21話「なんとかドラゴンを撃退したい①」
「今日もほぼ仕事がありませんでしたね...」
ドラゴン討伐を始めてから3日が経った。進捗は順調以外に言いようがなく、空を飛び、逃げようとしたドラゴンも一匹だけだ。しかも、そのドラゴンはロンたちが対処するまでもなく、ガミル隊長が投げたランスによって貫かれてた。
「まあまあ、仕事をせずに金がもらえるに越したことは無いぜ?」
ハリスは矢を地面に刺しながら答える。もはや彼の”おまじない”はロンにとっても日課になりつつあった。外の日は落ちかけており、テント内のランプがロン達を照らしている。
「それはそうですけど。はあ、師匠元気にしてるかな」
昨日、ロンはエイ宛の手紙をハトに括り付けて、ログハウスに送ってみたが、返事は来ていない。サラがいるから、食べるものが無く野垂れ死になんて事はないと思うが...
「...そんなはずはない」
エイの心配をしているロンの横で、ハリスはつぶやく。その顔は青ざめており、今までに見たことのない表情だった。
「奴らは夜行動しないはずだ。しかも、こんな群れで...」
「ハリスさん?どうかしたんですか?」
ハリスはロンに重々しい口調で告げた。
「ロン、今すぐガミル隊長に伝えろ。ドラゴンの群れが攻めて来るとな」
「グリル、あのモーティスとかいうやつ、やはり信用するべきではない」
ギルバーツはカウンターに手を置き、グリルに詰め寄っていた。あの訳の分からない薬然り、奴は一挙手一投足すべてが怪しい。
「それに、俺たちの目標は救世主を確保することだ。騎士団とドンパチして何になる。あんな作戦、即刻取りやめるべきだ」
「ギルバーツ君の気持ちもわかるけどね。作戦を取りやめるというのはもう無理な話だよ」
グリルは表情一つ変えず、張り付いたような笑顔でギルバーツを見つめた。その目は深淵のように黒く、底が無いように見える。
「まさか...」
「もうザイン君もモーティス君も向かったよ。さあさ、ギルバーツ君。僕らは観戦者に徹しようじゃないか」
話は終わりだというように、グリルはカウンターの上にあるグラスを持ち上げると、それを一回で飲み干した。
「総員戦闘配備だ!急げ!」
ガミルの声で、隊員たちは位置につく。ロン達一番隊も、物見やぐらから黒い空を見つめていた。ハリスは魔力探知に集中しているのだろう、先ほどからずっと地面とにらめっこをしている。
「本当に...ドラゴンが夜に来るんでしょうか...ドラゴンは昼しか行動しないはずじゃ...」
ヒナは人形を抱きしめ、いつもにも増して不安そうな様子だ。
そう、ドラゴンは基本昼しか行動しない。しかも、それが群れで人間を襲撃に来るなど、異例中の異例に違いなかった。しかし、あのハリスの魔力探知が間違っているとも思えない。
「...来るぞ!」
ハリスが顔を上げる。星が瞬く夜空の中、天の川を優雅に泳ぐドラゴンの群れが、そこにはいた。
「隊長来ました!」
「うむ、遠距離攻撃ができる魔法使いは弾幕を張れ!奴らは射程距離内に入った瞬間ブレスを吐いて来るぞ!」
ガミルは目を凝らす。夜空を羽ばたくドラゴンたち、美しいが、見とれている場合ではない。ドラゴンとの戦闘はスピードが命だ。先手を打ち牽制を...
「...どうかしたのですか隊長?」
突然空を見上げたまま動かなくなったガミルに、隊員の一人が声をかける。
「違う、美しくない...」
「え?」
群れで向かってくるドラゴン。その体に、”ナニカ”が搭載されていることを、ガミルは愛ゆえに誰よりも早く見抜いていた。
記録
月 日 19時23分
騎士団混合部隊によるドラゴン討伐任務中、ドラゴン複数体を確認、その後衝突。激しい戦闘の末、撃退に成功。しかし、多数の死者を出す結果となってしまった。
教団との関係性を調査しているが、決定的な証拠はいまだ見つかっていない。一番隊としては、今後も継続して調査を行っていく所存である。
また、この戦闘による死傷者数は以下の通り
二番隊
参加人数241名うち 怪我人 125名 死者31名
三番隊
参加人数24名うち 怪我人11名 死者5名
五番隊
参加人数12名うち 怪我人6名 死者2名
四番隊
参加人数6名うち 怪我人5名
一番隊
参加人数3名うち 怪我人1名 死者1名
なお、殉職者らの葬儀はその身元が分かり次第、行うものとする。
作成者 マア・フクドゥ




