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18話「なんとか討伐を見届けたい」

「ということで、ハリス君にはエリスちゃんの代わりにドラゴン退治に行ってもらおうと思う」

「分かりました」


キャンプ地にロン達が到着する2日前、ハリスはマムルに呼び出されていた。ハリスは元狩人である。街の外で、魔物や動物を狩り、生計を立てていた。ハリスが呼ばれたのは、その経歴を加味し、適役だと思われたのだろう。


「あと...君にはもう一つ頼みたいことがある。それは、ロン君の護衛だ」

「彼はかなりの腕だと聞きましたが、なぜ護衛の必要が?」


例の行方不明事件以降、ロンのことは騎士団内でも噂になっていた。とんでもない魔法を使えるやつが一番隊にいるらしい、と。


「確かに彼は強いかもしれない。だが、まだまだ底が浅い。それに...彼は”教団”から狙われている可能性がある」

「...”教団”から?」


ハリスは怪訝な顔をする。


「まあ、俺の憶測で確定ではないけどね。だが、不安の芽は摘んでおくべきだ。一応このことはガミル隊長にも連絡しておいたが、あの人は基本的にドラゴンのことしか考えてないからな...」


ガミル隊長にはハリスも前会ったことがある。その時たいそう気に入られ、背骨が折れるほどの熱い抱擁を交わ”された”。正直、あまり会いたくはないが、そんなことで任務を断るわけにはいかない。


「分かりました。ロン君のことは任せてください」


”教団”、この間追跡したが、まんまと逃げられてしまった相手だ。しかし、迎え撃つなら話は変わる。


(リベンジ...といったところかな)










「青色のドラゴンを発見!現在北西方向に歩行中!周りに仲間は確認されず!」

「ふむ、よし。二番隊ドラゴン討伐部隊出るぞ!私に続け!」


鎧をつけ、ランスを持ったガミル隊長の掛け声で、騎馬隊が一斉に出陣する。


「始まったみたいだね」

「すごい迫力ですね」


ロン達は、現場から少し離れた小高い丘から、ガミルたちを観察していた。


「ハリスさんは、望遠鏡使わなくていいんですか?」

「ん?ああ、俺は魔力探知が得意だからな。目を使わなくても大体見える」


ハリスは弓を背負い、腕を組んで、ドラゴンがいるであろう方向を見つめている。


「で、吾輩たちはドラゴンが飛んで逃げた場合、撃ち落とせばいいわけだな」


ロンと同じく、望遠鏡を覗きながらヒナは言う。話し方がハキハキしているところを見ると、どうやら今日は、自信があるらしい。


「前から思ってたんですけど...ヒナさんってその...気分屋ですよね」


極限まで言葉を選び、ロンは尋ねる。今までなかなか聞けなかったが、ここで聞かなければもう機会はない気がした。


「気分屋?なんだ、ロンは知らんのか。吾輩には二つの人格がある。だが安心しろ。任務に支障はださん」


ヒナは意外なほどあっさり言って見せたが、ロンにとっては驚愕の事実だ。ロンは思わずハリスを見る。しかし、ハリスは驚きもせず、戦いを見ているようだ。まさか、知らなかったのはロンだけ?


(もしかして、マムル隊長が自己紹介の時に言い忘れてたんじゃ...)


あの人ならあり得る。


それにしても、ヒナが多重人格だったとは。時折見せる変わった言動はそのせいだったのか...


「ロン、吾輩のことよりも、戦いを見た方がいいのではないか。存外、面白いぞ」


ヒナに言われ、ロンは望遠鏡をのぞく。そこにはドラゴンを倒そうと奮闘するガミルたちの姿があった。一糸乱れぬ美しい陣形で、みるみるうちにドラゴンを弱らしていく。だが、それよりもロンが注目したのは、倒そうとしているドラゴンの大きさと魔力量だった。


そのドラゴンは、今までロンが倒してきたドラゴンとは比べ物にならないほど成熟しており、口から吐くブレスもとてつもない威力だった。それこそ、ロンの魔法と比べても遜色ないほどに...


「なぜ街にドラゴンが飛来してくるか知ってるか」


おもむろにハリスがロンに問いかける。


「ええと、住処を失ったからですよね」

「そうだ。だが、そういうドラゴンは弱いから住処を失った。基本、あのレベルのドラゴンが街まで飛んでくることは無い」


そういうことか。山に飛来してきたドラゴンを、ロンが簡単に倒せた理由。それは単純にその個体が弱かったからだ。


「だが、いくら弱い個体だからと言っても、何匹も飛来されたらたまったもんじゃない。だから、ああいう”強めの”個体を討伐し、他の弱いドラゴンの住処を確保する必要がある。授業はここまでだ。そろそろ終わりそうだぞ」


ロンは望遠鏡に視線を戻す。そこには、足を切られ、歩くこともままならないドラゴンの姿があった。


「これで最後だ!突撃いいい!」


ガミルはランスを構え、ドラゴンに突撃する。そして、文字通りドラゴンを”打ちぬいた”。


「すごい...」


あのドラゴンの肌を貫くなど、おおよそ人間のやることには思えなかった。


「ふん、あのハゲなかなかやるな。あの娘に変なものを飲ませたことは許さんがな」


あっけにとられ、その場を動けないロンとは逆に、ヒナは討伐を見届けると、さっさとテントへ帰り始めたのだった。











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