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悪役令息設定から逃れられない僕のトゥルーエンド  作者: kozzy


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85 夏休みの一日 8月

今日は僕にとって記念すべき日。何故って…初めてのお友達訪問ディ!


アリエスとアルタイルに付き添われ、デルフィのイエローダル家訪問に無理やり便乗したのが本日である。


悪役設定の消えた僕は怖いもの無し、いわゆる無敵?

解…放…感…

僕のこのあふれでるやる気を妨げるものは何も無い!


だけど前世の自分に戻った気がして浮き足だってた浅はかな僕は、これから始まる新たなシナリオにはまったく気がついていなかったのだ。




「タウルス元気にしてる?お家の人からもうお許し出た?新学期からは通学できる?」

「テオドール…、俺を心配してくれたのか。お前の方が大変だっただろうに」

「平気!なんか解決してた。レグルスとデルとお兄様と、それからみんなも協力して悪い人達捕まえたって。僕は囮?になってただけだからよくわかんない」


タウルスはどこまで知っているのかな?伯爵家三男坊のアルタイルと違い、侯爵家嫡男のタウルスは、今回の件とはあまり関わってはいなかったらしい。

正騎士団長を父親に持つタウルス。騎士家系の彼はお家の人からうるさく言われてなんだかいつも窮屈そうだった。


「まさか副団長までもがかんでいたとは…父はひどく落胆している。なにしろ入団以来の親友だったそうだからな。俺も彼を尊敬していた。残念だよ本当に…」


タウルスを皮切りにデルフィ、アリエス、アルタイルは口々に近況を報告し合う。そのどれもが僕には初耳だ。


「ドラブの影響はそれだけじゃない。学院長も弱味を握られ色々と便宜をはからされていたようだ。彼は更迭となり九月からは新しい方が赴任される。それこそ父は前学院長とはご学友でいらしたのだが…とても気の毒がっておられたよ」


「どうりで…。おかしいと思ったんです。あの野外演習の事故の後、我が家の寄付を失う恐れがあると言うのに学院長は頑なに犯人の追求を拒んでみせましたから」

「そうだな。圧力がかかったことは明白だったがまさか脅迫までされていたとは。父上は裁判件数が多すぎて当分帰って来れないそうだ。とんだとばっちりだと嘆いていたな」


聞けば聞くほどいろんなところにその影響は及んでて、迷惑ったらありゃしないな。

すごくたくさんの貴族家が爵位を取り上げられたり領地を減らされたりしたらんだとか。

そうしてその爵位と領地はいったん王室預かりとなり、これからの活躍をもって誰かに授爵されるんだって。へぇ~。




タウルスは敷地内にあつらえられた稽古場で謹慎の間ずっと鍛練していたようだ。

鍛錬している間だけは全て忘れていられたからって言うけど体育会系ってこれだから…

と、ともかく引きこもりの中身が僕と真逆で、心なしかより上腕二頭筋が鍛えられているような気がす…えぇ…?僕のが正しい引き籠りだよね?


やや引き気味になりながらも稽古場が見たいと言えばタウルスは満面の笑みで連れていってくれた。


「今は諸々の沙汰が片付くまで騎士たちも自宅待機だ。好きなだけ見ていくといい」

「タウルスこれは?」

「ああ。グレートソードの特注品だ。鎧すらも切り裂くんだぞ。見てろ」


ひゃぁ!あんなゴツイ剣をよくあのスピードで振り下ろしたり出来るもんだ。


「ねぇねぇ、僕にも持たせて!」

「お兄様、危ないですよ」

「大丈夫!危なくなんかないって。勇者気分になってみたい!聖剣エクスカリバー!なんちゃって」

「勇者…はっ、可愛いなテオは。いいか、気をつけて持つんだ」


ぐっ、重っ!こ、これは…持ち上げ…上げて…

えいっ!


「わあぁっ!」

「テオドールっ!」

「お兄様っ!」


後ろにひっくりかえりそうになった僕を支えてくれるたくましい腕、それこそがこの国の王国騎士団、団長のイエローダル侯爵だ。

侯爵はとても神妙な顔で僕を見るなり眉を下げた。


「レッドフォードの御子息、此度は色々とすまなかった。騎士団長ともあろうものが噂話など真に受けて合わせる顔がない」


タウルスのお父さんは王様からもうちのお父様からもかなりお叱りを受けたと聞いた。

そして騎士団の再編成と、…半年ほどの出仕禁止を言い渡されたそうだ。騎士たちへの指示なら屋敷から出せる。任務に支障はない。…ものすごく体面が悪いだけで。


「言い訳に聞こえるだろうが副団長のヘンリーがまことしやかに囁いたのだよ。タウルスの将来を考えるならば決してレッドフォードの息子には近づけさせてはいけないと。今思えば奴はドラブ侯の企て知っておりせめて我が家に害が及ばぬようにと揉め事から遠ざけようとしたのだろう」


オピオンにおかされ傀儡になった気の毒な副団長。前世も今世も悪いお薬は『人間やめますか?』だ。


「何故その気遣いを正しき道で生かせなかったか!今さら言ってもせんなきことだな。そして騎士団員は…くっ、私の直轄、第一第二を除くほとんどの隊にドラブの縁者が混ざっておった。情けないことに不正に手を染めたものを罷免したら、団員の四分の一が消え失せたのだよ。これで聖騎士団長を名乗るなど実に滑稽ではないか」


いつかどこかで聞いたような…


タウルスを程よく老けさせたような侯爵は中身もやっぱりよく似てて、きっと根は善人の愚直な人なんだろうなってそう思う。

人の言葉を鵜吞みにした挙句、自滅して自虐するのもまさしくいつか見たタウルスとおんなじ。


ぷっ、つくづく親子だな~。


「そうか、そこで笑うか。腹を立ててはおらんのか?」

「え~、だって超親子で…。思い込んだら人の話を聞かないとこも感情に任せて怒り散らすとこも。だけど悪いと思ったらちゃんと反省するところも、さすがタウルスのお父さんだなって、もがっ!」


「テオ!侯爵に向かってなんという口の利き方を!そうか、そんなに叱られたいんだな。ちょうどいい機会だ。二学年に上がる前にマナー講習といこうじゃないか。明日からの休みは無いと思うのだな、言っておくが僕はハインリヒほど甘くない」



うっかり調子に乗ったらデルフィの怒りに触れたらしい…みんな笑ってるからいいじゃんか…ねぇ?



せっかく断罪ルートから外れたのに、少しくらいハメ外したっていいじゃんかー!




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