表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/31

1話「なんとかこのまま暮らしていきたい」

「お前に教えることはもうない」

「え?」


自称見習い魔法使い、ロン・ポランは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている。

ここは山奥のログハウス。魔法使いエイ・ヨフチュウの住居である。


「明日中に荷物をまとめろ。街までは私が送って...」

「待ってください!」


ロンは思わず叫ぶ。


「教えることがないってどういうことですか!?僕はまだ師匠に教えてもらってないことが...」

「じゃあ、あれはなんだ」


黒髪をなびかせながら、ロンの師匠、エイは家の外を指す。彼女が指した先には赤色のドラゴンが横たわっていた。一発で仕留められたのだろう、胸には空洞がぽっかり空いている。


「いや、なんか家の外で騒いでたので邪魔だなーって...迷惑でしたか?」


銀色の髪をした少年、ロンは頭をかきながら気まずそうに答えた。彼はいつもそうだ。人のことを気遣うのはいいが、その方法が極端すぎる。


「私、ドラゴンなんて倒したことないけど。てゆうか、私あんな魔法教えてないよね」

「え?でも師匠が教えてくれた魔法を使って倒しましたよ?」

「なにそれ。こわ」


エイは帽子の鍔をつかみ、深いため息をつく。


「ロン。お前は私のところにきて何年になる?」

「6年です!」


ロンは山の中でエイに拾われた。拾われた時、彼の年齢は10歳で両親の記憶はおろか、なぜ自分が捨てられたのかも覚えていなかった。そこからエイが魔法使いとして彼を育てたのだが....


「僕、師匠に恩返しがしたいんです!もしあの時師匠が拾ってくれてなかったら、きっと僕は....

そうだ!もう教えることがないんなら僕を警備員として雇ってください!」

「山一個簡単に吹き飛ばせれるやつがこの家の警備とか、完全にオーバースペックだわ!」

「じゃあ、ええと...」


ロンはどうにかしてエイと暮らし続けるつもりのようだった。


(こんな危険な...じゃなくて、こんな素晴らしい人材を山奥で拘束しておくわけにはいかない。どうにかして追い出さなければ...)


エイは長年山で暮らしている魔女である。騎士団で働いていたこともあったが、ある”やらかし”が原因でクビになり、ひきこもるようになってしまった。


ロンを拾った当初、エイは彼を弟子にするつもりはなかった。実際、騎士団に捨て子届けを書こうとしていたくらいだ。しかし、エイは途中でロンの魔法の才能に気づき、そして思った。


(これは使える)


エイは騎士団での”やらかし”によって退職させられたことを根に持っており、復讐の機会を探っていたのだ。


(私がこの子を立派な魔法使いに育てて、騎士団に推薦すれば私の名誉も回復するに違いない!)


だが、一つの誤算があった。ロンの才能がありすぎたのである。ロンは一年もすれば師匠の実力を超えた。そして彼は拾われてからの6年間、4回ログハウスを倒壊させ、3つ山を吹き飛ばした。故意でないとはいえ、もし事故でエイに魔法が当たってしまったら...彼女は死体すら残らないだろう。


命の危険を感じたエイは1年ほど前から、ロンを山から追い出そうと画策している。しかし、当の本人が拒否し続けているのだ。


「とにかく明日には出ていくこと!いいね?」


エイはロンに言うと、足早に自分の部屋に帰ろうとする。これは私の命だけでなく、彼のためでもあるとエイは自分に言い聞かせた。


「待ってください!もし僕がいなくなったら、家事や料理はどうするんですか!」


エイは足をぴたりと止める。確かに、ロンが家事を覚えてから料理などはすべてロンに任せている。ロンがいなければエイはパスタすら作れないだろう。買い出しもロンに任せっきりのため、エイ自身は4年ほど山から下りていない。


「師匠、人と話して食べ物買えるんですか!?」

「ロン」


エイは振り返るとにこやかに告げた。


「ロン、明日からもよろしく」


こうしてまたロンの独り立ちする日が先延ばしにされた。







気が向いたら更新していきます。感想などお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ