146 素朴な疑問
「ねぇリヒャルト君、ルトガー君、大人の勉強って何だと思う?」
ここ最近僕を悩ませているその単語、大人の勉強。
お兄様はあれから何も言ってこない。というか、最近帰りが遅いからね。
レグルスの出発に向けて税関長補佐であるお兄様にもいっぱい準備があるのだ。
だから気の置けない友人に…さらっと聞いてみたのだけど…
「大人の勉強…、剣とか?」
「剣は学院でもやってるじゃん。っていうか、武系の家は子供のころからやってるじゃん」
「あれじゃないの」
「あれ?」
「って?」
「閨の勉強」
「ああ…それね」
「それ?ねや?何それ?わかんない」
「うそでしょう!何で知らないのテオ君」
「…あのね」
耳打ちしたリヒャルト君が教えてくれたのは…なんとっ!エッチの手順!
えーっ!お兄様ってば、なんてもの教えてくれようとしちゃってんの⁉
そ、そ、そ、そういうものって普通はエッチな雑誌とかエッチなビデオとかそういうもので…しまった…どっちも無い…
「そもそもテオ君、今まで教わってなかったの?殿下の婚約候補でありながら?そのほうが驚きだよ」
「だだだだ、だって、そんな」
BLゲーは好きだったけど、僕はそもそも18禁どころかずっと15禁で…。ま、まぁお姉ちゃんと一緒にやってたけどね。へへ。
そもそも漫画だって、そういうとこだけうるさいお姉ちゃんは、厳選した漫画しか貸してくれなかったし。
朝チュンとか暗転みたいなシーンしか見たことないよぅ…
「…ねぇテオ君、ちょっと聞くけど…君一人でしたこと無いの?」
「な…ない…。まさか…ルトガー君あるのっ?」
「まあそれなりには…」
「…ふつうあるよね」
なんてことだ…。みんなそんなに進んでたなんて…
だ、だだ、だって僕そういう感じになった事なんて…、実は前世でもここでも一度もないっ!ちょっと遅いんじゃないかなぁ~…って言う自覚はあった。
「…テオ君小柄だから遅いのかもね。医局で相談してみたら?」
「リヒャルト君、ついてってやりなよ」
「い、いい!むっ、無理っ!ムリムリムリ!」
「ならアリエス様に相談するのは?」
「え、やだ」
「ならどうするの?誰かに聞くって言ったって…。僕は嫌だよ。テオ君相手じゃ友情がおかしくなりそう」
「うぅ……アリエスに聞く…」
リヒャルト君…ルトガー君…、とっくにそっち側だったなんて…裏切者…
ああ…家についてしまった…。気が重い。でもあのことについて聞いてみなくては。
「アリエスはそういう事知ってるのかな?」
…どうせ避けては通れぬ道だ…。どうせ聞くなら早いに越したことは無い。はぁ…
「ねぇアリエス、大事な相談があるんだけど…あとで僕の部屋に来て欲しいの」
所変わってここは僕の部屋。
「た、確かに貴族家では、婚姻前に家族や家庭教師がそれとなく手解きすることもありますが…」
一連の流れを話して聞かせると、アリエスは口ごもりながら…それでもよくあることだとそう言った。
そうかぁ…やっぱりここではみんな家族から教えてもらうんだな…
大人の勉強…意味を知ってびっくりしたけど、それが普通なら仕方ない…。相手はお兄様だし、保健体育と思えばいいのかな?
「リヒャルト君はお父さんから教わったって。ルトガー君は従兄のお兄さんに聞いたって」
「それとは意味が違うような…」
「何が違うの?」
「いえ、なんでも。…お兄様の信頼を一番の命題としているハインツ様が無体な真似などなさらないでしょうが…、一応光の守りをかけておきますね。万が一など無いように」
「光のまもり?」
「お兄様の処、…、ゴホン、ともかく大丈夫です。いいですね、ダメなことはダメと、イヤな事はイヤとおっしゃるのですよ。わかりましたか?」
「う?うん。あっ」
「どうしました?」
「アリエスは誰に教わったの?アルタイルとはそういう事もうしてるの?」
「ごほっ、…そういう事は…聞かないのが嗜みですよ…」
「だって気になる!」
「はしたないですよお兄様…」
「アリエスのケチ」
「ケチって…。ともかく僕とアルタイルはまだ婚前ですからね。そういう事はしませんよ。…少ししか…」
…少しはするんだ。って言うか、少しって何するんだろう…




