冷静に元隊員を魔法で受け止めると、それを踏み台にし、さらに近づいていく。
「隊長ダメです!射程距離内に入ったらあなたも!」
隊員が叫ぶが、ガミルは止まらない。寝転がり、身動きをとれないでいるドラゴンたちを器用に避けていく。
なぜドラゴンになった隊員が動けないのか。理由は明白である。体の動かし方がわからないのだ。例えるなら、車の免許しかもっていないのに、突然飛行機を操縦させられるようなもの。もちろん練習すれば乗りこなせるだろうが、すぐには不可能だ。ザインはそれを利用した。
「粗雑な完璧に近い模倣」
再び、ザインの周りが白い煙で満たされる。
「隊長!」
隊員が叫ぶが、煙の中は見えない。だが、援護に向かってもミイラ取りがミイラになるだけだ。
徐々に煙が晴れる。晴れた先、そこには信じられない光景が広がっていた。
「な...お前...なぜ」
ザインの喉元に、一匹のドラゴンがかみついていた。体表は緑の鱗でおおわれており、眼光はまっすぐザインを見つめている。
「お前は...なぜ動ける!?」
緑のドラゴンは、そのままザインを口で投げ飛ばす。赤い鮮血がシャワーのように飛び散った。
「私は、子供のころからドラゴンが好きだった」
突然、緑のドラゴンが話し始めた。
「あの洗練されたフォルム。大きな翼。初めて見たときは震えたよ。こんな美しい生き物が、この世にいたのか...とな。そして同時に思った。なぜ私はドラゴンではないのか」
隊員たちは息をのむ。間違いない、あれは...あのドラゴンは、ガミル隊長だ。
「なぜ私はこんな汚い生き物なのか。私はその疑問を抱え、生きてきた。だが、ある時団長に言われたんだ。生まれ変わればドラゴンになれるかも...と。生まれ変わり。私にはなかった発想だ。そうだ、この姿は仮の姿。ドラゴンになる前の準備段階なのだ!」
ガミルは前足をぎゅっと閉じる。その姿が、隊員たちには人の姿のガミルと重なって見えた。
「私はそこから、さらにドラゴンに思いを馳せるようになった!いつ生まれ変わってもいいように、ドラゴンの巨体を動かすシミュレーションを怠らなかった!そして今...私は生まれ変わった!」
緑のドラゴンから大粒の涙がこぼれる。隊員たちは絶句しながらガミルの話を聞いていた。まさかこの人、ドラゴンになったことを喜んでいるのか?
「ふざけるな...ふざけるなよ!お前は知らないんだ!自分以外のナニカになる空虚さを!恐ろしさを!」
「何かになる?違うな。私は元からドラゴンだったのだ。私がドラゴンなのだ!」
ガミルは羽を広げると、垂直に飛び立った。
「っ...!退避いい!」
隊員たちは空に駆けたガミルを見て、逃げ出す。ドラゴンが空からすること。そんなものは一つしかない。
ザインも動こうとするが、けががひどく、指先を動かすのがやっとだった。
「これが!私なのだああああ!」
ガミルは口を大きく開ける。口の中には、太陽を思わせるような炎がくすぶっていた。
「アイ...アム...ドラゴおおおおおン!」
ガミルが吐いた炎はビーム上になり、ザインを貫く。直線状に飛ぶブレス、ドラゴンのことを知り尽くしたガミルだからこそできる技だった。




