116 ケフィウスの胸の内⁉
予想外に起きたプランクモンキーの襲撃。
学院長は頭を抱え僕と担任から事情を聞くと、今後は演習に出ないようにとため息とともに言い渡した。
振ってわいたラッキー!日頃の行いだろうか?
「リュックぱんぱんにしておやつ持ってくるからだよ。もう仕方ないなぁテオ君は」
「う…、だって森の奥でリヒャルト君と食べようと思って…選ぶのが楽しくって、それでつい全部…」
「あ、そ、それじゃぁ仕方ないね。あ、そっかぁ…僕と…そっか…えへ、えへへ」
「リヒャルト君、顔が大変な事になってる。テオ君、次は苦いものにするといいよ。奴らは甘党なんだ」
「苦い時点でおやつじゃないじゃん…」
そんな風に階段を歩きながら話してると、どこからか「危ないよ」っていうイケメンの声が。
聞きなれた声、振り返らなくても誰だかわかる。とても気まずい…このままスルーしようか。そうだよ僕は悪役令息なんだからこれくらいのこと…
「あ、殿下…」
ちょー!リヒャルト君、なんで反応しちゃうのー!
「ど、どうも本日はお日柄も良く…」
「やぁテオドール。また野外演習で襲われたって?全く君は魔獣を呼び寄せる撒き餌のようだね」
「は、はぁ?ケフィウスさんに続きレグルスまで僕にケンカ売ってんの?」
「ふふ、君のケンカなら買ってあげたいけど、今日は招待に来たんだよ。ケフィウスが君に謝りたいって神妙な顔をするからね」
「ぬぬ…」
謝るなら最初っから言うな!と言いたいところだが…
「う、うぅ~ん、わか、わかった。僕もちょっと言い過ぎたし…」
「来週末は王宮においで。このあいだのお詫びにアリエスたちも連れて来るといい。」
そうしてアリエスとアルタイルを引き連れやって来た、今日は翌週の週末。レグルスと約束した日だ。
敵は王子とその従者。対戦相手に不足は無し!
「お兄様、仲直りに来たんですよ?」
「そうだった」
それにしても…
この間の喧嘩腰がまるで嘘みたいに友好ムードだ。これぞ典型的な手の平返し。
レグルスに叱られたか説得でもされたんだろうか。
「テオドール様、こちらへ」
「え…」
ケフィウスさんに目配せされて、隣の部屋へと誘導される。ここでなにか起こるはずもないし…はぁ…行くか。
「テオドール様、先日は失礼しました」
「僕もその、ちょっと、…ううん、だいぶん言い過ぎたし…」
「いいえ、殿下の深い考えに気づきもしなかった私が悪いのです」
「深い考え…」
とはなんぞや?
「ええ。殿下はこの国の未来をはるか先までお考えです。目先のことしか考えられない自分が…いかに小さな人間か思い知らされました…」
主従の間ではとっくに話がついたらしい。
「……あのね、僕が婚約の事ハッキリできないのは、まさにその深い考えとやらをレグルスが僕には言わないからだよ」
「テオドール様、ですがそれは…」
僕がどうしたいかなんて、正直言ったら昔から決まってる。だけどレグルスがとてもいい王子なのはわかったから、だから僕は僕なりに助けになりたいって、…いつだって思ってる。だけどその気持ちはいつだって一方通行で…
「僕の為にレグルスは色々頑張ってくれた。だから僕だってレグルスのために何かしたい。だけどレグルスはいつも僕には何にも言わないんだ。肝心なことは何一つ」
ドラブ家壊滅作戦のときだってレグルスは何も言わなかった。あんなに疲れた顔してたのに何一つ。
あの過保護なお兄様でさえ僕にちゃんと説明してくれたのに。
「農耕の資料、湿地帯の資料、テオドール様の飢餓対策を殿下は非常に喜んでおいででしたよ」
「…レポート頼まれた時は嬉しかった。だけどそういう話じゃない。いつも癒し癒しってこれじゃぁ僕はキャスと変わらない…。深い考えがあるなら聞かせてよ!後悔するような選択はしたくない。お母様にもよく考えろって言われたし」
前世の高校受験だって志望校は慎重に決めた。お小遣いで買うマンガだっていつも厳選した。
後悔なんかしたくない!最後の最後まで悩んで悩んで…僕はいつだってギリギリまであきらめないのだ。
「ふぅ…殿下は一介の貴族じゃない。この国の王太子です。なにもかもを簡単に明かすことなど出来るわけがないでしょう」
「ケフィウスさんには話してるのに?それじゃぁ僕とレグルスの間にはそれほど信頼がないってことだね」
「そうではなく…」
「そんなにレグルスが大切ならレグルスの側にはケフィウスさんが居ればい…ん?あれ?もしかしてケフィウスさんはそうしたいんじゃないの?そうだよ、…誰がレグルスの相手だったとしてもきっとケフィウスさんは満足しない。だってレグルスの理想の相手は自分なんだもの。そうじゃないの?」
勢いで口から出た言葉だったんだけど…
そこには今まで一度も見たことも無いほど動転して狼狽する、元会長、クールビューティー、ケフィウスさんが居た。




