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『盾に受けた力とおなじ力を跳ね返すんだ。だから強い力であればあるほど跳ね返す力も大きくなる』

 そうグリムは熱く語った。

 鍋蓋の取っ手に通した縄を(はす)にかけて、ボクは魔女にもらった最強の盾を背中に背負っていた。

『その盾があれば計画9号も倒せるかもしれない』

 グリムは興奮していた。そのあともグリムはずっと鍋蓋の盾の話をしていた。よっぽど気にいったらしい。だからボクはある提案をしてみた。

「グリム。よかったらこの鍋蓋の盾を君にあげようか?」

『は?』

「君にはたすけられてばっかりだし、きっとこれからも君にたすけられるだろうから。ボクからのお礼としてこの盾を君にあげるよ」

『……』

 グリムはしばらくかんがえこんでいた。そして、

『フンッ、バカ言え。オレは悪夢の国の王子だぞ。王族が臣民のものを欲しがるかよ。オレは誇り高いんだ』

 といった。

「ボクはこの国の臣民じゃないよ」

『屁理屈いうな! それにな──』グリムはつづけた。『その盾は魔女の婆さんがお前を心配してお前にやったものだ。それをオレにあげたと知れば魔女の婆さんが哀しむぞ』

 それは意外な言葉だった。魔女に悪態ばかりついていたグリムがそんなことを言うなんて。

「そうだね。グリムの言う通りだ」


 とうとう西の監視塔がみえてきた。監視塔自体はたいして高くなかったが、監視塔は四方を断崖絶壁に囲まれた台地の上に建っていた。

「なんでこの世界は崖ばかりなんだ!」とボクは嘆いた。

『飛べばいいだろう。オレがやったみたいに腕を翼にしてみろ』

 グリムはなんでもないかのように言った。グリムは両腕をコウモリの翼のように変形させて空を飛んだ。ボクにもそうしろといっているのだ。

 何度ためしてもダメだった。ボクの両腕がコウモリの翼になることはなかった。

「できないよ。やっぱり人間の腕が翼になるなんて無理なんだよ」

『う〜ん、そうか。じゃあ、面倒くさいけど崖を登るしかないか』

 ボクは崖を見上げる。傾斜はゼロ、ほぼ垂直のゴツゴツした岩崖を登るなんて不可能におもえた。

『両手を鉤爪にして岩の出っぱりにひっかけて登るんだ。できるだろ』

 ボクはできる自信がまったくなかったが、やるしかない。投げ出さずにそう思えたのは、魔女からもらった服の効果かもしれない。

 右手、左手、右足、左足、と順番に丁寧に岩の出っぱりに引っかけていく。その繰り返し。

 そのうち〈岩崖を登る〉という行為が楽しくなってきた。「次はどこを掴もうか」と岩壁を観察して考えることがおもしろい。その先の経路を「ああでもない、こうでもない」と予測して計画立てることがおもしろい。

 はじめは恐る恐るゆっくりと時間をかけて登っていたのが、慣れてくると、脚で岩壁を蹴りジャンプして遠くの出っぱりに鉤爪で引っかける、といった芸当もできるようになった。

 最後には、サバンナを駆けるネコ科の動物のように、岩崖を駆け登っていった。

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