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悪役令息設定から逃れられない僕のトゥルーエンド  作者: kozzy


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58/110

58 戦場へ立つ 

魔の九月…とうとう恐れていたこの日がやって来てしまった。魔法学院高等部、ゲーム開始のOPテーマが頭の中に鳴り響く。


お兄様とレグルスの武器取り扱いの話し合い。

名義を僕からお兄様に変えてようやく目途がついたってデルフィヌスはそう言ったけど全然安心なんか出来なくて…


僕は何度も学院なんか行きたくないってそう我儘を言ったけど、さすがに国の決まりだからお兄様もお母様も首を縦には振らなかった。

レグルスは大丈夫、心配は無いって何度も何度も言ったけど僕の心臓はさっきからずっと重低音で荒ぶっている。


僕を危ういって騎士の人たちは言ってたけど…これは断罪には繋がらないよ…ね…?


だってあのすごい武器はお兄様が学士の方とアップグレードした代物で僕が作ったわけじゃない。

それに僕はアリエスとだって良好な関係を築いてる。攻略対象者だったみんなとも、それなりに仲良くなれた……はず。


どっどっどっ

心臓が荒ぶる…


「ねぇ、アルタイルとタウルスは?二人はまだ来てないの?」


僕を断罪するはずだった全員で周りを囲んでおけばむしろ少しは安心できるというものだ。


「ふふ、お兄様、僕一人では心細いですか?大丈夫ですよ。けっしてお傍を離れません。ハインリヒ様からも強く言われていますから」


あれ?お兄様のアリエス嫌いは筋金入りで絶対本邸には入れなかったのに…いつから親しくしてたんだろう。

それならそうと言ってくれれば、なんなら三人でお茶とかしてよりがっちりと安全圏を固めたのに。


「心細い訳じゃないけど…ねぇアリエス、僕とアリエスは仲良しだよね?ちゃんと仲直りしたもんね?」

「もちろんですとも。お兄様、僕たちは…とても親密ですよ。仲直りの証もしましたし」


不安で思わず再確認をしてしまう。仲直りの証…それってあれじゃん。その、キス……じゃないっ!あれはあくまで仲直りの印だから!


ようやくやってきたアルタイルたちと合流したらようやく講堂へと移動する。

整列の並びは家格の順で、デルフィが居ない新入生では僕とアリエスが最前列だ。そのうえアリエスは三男だから…


う~ん演台の真正面。最悪…、一番目立つ場所じゃん。出来たら地味に目立たずひっそりと、空気のように過ごしたかったのに。


あっ、ケフィウスさんだ。

従者モードの時とは違って、キリっとしたネクタイ姿が知的な顔をより知的にし、一層会長らしさを醸し出す。


「本院は昨年設立200年を迎えたまだ年若い学院ではあるが、国を挙げて育成環境を整えることで独自の魔法構築を可能にした。こうした中さらに歴史を積み重ねていくためには優れた魔法技術の開発は必須の課題であるだろう。新入生の諸君には、次の世代へとつなげる新しい発想と若い感性を持って勉学に取り組んでもらいたい。その中で、より多くの事をどん欲に、柔軟に、吸収してもらえれば、当代会長として本望だ。諸君が思い通りの力を発揮できるその日を心から期待している」


あ、これ、頭良い人のスピーチだ。深緑色の長い髪を後ろで一つに結んだ細身の姿はとてもクールで大人っぽい。

演台から離れるその瞬間、確信犯の美形はこっちを見てうすく微笑んだ。



会長に代わり最後はレグルスが演台の前に立つ。王太子殿下の登場に会場のテンションは一気に湧きたっている。


「新入生の諸君、この度は入学おめでとう。我ら上級生一同、心より歓迎をする。諸君らと共にこの学び舎で研鑽をつめることをとても嬉しく思う。この高等部から入学してきた者の多くは微弱な魔力しか持たぬのだろう。だが自分に何が出来るかをよく見極め得意分野を伸ばせばよい。そして中等部からここに居る魔力の高い者たちよ、多様性を受け入れ互いを尊重することが大切なのだと私は考える。より良き三年間を過ごせるようここに祝福を」


指を鳴らすと降り注ぐ、まるで霧雨のようなレグルスの中位魔法。

火属性の魔法なのに熱くも痛くも無いなんて。


凄いなレグルス…こんな魔法までもう使えるんだ…


ウォーターさえちょっぴりしか使えない僕と一体何が違うって言うの?

ゲームの設定ってわかってはいるけどそれでも地味に凹む…


それにこの挨拶の意味するところは…多分僕への心配に他ならない。

魔力の少ない生徒などこの学院では嘲笑の的。そんなことが起きないように釘を刺してくれたんだろう。


こうしていると、アリエスの事、魔力の事、テオドールのぐれた理由はそこいらじゅうに存在してて、僕はそんなの気にしないけど…テオドールの気持ちは痛いほど分かるんだ…


退場していく新入生をレグルスのキラキラが包む。

そのエフェクトの輝く中で怖い顔して僕をにらむどこかの令嬢が目に入る。多分レグルスのガチ勢だ。

なにしろ学院の過半数が王子の熱狂的なファンなんだから恨まれてたって仕方ないよね。


ヤダなぁ…すごい目で僕を凝視してる上級生がいる。彼もレグルスが好きなんだろうか?


そんな風に僕はその憂鬱な一日を溜息とともに終えたのだった。





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