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 魔女の森をぬける道なか、

『あのひねくれ者の婆さんに気に入られるなんて、お前スゲエめずらしいぞ』

 とグリムがいった。

「そうなの?」

『ああ。食屍鬼(グール)さえ婆さんを嫌って近寄らないくらいだ』

「へえ」

『しかし婆さんが元人間だとはしらなかったな。で、その鍋蓋はつかえるのか?』

 ボクは鍋蓋に似た盾を左手にもっていた。盾というには重みもなく、たよりない。

「さあ? これを使う状況にならないことが一番いいんだけどな」

 しかし鍋蓋の盾をつかう機会はおもっていたよりもはやくおとずれてしまった。

「あ、あれは……なに?」

『岩の元素精霊(エレメンタル)だな』

 両側が岩壁にはさまれた狭い道に立ち塞がっていたのは、大きさが二階建ての家くらいある岩石の巨人だった。

『ここら一帯は魔女の婆さんの影響で魔力が濃い。ふつうなら手にのるくらいの小ささなんだが、あんなデカさまで成長するとは……』

「ほかの道はないの?」

『ない。西の監視塔に行くにはあそこを通らなきゃならん。あ、マズイな』

「な、なにがマズイの?」

『敵意を感じる。くるぞ』

 岩の巨人は、ドスン、ドスン、と大地を揺らしながら突進してきて、右拳を振り下ろしてきた。

『よけろ!』

 ボクはとっさに横に飛んで、地面の上をゴロゴロと転がる。みると巨人の拳が地面にめりこんでいた。あやうくぺしゃんこになるところだった。

 巨人はつづけざまに左拳を挙げた。

『立て!』グリムが頭のなかで怒鳴る。でも腰がぬけてボクはうまく立ち上がれなかった。

『やられる!』

 ボクは両手で身をかばうことしかできなかった。

 パッキーン!

 金属音が鳴り響いた。

 ──ボクはなぜか無事だった。恐る恐る薄目をあけると、ボクをぺしゃんこにしようとした巨人の左拳がなくなっていた。あたりに大小の石が落ちているのは、巨人の拳が砕けたから?

 ボクの左手には、魔女からもらった鍋蓋の盾がにぎられていた。

『盾か! 魔女のいったことは本当だったのか!』グリムが叫ぶ。

 岩の巨人は右脚を上げてボクを踏みつけようとしてきた。

『盾をつかえ!』グリムが叫ぶ。巨人の脚を鍋蓋の盾で弾き返す。

 パッキーン!

 巨人の右脚は砕け散り、バランスを失った巨人はうしろに倒れた。

 ドッシィィィン!

 岩の巨人の体がボロボロと崩れていく。そして無数の小さな石の元素精霊(エレメンタル)たちが四方八方にそそくさと散っていった。

 ボクは地面にへたりこんだまま、鍋蓋をまじまじとみつめた。

「最強の盾だ」

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