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悪役令息設定から逃れられない僕のトゥルーエンド  作者: kozzy


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48 ルート アルタイル

「テオ、テオドール」

「何?何度も呼ばなくても聞こえてる」


今日はゼロの日。救護院でおじいちゃんたちにダンジョンの話を聞く日だ。

僕は家で作って持ってきた新しい湿布と、ドワンゴじいちゃんに頼まれた腹痛の薬を棚に片付けながらアルタイルに絡まれていた。


「川に行ったってサグデンさんから聞いたけど…供は誰か連れて行ったのか?」

「供…じろーと一緒に行ったんだよ。いいから早くそっちの包帯きれいに巻いて。早く包帯交換終わらせて西の国の三角ダンジョンの話してもらうんだから!」

「…あまり危険な事はしないでくれ。何かあったらどうするつもりだ」

「じろーが居るから大丈夫」

「ジローは十七って言ってもまだ成人したての半端者だ。屈強なゴロツキに束で絡まれたらお前を守り切れるとはとても思えないな!」


…なんで絡まれる前提なのか分からないけど、アルタイルが僕を心配してるのは伝わって来た。

だけど救護院の裏手ぐらいで大袈裟じゃないか。ここから川までは林を抜けて十分程度なのに。


「なぁテオ、一度ジローに会わせてくれ。お前が信頼する奴なら俺も一度会っておきたい」

「なんで会う必要があるのか分からないけど…ここに来てればそのうち会えるよ。じろーは救護院にも良く顔を出してるみたいだし」


僕が勧めたアームハンドでジローは少し余裕が出来た。


広場での露店は順調で最近どっかの商会が声をかけてきたと言っていた。

ジローはそれをここのおじいちゃんたちに相談してるらしい。


ギルドには二種類ある。冒険者や傭兵があつまる冒険者ギルドと商人や工房主が集まる商業ギルドだ。


だからって冒険者と商業ギルドは無関係な訳じゃない。その日その日の相場を見てさばいた魔物の素材をどっちに売るか決めるんだって。

「冒険者だからって世相に無関心でいたら損をする」って話すジローの顔は大人びていてすごくカッコよかった。


僕もこんなカッコイイ大人になりたいな。



--------------



「アルタイルは川遊びしたことあるの?僕初めてだったからすごく楽しかった。魚がいたの」


「そうか、テオは川を見たことなかったのか。レッドフォードの領地では川や湖には行かなかったのか?」

「領地に行ったことないから分からない」


「…すまない」

「なんで謝るの?」


手当も終わり帰宅の準備をしながらいつものようにお茶を飲む。


テオが社交を避けていたのは分かっていたが、まさかハインリヒ様の囲い込みがここまでだとは。

後妻の連れ子とは言え筆頭侯爵家の息子が十四の歳になっても領地に入ったことが無いなどと…普通ならあり得ないことだ。


貴族家の本邸とは領地邸を指すのが普通だ。それなのにテオを王都のあの屋敷から出さないのには何か理由があるのだろうか…?


最近気付いた事がある。

救護院と孤児院、どちらにもほど近い側道には昨年できた薪を売る店がある。

この廃材屋はおそらく侯爵家の手の者だ。ハインリヒ様がお付けになった護衛だろう。

店主は薪拾いを名目に孤児院の裏手、救護院の裏手、テオの姿に合わせて現れる。


所詮テオドールはハインリヒ様の掌の上と言う事か…


これほどまでに自由を求めるテオの夢を叶えてやりたい。そのために俺は何をすればいいだろう。何が出来るのだろう。


「テオいいか、冒険者になる夢、それを簡単に口にしてはいけない。どこで誰が聞いているかわからない。その時がきたら必ず俺が連れだしてやるから、だからそれまでは大人しくして待っていてくれ」


「え~?連れ出すって…何言ってるのアルタイル」

「冒険者になりたいのだろう?」

「冒険はじろーと行くんだもん。パーティーを組むんだよ。知ってる?冒険者はパーティーを組んでダンジョンやメイズに入るんだ。じろーは前衛、僕は後衛、回復役は居ないから沢山ポーション持って行かなくちゃ」


またジローか…


「…なら俺もそのパーティーに入ろう。ジローは物理戦士だろう?俺は魔法で戦う魔法戦士だ。三人ならもっと心強い。違うか?」

「ええっ!アルタイル、ぼ、冒険者って、何言ってるの!」

「おかしいか?俺は三男だ。家を継ぐわけでもないし気ままに冒険者になるのも悪くない」

「悪いよ!ええっ?司法長官になる夢は?」


司法長官を目指す俺の夢をテオに話したことは無かったと思ったのだが…


アリエス辺りが話したのか?それとも殿下が?人のことだというのにオロオロと慌てふためくさまがとても可愛い。


「それよりも大切なものが出来た。だからいいんだ。テオ、俺をパーティーに入れてくれ。俺はお前をどんな危険からも守って見せる」


テオの目を見て心からの気持ちを伝える。目を逸らさず俺を見るテオの顔は…どんどん赤くなっていく。


「あぅ…そっ、その、ひ、一人では決められない…じろーに聞いて…ぅぅ…」


手を取っても振りほどいたりしない。

俺は確信を持って手に取ったその手の平に唇を押し当てる。

すると一瞬身を固くしたがすぐに憎まれ口をたたきだす。今ならもうわかってる。これはテオの照れ隠しだ。


「も、もうっ!勝手に手さわらないでっ、そ、それに、その、あー!もうっ!バカっ!アルタイルのバカっ!」



馬鹿と言われてこれほど嬉しいとは思わなかったな…




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