119 ヴェーバー領!①
荷物を置いたら真っ先にするのは、興味津々のお屋敷探索。
ところどころ修繕の後があるのは、アサルトマウスの名残だろうか…?
このヴェーバーは地区によって全然景色が違うらしい。
緑豊かな東側から農耕地帯の南側へ、そして砂漠の広がる西側だ。
「いる間に全部は見れないなぁ…。でも今回は砂漠を中心に見ることにするね。レグルスからのお仕事だし」
「すごいな…殿下からの依頼だなんて。さすがテオ君。でね、夜会は中日、四日目の夜だよ。楽しみにしてて。それであの、だ、ダンス…」
「あきらめないね…もういいよ。一曲だけね。特別だよ?」
ご招待のお礼と思えば仕方ないよね。
そしてさっそく乾燥地帯へと出かけることになった僕たち。
リヒャルト君はタウルスと楽しくお話ししてる。
今朝からここまでの半日の間に、タウルスとリヒャルト君はすっかり打ち解け…た?
自家用馬車で来たというのに、どうも一人の馬車は退屈だったらしい。
だけどうちの馬車にはアルタイルも入れてすでに三人。タウルスが乗ると圧迫感が…。
それで無理やり乗り込んだのだ。ビビりのリヒャルト君ちの馬車に。リヒャルト君が固まってるのもお構い無しに。
…あのデリカシーの無さが健在とは…
さて、訪れた乾燥地帯は思った以上に不毛の地だ。目の前に広がる広大な砂漠。所々に緑の差し色。毛の生えた独特な植物が生えている。
「この辺は昼と夜とで気温が全然違うんだよ。ナスヴェッターの夕日を絶賛してたよね?ここだって負けてないよ。地平線の向こうに沈む夕日、テオ君にも見せてあげたいな」
「見たい!すごく見たいよリヒャルト君!とっても楽しみ、ねぇアリエス?」
「ふふ、そうですね。夕日に染まるお兄様…。見てみたいですね」
見るもの違うと思うんだけど…。
『地中探知』
さっそくタウルスが見えない地中の魔力を探る。
「いるな。五メートルどころか十メートル級のも一匹いるな。範囲を広げて探ればもっといるだろう。殿下が喜ぶ」
へぇー!すごいや。見直したよ!
「いいか、デザートマンティーはこちらが何もしなければ静かに地中で漂うだけの魔獣だ。だがその尾棘を踏むと怒って毒針をまき散らす。尾を踏むな!絶対にだ!」
「タウルス様、詳しいんですね。僕知りませんでした」
「知らないって、お前、自領だろうが…」
「あのねタウルス、リヒャルト君はこう見えておバカさんなんだよ。黙ってたら賢そうに見えるのに」
「テオ君…そりゃぁ君からみたら全員そうだろうけど…」
「僕じゃないよ、ルトガー君がそう言ってたの。魔法工学のテスト一桁だっっ、ムグ」
「わーわーわー、テオ君、タウルス様の前で何てこと言うのっ!もうっ!ルトガー君ってばなんでそういう…ブツブツ…」
リヒャルト君は帰ったらきっとルトガー君に文句を言うだろう。そして返り討ちに合うだろう。確信がある。
「ははっ、賢すぎるより少しくらい馬鹿な方が可愛いさ。ところでが奴らは大量に子孫を残すんじゃないか?大変だろう。どうしてるんだ、この領では」
「かわっ!あのっ!え、ええと、領境付近の山中には名もなき部族が住んでおります。彼らはマンティーを生きる糧にしているみたいです」
「そうか、屋敷に戻ったら詳しく聞かせてくれるか」
「は、はいっ」
マンティーでやたらと盛り上がる二人。
そんな二人を横目に、僕はサボテンに良く似た植物に興味津々だ。
「リヒャルトくーん、これサボテン?サボテンだよね!」
「うん?シャボッテのこと?トゲがあるから気を付けてね。それこの辺りの貧しい人たちがよく食用にしてるよ」
「貧しい人が食用って、サボテンは立派な薬草の仲間だよ?それに美容にもいいらしいし。シミにもしわにも便秘にも効く万能美容食品なのに。じゃぁ少しもらって帰ってもいい?」
「こんなのが?だってそれの葉っぱネバネバして気持ち悪いよ。それに実だって甘いことは甘いけど種が多くて固いし食べずらい。いいよいいよ。どうぞ持って帰って」
「やった!」
そのとげとげのサボテンをどうやってマジックバックにしまおうか……
「お兄様、デザートマンティーも今日は様子見だけです。そのシャボッテも採取は明日以降にしましょう」
「ああ、そうしよう。テオ、伯爵は珍しい郷土料理を用意してるそうだ。今日の所は早く戻って少し休むと良い。それにしても…テオの薬草園はどんどん充実していくな。いったいどれほど広げるつもりなんだ?まだまだ満足じゃないんだろう?」
七歳の時冒険者をめざし、そのために始めた薬草採取。気が付いたらすっかり趣味になってしまった。
そしてそれはとっくの昔に趣味の域を…超えているのだ。




