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悪役令息設定から逃れられない僕のトゥルーエンド  作者: kozzy


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39 関係の修繕はコツコツと

俺にとって月に一度の待ち遠しいこの日。救護院への慰問の日だ。


そういう体でテオドールの手伝いを初め、かれこれもう一年近くになる。

ようやくテオから愛称で呼んでもらえる程度には関係も改善したと思うのだが、俺は今もあの時の言葉が頭から離れない。


〝許しても忘れない”それは本当にその通りで、一度口にした言葉をなかったことには出来ない。

だから俺は今日もこうして、テオの信頼を取り戻すべく努力するしかないのだ。


王城の庭であの日テオはこうも言った。


「良い奴だと思ってたのに、がっかりだよ」


テオが俺の事をどこで知っていたのかは分からない。だが俺の事を良い奴だと…一度は思ってくれていたのなら、俺はその気持ちを取り戻したい。


もう二度と、落胆させることも裏切ることもしたくない。

そうして信頼ががっかりを上回ったなら…

もう一度良い奴だと思ってもらえるだろうか?そして厚かましいのは分かっているが願わくば…


殿下から聞いたテオドールの事情。

レッドフォード家が抱くテオへの思惑。たとえテオとハインリヒ様に血のつながりがないとは言え、義理の兄弟で結婚など…この謀略が交錯する貴族社会で決して体面が良いとは言えないだろうに。

それをまさか、筆頭侯爵家、レッドフォードの当主がお認めになるなど…あり得ない。


テオドールを思い遣って殿下はテオを婚約者候補に指名した。

だけどテオは十六になったら家を出ると今も頑なに言い張っている。

それが上手くいくとは思えないが…もしテオが家を捨て、身分を捨て、冒険者となって市居へ降りるというなら俺はそれを手助けしたい。

幸い俺は伯爵家とはいえ三男だ。背負う期待など嫡男のそれほど大きなものでもない。


だからそれまでに…出来る限りの努力を、準備をするのだ。万端に。


「やぁテオドール。孤児院はもう良いのか?」

「もう寄って来た。今日はゼロの日だから早めに切り上げてこっちに来たの。おじいちゃんに約束の湿布作ってきたんだから。アルは生徒会なかったの?」

「ああ、後期試験の事前準備で今日は居残り禁止なんだ。全員速やかに帰宅の途についたよ。今日は棚を直す約束をしているからな」

「試験…めんどくさい…」

「どうせテオは楽勝だろう?ああ、面倒なのは殿下とのお茶会か。ははっ」


最近ようやくここまで…軽口を聞いて笑い合えるまでになった。


幼子のようなテオの怒りは大して長く持続はしない。ガーっと怒って発散すれば何後も無かったように鎮火するのだ。

慣れてしまえばこれほどわかりやすい奴も居ない。テオにはいつも含みが無い。


「テオ…その木の端くれはなんだ?」

「これ?じろーに渡すの。アームハンドの材料にするから。家の庭には良い感じの固い枝がたくさんあるから。」

「お前これ…貴重なパウサントの枝じゃないか…いいのか、こんな…」

「そうなの?だって落ちてる枝しか持ってきてないよ?お母様はお香代わりにしてるけど…離れの周りにたくさん植えてあるんだもん。従者が病を祓う木とか何とか言ってた…。う~ん、そうか、そんなに貴重ならニセモノと差別化できるよね。じろーにこれもギルドに届け出すよう言っとかなくちゃ」


ジロー…、テオの口から唯一出てくる個人名だ。

あの日俺たちが乱入した時、その場にいなかったその彼とは孤児院でのリーダー的な役割の人物で…おそらくはテオが今最も信頼している相手。何故ならテオは惜しげもなくその知恵を、彼の手助けをするために差し出したのだから。


ここの老人たちもその彼の名はよく口にするのだ。頼りになる奴、将来が楽しみな奴だと。


「テオ、友人の為に力になりたいのはよく分かる。だが、ギルドに登録が必要なほど益が絡むものは勝手に」

「お兄様にもう言われた。これからはホイホイアイデアあげちゃダメだって。ホントは割りばしマシンガンもあげようと思ってたんだけどダメだって。だけどこれはもういいって許してくれたから」


「ワリバイマシンガン?」


テオに見せてもらったその枝を組み合わせたL型のものは、ラバーケロッグの皮で作った伸縮性のある輪を連続で打ち出す今まで見たことも無い武器だ。もう一つ〝パチンコ”と言うものも見せてくれた。


…これがテオの知の一端か…


テオが先走る前にと、既にハインリヒ様が登録を済ませたと言うそれら。

これらを躊躇なく渡そうとした相手がジロー…。どんな奴か会ってみたい…。テオの信頼を得られたその人物に。


「魔法が使えなくったってこれがあればちょっとは戦える。僕だって戦えるんだから!」


鼻息も荒くテオが言う。


「テオは戦いたいのか?」

「…た、戦いたいわけじゃないけど…冒険者になるなら薬草詰みだけじゃ稼げないし…それに可愛い魔獣だったら自分で捕まえて飼いたい」

「ははっ、飼いたい…か。可愛くても魔獣は魔獣だ。危険だぞ?そういえば、デルフィヌスに妖精を見せて欲しいと強請っていたな。…それなら、俺がいつか神獣を見せてやろう」

「えっ!神獣?」

「ああ。我がブルースターは風を司る家系。領地には時に神獣が降り立つと言われている。いつかテオに見せててやりたい。」

「見たい!見せてよアルタイル!」

「ああ、いつか必ず…。」



必ず連れて行ってやる。ブルースターの涼やかな風の舞うあの丘陵に…



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