54 目指す先には
中期試験の最終日。僕は学院内をウロウロしてた。
レグルスは高等部に行っちゃったから試験の日程も一日ずれた。
一応ここの生徒な僕はどこを歩いても叱られない。
思うところ有り、彼らを攻略対象者じゃなく友人として見直し始めた僕は、未だ見てなかったゲーム背景を求め校舎外へと足を向ける。
「テオ!こんなところで何してる。フラフラするな。またデルフィヌスに怒られるぞ」
「高等部はまだ試験中だよ。それよりタウルスはもう終わったの?」
「ああ、もう済んだ。選択から召喚術を外したからな。以前を思えば楽になった」
「ぷぷっ!アリエスが居たからとってたんでしょ?タウルスほんと馬鹿なんだから。でももういいの?」
「もういいんだ。一人前になるまではそういう事は考えない。俺は不器用な男だから一つの事しか必死になれない。もう分かった」
僕が断罪フラグを折ったせいで、代わりにタウルスの恋愛フラグが無くなってしまった…
なんだか悪いことしちゃったな。心の中で謝っておく。
だけどタウルスは恋愛しなくても死なないけど僕は断罪されたら最悪死ぬからね。
病死はまだまだいい方で…ぶるぶるぶる…凌辱監禁とか…怖すぎる!
うっかりタウルスと話してたらそこは騎士団の稽古場。
騎士団の稽古場はタウルスルートで出てくるからちょっとだけ覗いていくことにする。
ごめんねタウルス。僕はタウルスルートは最低限しかやってなくて、稽古場の背景もあまり覚えていない。それに深夜にやっていたからほとんど意識もトンでいた。
そんなわけでけっこうウキウキしながら中を覗き込んだんだけど…向けられたのは悪意の視線。
…えっーと…ここでもなんか出回ってるの?
僕にまつわるおかしな噂は今でも絶賛継続中だ。
「テオドール、俺の後ろに」
「う、うん」
「タウルス殿。レッドフォード侯爵子息を稽古場内に入れてはならない。ここは剣が飛び交う危険な場所だ。何かあっては我々が侯爵家から咎を受けよう。そもそも何の通達も無かったが何故ここへ連れて来たのだ」
「危険…それだけが理由なのか?本当に?連絡を入れなかったのは俺の不手際。だがチラリと様子を見るだけの事、それほどまでに気にする事か?」
「…それならばはっきり言おう。迷惑だと言っているのだ!そのテオドールにまつわる噂がどれほどまでに危ういか。いくら団長の御子息といえどこればかりは大目にみれぬ。タウルス殿、あなたも早く目を覚ますがいい!」
「言ったはずだ!テオはそんな奴じゃない!」
激高するタウルスがなんだか怖い。だけどいきり立つ騎士はもっと怖い。
「危うい…ねぇタウルスどういう事?僕が婚約者候補になった事?ねぇタウルス?」
「いいから行こうテオ。お前が知る必要もない事だ」
僕の知らないところで流れる噂はいつだって社交界のちょっとした娯楽。
だけど僕が知ってる噂なんてせいぜいレグルスに好かれてないって言う事くらいで…、だからたいして気にも留めてなかった。
あとは僕がわがまま放題してるってやつでしょ…?
それも間違ってないからしょうがない。
だけどさっきの騎士たちはただ事じゃない様子に見えた。
「ねぇタウルス教えてよ。僕のなにが危ういの?どうして騎士があんなにも怒ったの?…ねぇ、僕が傍に居たらタウルスまでおかしな風に見られるの?もしもそうなら僕…」
「やめろ!俺から離れるなんて絶対言うな!俺はもう何を言われたって気にしない。人の噂なんかに二度と振り回されない!なぁテオ、俺は、俺たちは……友達だ、そうだろう?」
友達だって言いながら、どうしてそんなに辛い顔をするのかわからない。
だけどタウルスが僕を友達だって言ってくれるなら…傍に居て良いって言ってくれるなら…それは嬉しいことだ。
「友達だよ。…最初は何コイツって思ったけど…今はタウルスと話すのすごく楽しい。だって男同士だもんね。ケンカした分仲が深まるんだよ」
「そうだな、ケンカをして分かり合うんだ。だけどあれはケンカですらなかった」
「えへへ、もういいよ。けどほんとにいいの?ひどい事言われたりしない?
「大丈夫だ。俺はそんなにやわじゃない。何しろ騎士団長の息子だからな」
騎士団長の息子だから…どういう意味で言ったのか…
タウルスは父親の跡を継いで騎士団長を目指していたけど、団長は第一騎士団からしか選ばれない。
ゲームの台詞で知ったんだから間違いない。タウルスの言う第六に居たら団長にはなれないんだよ。知ってるの?
だけど貧しい人達を守りたいっていうタウルスにそんなこと言えなかった。
だって、その言葉を言うタウルスがとても立派に見えたから。
…ゲームで見たどんなスチルより、ずっと輝いて見えたから…




