41 異世界の飲酒は合法です
中等部第2学年最後の試験。今日も今日とて僕は教授と差し向かい。
当然試験の出来は…以下略。
それよりも、教授と示し合わせていた王子によってあっという間に連行される僕。行き先は王子の専用個室だ。
王子の婚約者(仮)とは言え、王子は僕を王宮へはあまり呼びたがらない。
僕も行きたくないからちょうどいい。
婚約が仮で良かった。そうじゃなきゃ婚約内定の瞬間からお妃教育が始まるんだから。
ゲームのアリエスは難なくこなしてみんなから絶賛されてたけど、あんなハードスケジュール、受験でもないのに僕は二度とごめんだよ。
「やぁテオドール、ひと月ぶりだね。君とはここか君の屋敷でしか会えないから大変だ」
「でもレッドフォード邸にはそんなに来ないじゃない」
「君の屋敷はハインリヒが居合わせるとすぐ邪魔に来るだろう?彼が居ないなら居ないでアリエスが邪魔をしに来るし…まったくテオと二人きりで会う事がこうも難しいとは」
僕しーらない。
「早く高等部へ行きたいよ。そうしたら晴れて君は学院生だ。毎日顔を合わせられる。そうだ、いっそのこと入寮しようか?そして同室になるのはどうだい?一足先に朝から晩まで。いい考えだと思わないかい?」
「全然思わない。ありえない。それより他の人は?」
僕と王子の仮婚約はあくまで形だけなんだから何にもしなくていいのに、こういうところがマメと言うか、事あるごとに会う機会を作ろうとする。
「ああ、皆まだ試験中だよ。君は特別室だ。私も今回は君の真似をして教授と個別に済ませておいた。こうして君との時間を作るためにね」
職権乱用を高々と宣言しながらロイヤルウインクが飛んできた。い、イケメンめ…
こんなこと本気でする人存在したんだなってびっくり。スチルで見なかった表情。これがゲームならきっと飛び上がって喜んだのに。
「私の可愛い婚約者には…邪魔者が多すぎてね…やれやれ、一苦労だ」
「邪魔者って?それより!今度の夜会…ぼっ、僕行かないんだからっ!あんな衣装送ってきて…金と青しか入ってない…こ、これみよがしな衣装…」
王子が僕に送ってよこした衣装。それは見る人が見ればわかる印がついている。
その印とは衣装に刺繍の色。あの金色は僕の髪に似た少し暗めのキャラメルブロンドなんかじゃなく、透明感のあるいかにも高級そうなプラチナブロンド。王子の色だ。
「これ見よがしで何が悪いの?君は私の婚約者じゃないか。私の衣装は君の金と淡い茶のとても上品な仕上がりだよ。これで誰もが思う。この婚約は盤石だと」
「仮!仮だから!仮で良いって言った!それに王宮には呼びたくないってそれも言ってたのに!」
「そうは言っても次の夜会は大切なお披露目の機会だからね。君の。仮とは言え王太子の婚約者である以上、君を知るものがここまで少ないというのはあまりにも異様すぎる。少しの時間だよ。あきらめて出てもらおう」
ぐぬぬ…正論過ぎて反論が出来ない…屁理屈は僕の専売特許なのに。
「ダンスも踊らなければいけないね。ほらおいで、練習してみよう」
スロースロークイッククイック、スロースロークイッククイック…ううう…足の長さに付いて行けない…
「これはどう?ほーら」
片手を持ち上げてクルクルと回転。
ちょっとやめてよ、目が回るってば。
「うぷ…、酔った…」
「ああすまなかった!ほらこれを飲んで。気付けだよ」
手渡されたお猪口を一気に飲み干す。それを呆れた顔で見ている王子。
「…警戒心が無さすぎる…変なものが入っていたらどうするんだい?まったく。」
「王子はそんなもの入れないもん…」
「…ずいぶん信用してくれているんだね。嫌われているのかと思っていたのに…」
「嫌いじゃない…」
「へぇ?」
ゲームの王子は何を考えてるのか分かりにくかったけど、それでも公正明大な人だった。断罪寸前のテオドールの言葉にさえ耳を傾けてくれたんだから。
そんな王子だったからテオドールはどんどん好きになって…まぁ、話を聞いたうえで断罪されたんだけど…
ああ…テオドールが哀れだ…
と言うか…なんかポカポカしてきた?顔が…カッカしてる…。
「熱い…」
「ああ、気付けにお酒を少し…テオ?」
「熱い…うう~ん、暑いよぅ…」
「テオ!ちょっと待って!」
目の前にいたはずの王子がどこかに行っちゃった。そして僕はふわふわと雲の上に居て…太陽が近いせいか妙に暑くて…なんか寄りかかるのにちょうど良いガジュマルの木があったから…身体を預けて眠りについた…
「レグルス!いったいこれは…」
「ち、違うんだよデルフィ。これはテオが酔って、その」
「酔って?テオに酒を飲ませたのか!いったい何をしようとした!とにかく離れろ!上着まで脱がせて…こんな子供に、見損なったぞ!」
「そうじゃない、ダンスの真似事をだね、その」
「ダンスが何故こうなる!おかしいだろう!」
「ううん…もうやめてよ…ヤダ…ムニュ…」
「!」
「⁉」
その後目を覚ました僕は王子に懇願され…
デルフィの誤解が解けたのは陽が暮れる頃だった。




