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悪役令息設定から逃れられない僕のトゥルーエンド  作者: kozzy


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18 攻略対象者たち

学院の3階には王族の為の個室が用意されている。

今の使用者は第一王子である私、そして公爵家の嫡男、従兄弟のデルフィヌスだ。


今日は生徒会のメンバー揃ってテーブルを囲み昼食を共にする日だ。

こうして食事をとりながら学院内の最近の様子を、情報を持ち寄り問題はないか話し合うのが常なのだが…


「それで今日はアリエスが一緒じゃないのか。まったく馬鹿な真似をしたものだね。私からも言ったはずだろう?本人の言い分を聞かずに断じるのはフェアじゃないと」

「だがレグルス、あれだけの悪評、無理もないとは思わないか?僕はこの二人を責めるのは酷だと思うけどね。レッドフォードの次男に関しては噂と言うより既に周知された事実のようになっていたじゃないか」

「それでもだよデルフィ。むしろ私は何故侯爵家がこれほどの噂を放置しているのか、そちらのほうが気になるけどね」


何故侯爵家はテオドールの噂を払拭しようとはしないのか。侯爵家にとってもあまり良い状況とは思えないのだが。

現当主は領地に引きこもり王都邸へはほとんど顔を出さないと聞く。きっとそこには隠された何かがあるのだろう。



「だけどそうだね。気になるなテオドールか。一度私も会ってみたいな」

「やめてくれレグルス。お前が動けばいちいち事が大袈裟になる。ましてや顔を合わせてうっかりその気をだしてきたらどうする?」

「その気とは?」

「殿下の婚約者に…とか。あのテオドールだ。万が一噂通りの我儘を押し通して来たら厄介だ」

「どうせそれを最後に決めるのは両陛下だ。問題ないさ」



表向きは平静を装うアルタイルとは違いタウルスは分かり易く落ち込んでいる。

落ち込む前に反省はしたのだろうか?


「それでタウルス。お前はその話を聞いて何を思ったんだい。そしてどう感じた?そこから何を得たんだい」


「俺は…あいつ、テオドールに貴族とスラムの住人どっちを疑うかと問われ自信を持って答えられなかった。…双方の話を聞く…そんなのはあたり前の事なのに…身なりの良い貴族と荒んだスラムの住人…きっとそうだ。目の目で何かが盗まれたと聞いたら、俺は恐らく…話を聞くまでもなく…スラムの住人を疑った…そういう事だ…俺のしてきたことは。…あいつに言われるまで自覚もなかった。…騎士団長が聞いてあきれる…、これでは…正義の騎士にはなれないな…」


「間違いだと気づいたなら正せばいい。間違いを認めない者こそ私は恐ろしいよ。そういう者は自分の言葉を真実にするためにどんな嘘でも平気でつく」


「タウルスだけじゃない、俺もです。テオドールに真偽の確認ではなく、自分の疑惑の確証を取りに来たのだろうと言われ反論できませんでした。噂の真偽は確認しないのかと問われ、俺には人を裁けるほどの器は無いのだと断言されたような気になりました。司法の場を目指しておきながら…これほど自分自身を恥じ入ったことはありません」


「そう、公正であろうとすれば感情に振り回されてはならないのだよ。己の目で耳で直接知り得たことを余計な雑音を入れないで判断する。簡単な事ではないけどね。人には感情がある。」



----------------



思えば俺もタウルスもアリエスへの想いに目がくらんでいたのだろう。

彼に好ましく思われたいと頼られたいと、その想いで空回りをした。…テオドールが悪ならば俺たちは正義の騎士になれる…


今回の事はタウルスだけじゃない、父の跡を継ぎ司法長官を目指す俺にとっても痛い出来事といえる。


彼に謝らなければ。

…大きな目一杯に涙をこらえていたテオドールの顔が浮かぶ。

薄茶の瞳を見開いて決して泣くまいと唇をかんで…

悪い子供と言ったとき、傷ついた顔で俺を見たあの顔が頭から離れない。


…ひどい事を言ってしまった…


『世の中には取り返しのつかないことがある。これから言葉は慎重に選ぶのだな』


いつだったかタウルスに言った俺の言葉だ。まさか自分自身で噛みしめることになるとは…


見たものだけが事実なら…俺たちが見たもの…、それは孤児の皆にあれほどにまで慕われていたテオドールと周りをその子供たちに取り囲まれすっかり悪役だった俺たち。

それが事実だ。あの場に存在したそれだけが事実。




その日の夕刻、テオドールが通っている市居の学校。その前で俺は彼の出てくるのを待っていた。


「…お前、何してるんだ、こんなところで」

「いや、謝ろうかと思って…お前こそなんだよ」

「はぁ…同じだよ、俺も謝りたくて来た」


だが玄関から出て来たテオドールにはとりつく島もない。

俺たちの姿を見つけるや否や思い切り顔をしかめ、玄関前につけた馬車に乗り込むと恐ろしいほどのスピードで馬を走らせる。



謝罪さえ出来ないと言う事がこれほど辛い事だとは…

俺たちはそんなことすら今の今まで知らなかった。




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