24
翌日、隠者の葬儀がおこなわれた。隠者は国を救った英雄として葬られた。
隠者の葬儀のあとにダインスレイフがいった。
「じゅうぶんすぎるほど血を吸ったわい。ワシはしばらく寝る。おぬし、ワシを元の岩場にもどしといてくれ」というと、ダインスレイフは霞になり、剣だけがその場にのこった。
ボクは、あの冥府の山にまた登るのか、とかんがえたらうんざりしたが、なんと、悪夢の国の王様が冥府の山までボクをはこんでくれたのだ。
王様はボクを肩車すると──王様は体の大きさを自由にかえられる。このときは二メートルくらいになっていた──、六枚の翼で空へ飛んだ。王様は、ボクがふり落とされないようにと、角につかまらせてくれた。
あっという間に冥府の山の頂上に到着した。
ボクは、鞘から魔剣をぬくと、岩の亀裂にさしこんだ。これでダインスレイフは、次の役目がくるまで、ここで眠るのだろう。
帰りに魔女のところへ立ちよってくれるよう、王様にたのんでみた。王様はしぶい顔をしたが、承諾してくれた。
王様と魔女は昔からの知り合いだったが、王様は魔女に頭があがらないようで、はやくこの場から去りたそうだった。
鍋蓋の盾が何度もボクを救ってくれたことをはなし、魔女に感謝をつたえた。魔女は、「ああ、そうかい」というだけだった。
グリムの部屋にはいる。だだっ広いホールの真ん中にぽつんとひとつベッドがおいてあるだけで、他にはなにもない部屋だった。
グリムは、ミイラ男のように包帯で全身をぐるぐる巻きにされて、ベッドのうえに寝ていた。まわりでは、二人の呪い師がグリムの看病をしていた。
グリムの顔をのぞくと、かろうじて目と口だけが包帯のすきまからみえた。
「ったく! おおげさなんだ! そんなにたいしたケガでもないのにこんな恰好にしちまって!」
グリムは不満をいった。
「いやいや、実際大ケガだったんだからしかたないよ。おとなしくしなくちゃ」とボク。
「それよりお前、本当に帰るのか? ここにのこったっていいんだぞ。父上の許可も得てるんだから」
「うん、ありがとう。でもやっぱり、帰るよ」
「帰ったってお前は病気なんだろ。あとすこししか生きられないんだろ。だったら──」
「ここでの冒険はとてもスリリングだった」ボクはグリムの言葉をさえぎった。「おそろしいことも多かったけど、ワクワクすることもたくさんあった。悪夢の国にきて、いろいろ経験して、ボクはすこし変わったんだとおもう。むこうでもやってやろう、って気持ちになったんだ。グリムのおかげだよ」
「……」グリムはなにもいわない。
「お礼にコレを君に」
そういってボクは鍋蓋の盾をグリムの傍らに置いた。
「おい、なんだコレは。まえにも言ったろう。オレは王族だ。下々の者からほどこしはうけない」
「ボクの世界に盾は必要ないんだ。コレもむこうじゃ鍋蓋以外のつかい道がないしね。宝のもち腐れになっちゃうよ」
そう説得してもグリムはかたくなに拒んだ。
「う〜ん……わかった。じゃあ、こうしよう。コレを君にあずける。ボクがまた悪夢の国にやってくる日まで」
グリムは逡巡していたが、
「よし、いいだろう。じゃあ、この盾はオレがあずかる。それまでにお前もこの盾にふさわしい男になれ」
「うん」




