120 ヴェーバー領!②
「いやー、昨日の晩餐は最高だったなー」
「テオ君気に入ってくれた?」
「とっても」
何しろ僕の大好きなタコスに良く似た食べ物があったからだ。
水牛によく似たビッグブルのお肉は、少し硬いけど味が濃い目でとても美味しかった。
「領内に古くから住む土地の者が好んで食す平民食なのですよ」
「そうなんだ…」
サボテンの話の時に言ってた原住民のことかな?
「リヒャルトの奴が、テオドール様はこういう気さくな食をお好みだと言い張るのでお出ししたのですがいかがですかな?お口に合いましたでしょうか。」
「それはもう!リヒャルト君ってばさすが、し、しし、親友…?」チラ
パァァ「もちろん!もちろん僕らは親友だよ!嬉しいな、テオ君がそんな風に言ってくれるなんて…。良かった、チョコスも気にいってくれて」
チョコスって言うんだ、これ。
「うん、俺も気に入った。これぐらい食いでがあるほうが食べた気になる。」
感動の空気を読まずバクバクと食べ進めるタウルス。ヤバイ!これはほっといたら食べ尽くされるやつ!
これはリヒャルト君が僕の為に用意してくれた特別なおもてなし食。なのにタウルスったら全くもうっ!
でも食べるのが遅い僕は、ムグ、口の中がいっぱいで、モグモグ、何も言えない…
「タウルス様にも気に入っていただけて良かったです。アリエス様、アルタイル様はいかがですか?」
「ええ、とても美味しいですよ。それにこうして包んで手で持って食べるなんてなんだか楽しくて。ねえアル?」
「ああ、この酸味と辛みが味わい深い。もう一つ取ってくれないかアリー」
ちょっと!僕の分が無くなっちゃう!…ああ…残しといて、もう一枚残しといてっ!
けどやっぱり口の中が、モゴモゴ、いっぱいで、ングング、咀嚼に必死な僕は何の文句も言えなかった…
そんな風にして過ぎていった到着初日。翌日はシャボッテの採取で一日が終わり、そして本日3日目。
ヴェーバー領の私兵も借りて、大勢でやって来た再びの乾燥地帯。
レグルスの望む大量のテント素材を手に入れるためには、いったい何枚のマンティーが必要だろうか?
「いいか!俺の地中探知で居場所を特定する。尾棘を踏まないように気をつけろ!」
タウルスの号令で一斉に捕獲にかかる。そして捕まえた個体から順に、その尾棘を取り去っていく。
「タウルス!あの10メートル級はどこか居場所を特定してくれ!俺が風で奴を巻き上げる!上体が浮いたところで急所を狙え!」
「よし!皆右方へまわれ!奴の正面から一斉に固定魔法をたたきこむんだ!身体を傷つけてはならない!いいなっ!」
さすが親友同士。タウルスとアルタイルは絶妙なコンビネーションで大型デザートマンティーを追い詰めていく。
僕は安全な場所からアリエスにしがみついてただひたすら手に汗を握り、気分はすっかり映画鑑賞、これぞリアルなパニックモンスター映画だ。
「こ、こわ…」
「大丈夫ですかお兄様。あの個体さすがに強いですね。なかなか弱らない」
「…て、テオ君、あのマンティーが巨体を上下するたびにすごい砂埃が…目を、目を瞑ってたほうが…」
「そっ、そうだね。リヒャルト君もそうして」
二人して固く目を閉じる。時々薄目を開けてみるけど…ひっ!ひぃぃぃ…
「伍長殿!奴の尾が隠れた!気をつけろ!」
「尾だと!どこだ!どこにある!俺が切り落としてくれる!」
「よせっ!やめるんだ!奴の尾に剣は!」
バキィ!
「危ないお兄様っ!」
伍長が振り下ろした剣は突き刺さることもなく折れてしまった。
そしてその切っ先は…
「聖なる光の盾よ、全ての災いを退けよ『光の盾!』」
「わぁああ!ああ…あ」スン「ありがとうアリエス」
「ふふ、どういたしまして」
「伏せろリヒャルトっ‼」
「え?」
アリエスに守られてホッとしたのもつかの間、怒りにキレた巨体マンティーはその尻尾から毒針を四方八方にまき散らす。
飛び散る毒針、なのにああ、なんてことだ!ぎゅっと目を瞑っていたリヒャルト君はそれに気が付かない。
その時だ。盾を発動しようとしたアリエスよりも早く、一瞬で駆け付けたタウルスはリヒャルト君に覆いかぶさりその背中で毒針を受けた。
「うっ!」
「ああっ!タウルス様っ!」
さ、刺さった!ど、どど、毒針が刺さった!
「たっ、大変だよアリエスっ!ちち、治癒を!治癒して、あああ、どうしよう」
「『清浄の光!』大丈夫ですお兄様。これで心配いりません。ですがしばらくは休ませた方がいいでしょう。アル!」
「ああ分かった。『空中輸送』」
ひゃぁぁぁすごい…
アルタイルの風魔法ってばいつの間にこんな…。それにアリエスとのアウンの呼吸。まるでゲームのワンシーンみたい。
アルの空中輸送により僕とアリエスそれからタウルス、そしてそれを心配するリヒャルト君は、あっという間に屋敷まで風に乗って飛ばされたのだった。




