3
しばらくして足に固いものがあたる感触があった。
「おい。着いたぞ。もう手をはなしていいぞ」グリムの声がきこえた。
ボクはゆっくりとつぶっていた目をひらいた。地面の上だった。ボクは急に力がぬけて、その場に仰向けに寝転んだ。
「はあはあはあ」息が苦しい。腕がプルプルとふるえる。
どうやら崖の頂上にきたらしい。崖の上は平らで、その先には崖の下と似たような森と草原がひろがっていた。
「いつまでもねてるな。とっとといくぞ」グリムは歩き出した。
ボクはやっとのことで体を起こして、グリムのあとを追った。
「ねえ。ボクたちはどこにむかってるんだい」歩きながらボクはグリムに訊いた。
「門だ。そこが悪夢の国と人間界をつなぐ唯一の場所だ」
「そこは遠いの?」
「いや、もうすぐだ」
実際すぐに到着した。
巨大な石造りの門と、不気味な彫刻がほどこされている両開きの鉄扉が、唐突にあらわれた。門だけが森のなかにぽつんと存在し、両側に塀のようなものはない。ボクは門の裏側にまわってみたがおなじ彫刻の扉があった。
「なんで門が閉まってるんだ。おかしいぞ」グリムは困惑しているようだった。
グリムが鉄の扉に手をかけるが、鉄扉はかたく閉ざされていて、押しても引いてもビクともしなかった。
「そんな……こんなはずはない」
「いつもは開いてるのかい」
ボクの質問は無視された。グリムの耳にとどいていないようだ。グリムは落ち着きなくあたりをうろうろし、考えごとをしていた。
「そうだ! 父上に鍵を借りればいいんだ!」とグリムはいった。「おい、人間。ちょっとここで待ってろ。城にもどって父上に門の鍵を借りてくるから」
「ええ! こんなところにおいてかないでおくれよ」
「城までは遠い。お前をつれて飛ぶのは無理だ。オレ一人のほうが速い。すぐにもどる」そういってグリムはふたたび両腕を翼に変えて飛び立っていってしまった。
ボクは森に一人とりのこされた。