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16話「なんとか我慢したい」

「よっしゃ、着いたぞ二人とも」


ハリスの掛け声で、ロンは目を覚ます。馬車の揺れはもう無く、外からは、がやがやとした話し声が聞こえてきた。


ロン達が馬車から出ると、そこは、たくさんのテントが立つキャンプ地だった。騎士団の制服を着た人がせわしなく動き回っているが、紋章のデザインが少しづつ違う。どうやら、それぞれの隊から人が集まっているらしい。


「よし、まずは今回の任務を指揮している二番隊隊長のところへ行くぞ」

「そういえば、二番隊の隊長さんってどんな人なんですか?マムル隊長からも、見ればわかるとしか言われなかったので...」


今回のドラゴン討伐は、二番隊が中心となっていることは事前にマムルから聞いていた。だが、肝心の任務内容などについてはほとんど知らされていないのだ。


ロンからの質問に、ハリスは気まずそうに頭をかく。


「なんというか...まあ、いい人だよ」


ハリスの濁すような言い方に、ロンは違和感を覚えたが、口に出して言うことは無かった。










「こちらがガミル隊長のテントです」

「ありがとうございます」


案内をしてくれた人物にロンたちはお礼を言う。隊長がいるというテントは、他のテントと比べてもほぼ違いがなく、案内無しではおそらくたどり着けなっただろう。


「よし、二人とも入るぞ」


ハリスを先頭にして、ロンたちは中に入っていく。そこには...


「うおおおお!どうして死んでしまったのだああああ!この美しい翼!この美しい目!老齢になれば、さらに美しく、それこそ、ミス・ドラゴンになれていたかもしれないのにいいい!」


そこには、ドラゴンの死体を抱え、おいおいと泣き喚く男の姿があった。男は中年といったところだろうか。頭に髪は無く、黒い制服につく紋章には、ドラゴンの顔がかたどられていた。


「...ガミル隊長、一番隊の方々が到着しました」


先ほど案内をしてくれた隊員が男に言う。それを聞き、男は顔を挙げた。目にはまだ涙が流れている。


「ええと、お久しぶりです。ガミル隊長」

「おお!ハリス隊員ではないか!久しぶりだなあ!」


ガミルはドラゴンの死体を地面に優しく置くと、そのままハリスを抱きしめた。ハリスの制服に、鼻水がべっとりとつく。


「私はずっと君を待っていたんだ!隊の連中はこのドラゴンの良さを分かってくれなくてね!どうだあのドラゴンは!」

「確かにきれいですね。美人コンテストでも優勝できそうなくらいには...」

「そうだろう!わかってくれるのは狩人の経験をもつ君だけだ!」


ガミルはそう言うと、より強くハリスを抱きしめる。大の大人に泣きながら抱き着かれて、いやな顔一つしないあたり、ハリスは流石だ。


「ところで、あちらの二人も一番隊の隊員かな?」

「ああ、紹介します。銀髪の少年の方がロン・ポラン。それであの白髪の少女が...」


そこまで言い、ハリスは黙る。その目線はヒナに注がれているようだった。ロンもヒナの方を振り返る。


「ヒナさんどうかしたんですか」


乗り物酔いがまだ続いているのか、それともドラゴンの死体をいきなり見たせいか。はたまた、いい年した男が、魔物の死体を持って号泣している姿が、彼女には刺激が強すぎたのかもしれない。


結果として、ヒナは隊長がいるテントの中で激しく嘔吐することになってしまった。










「...早く行かないんですか?」

「まあ待てよ。こういうのが意外と大事だったりするんだ」


エリスとマムルは騎士団内の更衣室にいた。団長公認の任務ではないため、騎士団の制服は避けた方がいい。そう言いだしたのはマムルだ。その意見にはエリスも賛成し、さっそく私服に着替えたのだが、マムルの服がなかなか決まらない。


「逆に、君はなんでそんなに早く決まるのさ。あんま服とか興味ないの?」

「誰かさんがほとんど休みをくれないので、持っている服は少ないですね」


エリスは更衣室の椅子に座り、貧乏ゆすりをする。エリスの格好は、動きやすそうなズボンに、シャツの上から上着を羽織った実にシンプルな着こなしだ。


「まあ。これでいいか」


マムルはカーテンを開ける。そこには、じゃらじゃらと鎖がついたズボンに、文字入りシャツを着たマムルの姿があった。そして、その服に書かれている文字は...


「DORAGON KILLLER!」


エリスは無言でカーテンを閉めた。


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