131 商業ギルド 6月
「ねぇアルタイルは商業ギルドの事って詳しいの?」
「まぁギルドには裁判沙汰も多いからな。どうしたんだ?」
レグルスが連れ居て行ってくれたはじめてのレストラン、そのお味は僕を十分満足させた。
行きたくて行けなかった三ツ星ミシュランのお店みたいで、僕は夢中になって舌鼓を打ち続けた。
そのときレグルスに詳しく聞いたのだ。調理法ごとに許可が要るのは、ギルドの中に物じゃなく技術に特許をかける部門があるからだって。
だからいわゆる職人さんはその部門で登録しないとその職業にはつけないんだって。その代わりに面倒ごとを引き受けてくれるとか何とか。
ううん、正確にはつけなくないけど嫌がらせが発生するようだ。
つまり、なんちゃら協会とかいうやつだよね。会費払って所属して、代りに色々フォローやサポートしてもらうっていうアレ。
「ああ、ソサエティの事か。何か気になるのか?」
「じろーの事…。だってタイヤはじろーが初めて作ったものでタイヤの登録はギルドでいいかもだけど、あのゴムの加工は今のとこじろーにしか出来ないでしょう?どうなるのかなって思って」
「…流石はお兄様、眼の付け所が違いますね。アル、ハインリヒ様はなんと?」
「そうだな…今度確認しておくが、恐らくは新たにソサエティを立ち上げることになるだろう。もしかしたら二つ同時に」
「二つ…ですか?アル」
「ああ、タイヤの加工と人力の車夫だ。誰でも彼でも車を引かせたら問題だらけになりそうだと言っていたからな」
「それで登録制にして人物像の保証をするのですね」
どんどん話がふくらんでいくのを僕はワクワクしながら今日も見ていた。
こうしてみんなで何かを作り上げていく一体感をレグルスは知らないんだな…。教えてあげられたらいいのに…
その後、三人でジローの商会へと足を運ぶ。改良した人力車を見せてもらうのだ。
「じろー、新しい日除けもう出来た?」
「ああ出来た。早いだろ?お前の兄さんがすげー怖い顔で急かすもんでな…はは…」
「ご、ごめんね…。ところで先週も来たんだよ。どこ行ってたの?帰って来ないからマカとずっと遊んでたんだよ」
「ああ悪い、ちょっとヤボ用でギルドへ」
「噂のギルドかぁ…」
「お兄様、マカのお仕事を邪魔してはいけませんよ?」
「しっ、してないよっ、…多分…」
だってマカだって楽しそうにしてたし…。休憩だって言ってたし…。でも今度お詫びにたくさんのクッキー焼いてこよう。お仕事邪魔してごめんねって…
「テオ、少し乗ってみるか?この間乗れなくて拗ねてただろう?さすがに街には出れないが敷地の中なら…」
「本当?やったぁ!乗る乗る!乗りたい!」
ジローと二人、隣同士に座って発車を待つ。車を引くのは最近工場で働きだしたスラムの青年マルクスさんだ。ものすごい上腕二頭筋。がっちりしてて力ありそう。
そうだっ!今度揃いのユニフォームをプレゼントしよう!
そうこう言ってるうちにその車は動き出した。
「わ、わぁぁ!あ、こんな細いとこ入れるんだ」
「そうだ。馬車よりも小回りが利く。近場ならこれで充分だろ?」
「ひゃぁ…気持ちいい」
ひざ掛けの下でじろーがそっと手を握った。
うぅ…何すんの…そ、そういう…、でも嬉しい…
見慣れたはずのジローの顔は、褐色の肌に誤魔化されてたけどほんのり染まっているように見えた。
「どうだテオ、楽しかったか?」
「うん凄く!ね、じろー、また家にも来る?」
「ああ、ハインリヒ様に呼ばれたらな」
「僕、大好きなお兄様と大好きなじろーが仲良くなってすごく嬉しい。今度は家でご飯も食べていってね」
ジローとアリエスとアルタイル、全員の顔が引きつったのは何故だろう。
「そういえばジロー、テオに言われて思い出したんだがギルド長はどうなった?」
「ああ…あれな」
ギルド長…。ドラブ侯爵に脅されていたって言うお気の毒なギルド長。降格の上更迭されたって聞いたけど違っただろうか?
「脅されたとはいえ、安易に闇賭博に手を出し弱みを握られたのは自業自得だ。今じゃぁ一介の商人として行商から出直し中だとさ」
そっか、行商人になっちゃったのか。
だけどその程度で済んで良かった。タウルスに聞いたら嵌められたらしいって言ってたから情状酌量?されたのかな。
「新しいギルド長は?」
「急な事だったからな。仮で副ギルド長がそのまま務めてるが…そのままってわけにはいかないだろうな。あの人は真面目な人だが駆け引きの出来ない男だ。ここまでは大きな問題が無かったからいいようなものの、そろそろ誰かちゃんとした奴選ばないと」
「そうか…。まぁ粛清直後はみんな大人しくしているものだがそろそろほとぼりも冷めて面倒ごとを持ち込む奴も出てくる頃じゃないか?」
「では新しいギルド長を…」
「そうだ。選挙が始まる」
ギルド長って選挙で選ぶんだ。きっとそこでもまたいろんな駆け引きとやらが…
ブルブル
大人の世界って大変だな…




