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悪役令息設定から逃れられない僕のトゥルーエンド  作者: kozzy


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49 水と油と…

ここしばらくは平穏な日々。何事もなく過ぎていく。

週に四回学校へ行って一回おきに孤児院へ寄る。

孤児院へはアリエスも一緒にやってきて、そのたびジローと醜い争いを繰り広げてる。


おかしいな…アリエスはもっと可憐なはずなのに。なんでこんなにとげとげしてるんだろうか?

今日も今日とて、じろーが僕を川へ連れ出したとアルから聞いたアリエスは、まるで鬼のような形相でジローに詰め寄っている。


「決してやきもちだけで言ってる訳ではないんですよ。ジローあなたはお兄様の立場を分かっていない。安易な真似をして何かあったらどうするんです?お兄様はそのへんに居るただの貴族子ではありません。〝美貌の神童テオドール”であり王太子殿下の婚約者候補です」

「あわわわ…アリエス…そんなに怒らないであげて。僕が行きたいって言ったんだから…」

「いいんだテオ。さすがにこれは俺が悪かった。ただ俺は…」

「俺はなんです?どうぞおっしゃって!」

「俺は焦ったんだ…テオが王城の夜会に行ったって聞いて…王子とダンスを踊ったって聞いて…」

「なんだそんなこと。ダンスなら僕とも踊りましたよ。ねぇお兄様♡痛たっ!」ゲシッ

「いちいち腹立つ奴だな!うるせーよ!はんっ、いいんだよ。俺にもテオと二人だけの秘密は出来たからな」バシッ


ひぃぃぃ!誰か止めてよ!


こんな喧嘩が日常茶飯事になりつつある今、もはや誰も止めには入らない。すごいな、孤児たちのスルースキル。


だいたいアルが余計な事を言うからこうなったんだ!今度文句を言っておこう。それにしても…


この間のアルタイルにはちょっと参った…。だって一番好きだったゲームの顔、推しの顔をしてたから…


初めて会ったあの苦い思い出の日、アルタイルもまだまだ子供の顔をしてたけど…

僕より先に成長期のグラフ線を伸ばしたアルはゲームのアルに近づいている。


アルタイルはゲームの時の僕の推し。

ゲームの中ではテオに容赦の無かったアル。ここでもひどいこと言われて一時は大嫌いって思った。だけど今は一緒に救護院で働く仲間だ。


パーティーにも入りたいって言ってくれた。…僕の目をじっと見つめて…僕の手に…


「お兄様!なにか不穏な気配が…今何考えてました?」

「なっ、何にも!何にも考えてないよっ!」

「いーや、テオ、お前顔赤い!何考えてた!」


二人の追求から逃れて僕は子供たちの新しいリーダー、ヤンと一緒におやつの用意をする。

今日のおやつは新作だ。ジャガイモが捨てられていたので…切って揚げて塩振って…ポテトチップスを作ってみた。


この世界ではジャガイモを食べる習慣が無い。

なんてもったいないんだろう。揚げてよし。焼いてよし。蒸かしてよし。ジャガイモは至高の食べ物だというのに。


とはいえ、今日のポテチは思ったよりも分厚いし、水撥ねが怖くて低温にしたからか少し油でギトギトしてて、カリッとパリッとしなかったのは今後の課題としておこう…味はいいんだよ。味は。



油まみれのポテチでもそこそこ好評を得られ、大満足なまま屋敷に戻れば…はぁぁぁぁ…次は王子か…


「やぁテオドール。孤児院の帰りかい?熱心だね」

「…何しに来たの?」


会うのは先日の夜会以来だ。

なんだかんだ言ったって、すでに公務とやらを担っている王子は忙しい。

学院の試験日以外は王子がレッドフォード邸を訪ねて来ない限り会う事は無い。

だって僕からはお城なんか行かないし。


「君の心を掴むのになりふり構っていられないと気付いたのでね、こうして誘いにきたんだよ。さぁ一緒に出掛けよう。今日は新劇場のこけらおとしだ。新作オペラを観賞しよう」


「えっ!オペラ!」


オペラかぁ…ちょっと気になる…ぶるぶるぶる…


「いいや、行かない!」


「そう言うと思っていたよ。ほらテオドール。これなんだと思う?」

「んん?…白い…もふもふ…ネコ!」


「キャスパリーグだよ。テオは魔獣が好きだろう?小さい魔獣を飼いたいと言っていたね。君にプレゼントだ」


それは白い巻き毛の背中に小さな羽の生えたネコ。…みたいな魔獣。


「ええー!これどう見てもネコ!嬉しい!ネコだ!可愛い!抱っこ、抱っこさせて!」

「おおっと、君が私に今夜一晩付き合ってくれたらね。そうしたらこれは君のものだ」


卑怯なり王子!


「うぐぐぐぐ…し、仕方ない…これもネコちゃんのため…」


僕は前世から猫が大好きで…、でもお父さんがネコアレルギーで飼えなかったのだ。

まさかここで飼えるなんて思ってもみなかった。超絶嬉しい!


「ほら、これに着替えておいで」


新品の服まで持参とはなんてマメなんだろう。

僕の居ない間にお母様とは話済みみたいで、僕はすんなり連行された。


王家の馬車はレッドフォード家の馬車とは方向性の違う豪華さで、たくさんの護衛が周りを囲んでいて僕はちょっと恥ずかしい。


こういう時って忍んだりはしないんだ…

まあね、身分を隠してデートとか、あれは映画やドラマの話で、現実的に考えて王子が一人の訳が無い。



馬車の中には初めて会う人が乗っていた。それは王子の従者で、遠縁の子爵家のご子息だとか。


「ケフィウスと言う。高等部の次期会長だ。学院生活で困った事があればこのケフィウスに言えばいい。ん?何を探してる?」

「今日はデルフィは?デルは居ないの?」


「…はぁ…、随分と懐いたものだね。彼が居ると君は彼とばかり話すからね。今日は遠慮してもらったんだよ。だから代わりに来てもらったのだよ、このケフィウスに」


「私ではご不満ですか?デルフィヌスほどではありませんが私もなかなか役に立つんですよ」


「…役に立つからデルフィが好きなんじゃないもん。デルフィはうるさいけど裏表がないから好きなの。ケフィウスさんはまだわからないけど…裏ありそう…」


憮然とするケフィウス氏と苦笑いの王子。

だって時期会長ってことはゲーム開始時の会長でしょ?会長と名の付くキャラでピュアなキャラなんて見たことない。


【みら学】のあの会長はいつも顔無しでしか現れなくて、王子にとってのサポートキャラがこの会長だったのだ。


…ああなるほど、従者だからあれほどサポートしてたのか。


生徒会室シーンでは常に王子の背後に立ってた顔の見えない会長さん。いつも一緒だなとは思っていたけど…そういう事か。


アリエスがワンドを忘れて困ってるとか、衣装の飾りが無くて馬鹿にされてるとか、そういう情報をさり気に伝えて王子が好感度を上げるのにいつも一役買うんだよ。


顔すらなかったモブキャラなのに…へぇ~…こうやって登場するんだ。じゃぁ、他のモブも居るってことだね。


なんだか地味に感動…




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