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19話「なんとか製作元を探したい」

「うーん。うちで作った覚えはねえな。それに、うちはそこまで大きなものは作ってないよ」

「そうですか...ありがとうございました」


エリスは店主に頭を下げると、その場を後にする。手にはマムルが見つけた鉄手の一部が握られていた。


「やはり、そう簡単には見つかりませんね」


エリスは道端で待機していたマムルに声をかける。マムルは黒いズボンに白シャツ、帽子をかぶっている。目立たないかと言われれば微妙だが、あのダサい服を着られるよりはましだろう。


「まあ、わざわざこんな目立つ店では作らないだろうね。やるとしたら、ああいう店だ」


マムルが指した先には、壁のペンキが剝がれかけ、明らかに閉店している店がある。しかし、看板を見ると、ぎりぎり見える文字で鋳造所と書かれていた。


「あれ営業してるんですか?」

「行ってみる価値はあるだろう」


マムルはそう言うと、ぼろぼろの店に向かって歩き始めた。








「すみません、少し聞きたいことがあるんだが」


マムルは戸を叩くが、中から返事はない。やはり閉店しているのだろうか。


「隊長、私は別の店に聞き込みに....て、何してるんですか!」

「何って、いや店主が寝てるんならたたき起こそうと思って」


マムルの手には石が握られている。そして、マムルは何の躊躇もなくそれを窓に投げつけた。石はカツンという音を立て、マムルの足元に跳ね返ってくる。


「聞きたいことがあるんですけどー!」

「小学生が友達を遊びに誘うんじゃないんですから。というか、普通に犯罪ですよ」


エリスがため息をつき、踵を返そうとした時、マムル達に近づいて来る者がいた。


「誰だ、わしの店に石を投げるのは」


怒りを帯びた声で話しかけてきたのは、杖をついた老人だった。80歳ほどだろうか、腰は完全に曲がってしまっている。


「あなたがここの店主ですか?」

「店主?は!うちの店はとっくに潰れてるよ!バカ息子のせいでな!というか、おたくらは何なんだ。いい加減にしないと騎士団を呼ぶぞ!」


自分たちがその騎士団ですと言うわけにはいかない。エリスは立ち去ろうとしたが、マムルは構わず老人に話しかける。


「実は俺たち、これを作った人物を探しているんだが。心当たりはないか」

「隊長、もう行きましょう」


エリスはマムルを急かす。本当に騎士団など呼ばれたらたまったものじゃない。いくらマムルと一緒にいるとは言え、自分は謹慎中の身なのだ。


だが、鉄手を見せられた老人の反応は意外なものだった。


「....ついてきなさい」

「心当たりがあるんだな?」


老人は無言で店の中へ入っていく。その顔はどこか暗く見えた。マムル、エリスもそれに続いた。








家の中は予想通りといった様子だった。長年放置されているであろう商品にはほこりがかぶっており、それが店が何年も前に閉店したことを示していた。壁には家族写真のようなものがかかっている。


「それはおそらく、うちの息子が作ったものだ」


老人はおもむろに語り始める。


「...詳しいお話を聞かせてもらえますか」

「わしの息子は基本音信不通だ。昔この店を継ぐか継がないかで大喧嘩をしたことがあってね、それからずっとさ」


老人は空を見つめ、昔を懐かしむような眼で語る。


「だが、ある時期から時々店に帰ってくるようになってな。もちろん、俺が店じゃなく、家にいる間にだがな。そして、息子が来たであろう後は、必ずこの鋳造所を使った形跡が残っていた。いったい何を作っているのか不思議だったが、息子の顔を見る気も起きず、ずっと放っておいたんだ。そんで、ある時これを見つけた」


老人は一つの塊をマムル達に渡す。それは、金属でできた棒のようだった。


「...これは、指か」


マムルは顔をしかめる。これは間違いなく、あの鉄手についていたものだ。


「息子さんの名前をお聞きしても?」

「マチルだ。先に言っとくが、あいつの居場所なんてわしは知らんぞ」


マムルは金属を手でなぞる。鉄ではない、切った時から思っていたが、やはり合金か。


「隊長、どうしますか」

「店主、この店に宿泊サービスはあるかな?」


マムルは手にもつ金属を強く握りしめた。せっかく掴んだチャンスだ。離すわけにはいかない。


「今日から息子さんが帰ってくるまで、二階を貸してほしい。朝食はつけなくていいぞ」


老人と交渉するマムルの横で、エリスはまじかよと言いたそうな顔をしていることに、彼はまだ気づいていない。









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