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悪役令息設定から逃れられない僕のトゥルーエンド  作者: kozzy


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52/122

52 ルート アルタイル

「てな訳で、俺たちがアーマーサウルスを退治して宿に帰るとそこには女たちが」

「おっと、サグデンさん。テオの前でそこからは無しだ」

「おおっ、悪い悪い。テオ坊ちゃんにはまだまだ早いな、はっはっは」

「さあ、もう行くぞ。今日は俺を送ってくれるんだろう?」



アルタイルん家の馬の調子が今日は悪いと言うものだから僕が送っていくことになった。

せっかくの討伐話はまだ途中だけど約束だから仕方ない。


ボロボロの廃墟のような救護院。

アルタイルは救護院への支援を惜しまず、ブルースター家の名においてかなり修繕してくれたし、あちこちガタガタだった棚や椅子はアルタイルがその手で直してくれた。

これは貴族子にあるまじきことだ。

釘と金づちを持つアルに、「僕もやりたい」って言ったけど、最初の一打で指を打ったため仕方なくあきらめた。


裏の柵だって、困ってた院長に「任せておけ」ってアルタイルが直したんだよ。


「アルがこんなになんでも出来るなんて…DIYする貴族なんて聞いたこと無いよ」


そう言う僕にアルはキレイな笑顔でこう言ったんだ。


「お前の為に覚えたんだ」




アルタイルを送る馬車の中で僕はいつになくにワクワクしていた。


アルは冒険者の事いっぱい調べてくれていた。そして来たる日の計画をたてる。


東の隣国にある冒険者ギルドは初心者向けの仕事も多い。第一次産業の栄えた素朴なその国は畑を荒らす小さな害獣の駆除依頼がとても多くて、それくらいならきっと僕でも出来るだろうって。


「だが、もう少しだけ…レベルを上げておかなければな」

「…うむむ…僕の魔力は上がらない…。じゃぁ、剣!剣の腕を上げればいいかな!」

「それは良案とは言えないな。近接戦はテオには無理だ。遠距離武器、弓を使えるようにするのはどうだ?」


みんながみんな、孤児院の子供たちでさえ僕に討伐は無理だって言うのに、アルは僕に出来ることを精一杯考えてくれる。

僕でも出来るって信じてくれるのが僕はなんだか嬉しくて…


「農村地区の周囲には魔獣の出る密林もある。一日程度移動すればダンジョンもある。そこを中心に活動しよう。そうだな、二人で住める家を買って活動拠点にするのもいいな」

「なんで二人?じろーも居るよ?」

「…そうだったな、うっかりしてた。…そういえば、調理の腕は上がったのか?」

「上がったよ!僕もう卵だって焼けるんだから!僕の目玉焼きを食べたアリエスは「香ばしくて美味しいですね」って言ってくれた」

「そうか、アリエスが…。なぁテオ、俺には食べさせてくれないのか?いや、それより俺の作ったポトフを御馳走しよう。ゼッド爺さんに教えてもらってオーク肉でソーセージを作ってみたんだ。冒険者になるなら調理くらい出来ないとダメなんだろう?」

「ええっ!アルがソーセージを…。それいいの?貴族の子が厨房入るなんて怒られるよ?」

「テオだって入ってるじゃないか。大丈夫だ。ゼッド爺さんの娘さんの家を借りた」

「娘さん…ねぇ…」


僕と冒険の旅に出るためのいろんな努力を知って、アルタイルが本気だって信じない訳には行かなくなった。


『それよりも大切なものが出来た』


あれは…あれはどういう意味?


だけどアルタイルはアリエスが好きで…それに学院の女の子にもすごくモテモテで…


「む、娘さんっていくつの人?きれいな人だった?」

「気になるのか?…馬鹿だな、爺さんの娘さんだぞ。侯爵夫人よりも年上だ」


どうしたって言うのかな、僕は。なにをほっとしてるんだろう…


だって、だって、アルタイルは前世の推しで…一度はなんて奴って思ったけど今のアルは、アルタイルは…



----------


殿下がテオをオペラに誘い二人きりでお過ごしになったと聞き、焦った俺は我が家の馬に怪我を負ってもらう事とした。もちろんそういう体の話だが。


救護院ではどこにハインリヒ様の耳が潜んでいるか分からない。

俺が馬車に同席すれば、当然従者は御者に並んで外に出る。今この空間には俺とテオのただ二人。


俺が冒険者の話をすれば一つ一つに喜ぶテオ。

危険な真似はさせたくないが、テオには好きな事をさせてやりたい。

行動を制限して守られるだけの生活などテオは望んでいない。


大丈夫だ。俺がその分強くなればいい。


どさくさに紛れてそっと願望を交えてみたが、テオはあくまでジローを同行するらしい。

これは…殿下以上の障壁じゃないか?


話の中でゼッド爺さんの娘が出てくると、どうしたことかテオが気にしている。

もしかして妬いているのか?俺を多少は意識してると言う事か?


そっと手を握っても、やはり振り払う事はしない。

握ったその手に力を籠める。ぴくっと身体を弾ませて、そうしてプイっと横を向く。



ほんのりと赤く染まるテオドールの横顔を見つめながら…俺は御者に遠回りの道を示してみせた。





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