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悪役令息設定から逃れられない僕のトゥルーエンド  作者: kozzy


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35/101

35 過去との遭遇

最近すっかり僕の背を追い越した【みら学】の主人公アリエス・レッドフォード、十三歳。

むむむ…どうしてアリエスが孤児院についてくるのさっ!


それもこれも僕が〝筆頭婚約者候補”になったせい。面倒だからこれからは婚約者(仮)で統一するね。


学校へ通うのも、学校帰りに孤児院に行くのも、「王家の婚約者(仮)足るものが」と大反対を受け、得意のわがままを振りかざし慈善活動として許可をもらったのは記憶に新しい…が!すべてアリエスの監視付きが条件だ…


お母様はアリエスと行動を共にするのを嫌がったけれど、意外なことにお兄様はすんなり許可をくれた。


なんでもアリエスが言うには、アリエスと王子は同じ学院生徒会に所属する身。

高等部に上がるまで王子の行動を把握したうえ僕に近づけるなと命令があったそうな。

その命令を受け、とても良い顔良い声で返事をしたアリエスに「ずいぶんわきまえているようだ」なんて、お兄様はご満悦だったと従者からは聞いている。


そして今日も学院の授業後、アリエスはやって来る。僕のあげたおんぼろ馬車で。


「ねぇ、今ならお兄様あたりが予算出してくれるかもよ。馬車買い換えたら?」

「いいえ!僕はこの馬車が好きなのです。壊れたって何したって修理しながら使い続けます。この馬車にはお兄様からの愛が詰まっていますから…ふふっ♡」

「え…そんなの詰めてな、」

「それに!ハインリヒ様にあまり借りを作るのはおよし下さい。もうっ!困った事になっても知りませんよ」


「借り…?」


お兄様は今のところ何も言ってこない…だから僕も何も言わず普通に過ごしてる。


だってお兄様は…まぁ多少スキンシップが過剰すぎて困るところはあるけど、基本的にゲームの中でも外でもずぅぅっと味方だったから…いきなり嫌いになんてなれないよ。

僕が無事冒険者になった暁には、お兄様からの依頼は率先して受けてあげようってそう決めてるんだから。




---------------



「また来たのかお前…」

「ジロー…居たんですね。さっさと仕事に向かわれてはいかがですか?一刻も早く」

「残念だったな。俺はテオから任されたこのアームハンドを売ることになったんでな!ある程度数が出来たら露店で売る。だからここでテオの顔を見ながら作業すんだよ。テオの希望でな」

「おっ、お兄様の…ぐっ!…ふ…ふふっ、お兄様の知恵をお借りしないと稼げないだなんて情けないとはお思いにならないのですか?」

「うっ!…いいや、これはテオが()()()()()()()()()()()()()って与えてくれたアイデアだからな。甘んじて借りるさ、知恵でもなんでも」


「あわわわわ…」

「ほっときなよテオ様、いいからこっちで本読んでよ」




僕の愛しいお兄様。テオドールお兄様。

そのお兄様がまんまと殿下の婚約者候補に指名されたのは全く予測もできない計算外。

けれどハインリヒ様がお兄様の監視を命じてきたのは降ってわいた幸運だった。


こうして学院での用が無い日は正々堂々お兄様に付いて孤児院へ来られる。

ああ…なんて幸せなんだろう。お兄様と二人っきりの逢瀬、……そう思っていたのに!


お兄様の聖地、孤児院には恋敵のジロー、僕の仇敵でもある悪ガキのジローが居た。


ジローとの出会いはお兄様との出会いよりも古い。

と言っても、僕はその時のことをあまり覚えていない。


覚えているのはおかあさんが亡くなった後、泣きじゃくりながら知らない大人に手を引かれ薄暗い建物にやってきたことくらい。

そしてそれから何日か経った後、やっぱり知らない誰かに大きなお屋敷に連れていかれ…そこでお兄様と運命の出会いを果たしたのだ。


その薄暗い建物こそ、このお兄様の聖地である孤児院だったとは…やっぱり運命を感じずには居られない。

だけどその聖地には、とんでもないお邪魔虫がおまけの様にくっついてきた。


遠い遠い昔、薄暗い建物の中でおかあさんが居ない事もこれからどうなるのかわからない事も、不安で悲しくてとめどなく泣きじゃくってた僕に何度も何度も執拗にコガネムシをぶつけてきた馬鹿、それがこのジローだ。


今ならそれが子供なりに僕を元気付けようとしたんだろうって分かる。

分かるけど…

どこの世界にコガネムシぶつけられて元気になる、親を亡くした子が居るっていうんだ!馬鹿め!


おかげでこの場所、この建物、シスターの顔さえ覚えてなかったのにジローの顔だけは一目見るなり思い出した。


そしてそれはジローも同じで…


「お前あんときの…おれの虫かごン中、全部逃がしやがった生意気なチビ!可哀そうだと思って分けてやったのに…。どっかの貴族家に連れていかれたって聞いてたけど…テオんちだったのか!」


思い出すだけでもムカムカするのに、お兄様が「じろーじろー」って懐いているのがさらに腹立たしい。


そう、僕は大貴族レッドフォード邸では委縮しずいぶん大人しく過ごしてきたけど、おかあさんと暮らす歓楽街の生活ではそれなりに子供らしく活発だった。

あのガラの悪い歓楽街でうじうじしてたら簡単に足元をすくわれる。

あのままあそこに居たらきっと僕もこうなってた。ジローみたいに。


だけど僕はあの薄暗い部屋からこうして拾い上げられ…

幸運にもお兄様がこうして、生活も、教養も、学院生活も、貴族の子として生きられるよう全てを与えてくれたから…!

お兄様のお心に応えるべく恥じないアリエスであらねばならないと…頑張ってきたのだ、本当に!



お兄様との出会い…長くなるけど聞いてくれる?



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