142 完成まじか
久しぶりのエジプシアンダンジョン。
バスティト様は安定の唯我独尊。そこに僕の人権はない。
でも良いのだ。モフモフは気持ちいいから。
今のうちにいっぱい吸わなくては…すーはー
今ここには、うちと公爵家から運び入れた、テーブルセットにソファ、簡易ベッドやら、そして大量の猫用グッズでネコカフェみたいになっている。
ここだけの話だけどタウルスも時々癒されに来てるみたい。僕かデルフィが居ないとバスティト様は現れないけど、サンドキャット達はそれなりに集まるらしい。
ハチ割れのハッチはずいぶんタウルスに懐いたようで、嬉しそうに引っ掻き傷を見せる様子が実に微笑ましい。
「おや、テオも来てたのか」
「デルフィ」
また居たよ…
「今日はアリエス達は居ないのかい」
「うん。今日はフェニックスさんとゼッドじいちゃんと来たの」
「ああ、ゼッド氏には上であった。魔リンゴをもいでいたな」
「うん、そう。おじいちゃんは犬派だって」
「ほう、アヌヴス神か…。確かに冒険者やハンターにアヌヴス神は人気だな」
「なんで?」
「バスティト神が国守りならばアヌヴス神は邪悪なものから旅人を守ってくれると言われている。だから冒険者ギルドの看板にはアヌヴス神が描かれているだろう?」
「へぇー」
「今制作中のあの船はレグルスへのプレゼントだって?」
「誰に聞いたの?アル?まだ言っちゃだめだよ。サプライズなんだから」
「ふふ、船首にアヌヴス神でも描いておいたらどうだ?旅がつつがなく進むように」
それいいかも…
デルフィが言うにはレグルスは卒業と同時に外交大臣になると言う話だ。
王位を継ぐまでの間だけだけど、予行練習と社会勉強って感じかな?
それで国交を開けるよう何か国も直接打診してまわるみたい。今はそのために地上のルートを検討中だって。
クス…この船があればそのルートは白紙になっちゃうね。
早く渡したいな…、それで驚く顔が見たい。
「でもそうか…じゃぁレグルスは外国へ行っちゃうんだ…」
「しばらくね。半年か一年か…すぐに戻ってくる。どうした、寂しいのか?テオ、あまり振り回してやるな。彼は動じない性質ではあるがテオに振られたことを全く気にしていないわけではないのだ」
「ぅん…、ねぇ、ところでデルフィは?デルフィは好きな人居ないの?」
「居るだろう?ほら目の前に…」
「えぇっ⁉」
…なんだバスティト様か…
紛らわしいな!デルフィはもう一生独身で良いんじゃないかなっ!
ダンジョンから戻るとちょうど帰宅のお兄様の馬車とかち合った。ちょうどいいタイミング。色々聞きたいことあったんだよね。
何しろ最近みんな居ないことが多くて…。これを言うとルトガー君に、テオ君のせいって言われるけどね。
「お兄様会いたかった!朝ぶりだね。船はどれくらい出来たかな?午後は何してるの?宮廷に戻っちゃう?僕、船見に行きたいなぁ」
「テオドール…困った子だ。お兄様は書類を取りに来ただけなのだよ。せっかくのお誘いだがすぐに戻らねば。船はもうすぐ進水式だ、それまであと少し待っていなさい」
「えぇっ!いつ?いつの間にそんな出来上がってたの⁉」
そう。学院の卒業式、その記念すべき日。王家と貴族議会で学院長に話をつけて、今年の卒業式典は、なな、なんと!港で執り行うことになったのだって!
今年の卒業生にはレグルス、王太子がいる。
これから前例のない大事業、外交に関わるレグルスの為に、外交船の中で前途を祝う事になったのだとか。
す、すごい特別待遇…さすが王太子。
「あの船は殿下へのプレゼントなのだろう?テオから船体にかけるシャンパンを渡してあげなさい。ん?どうしたんだい、おかしな顔をして」
「いや、だってお兄様、レグルスと仲悪いかとばかり…」
「良くはないがね。私はね、王太子としての殿下はかなり評価しているのだよ」
なんと!
「この国の古い慣習…、それに辟易しているのは何も殿下だけではないのだ。遠き国との国交…殿下の手腕に期待している。新しい国となるやも知れぬ門出だ。もちろん祝福するとも。もっとも彼が喜ぶ形でね。殿下には今後ひとかたならぬ程頑張ってもらわねばならぬ。テオから労ってやりなさい」
おお…、お兄様って…大人だ…
でもお墨付きがでたからね。目一杯祝福しちゃおうかな。




