一人の男をめぐる言い争い
日が昇る少し前の一軒の家の中に二つの高い声が響いた。
感情的なその二つの声を分かりやすく書き起こしてみると、それはどうやらこの家に住む一人の男をめぐって言い争いをしているようで、おおよそこのような内容であった。
「私の方が彼に相応しいです!」
「いいや、あたしだね! なにしろあたしはあいつのベッドで一緒に寝たこともあるんだ!」
「寝……!? そ、それはあなたがはしたなくも寝ている彼の布団にこっそり入り込んだからでしょう!」
「ふふん、はしたないなんて言ってそんなことすら出来ないあんたには相応しくないね!」
「そ、そんなことを言うのなら私は彼と何度もお風呂に入っています! あなたには出来ないことでしょう!?」
「ふ、風呂!? それはあんたがイカれてるだけだ! そんなのは相応しい相応しくないに関係ないね!」
そうして言い争いを続ける内に、男の眠る部屋からなにか音が聞こえてきた。どうやら男が起きてきたらしい。
それに気が付いたのか言い争いはピタリと止まり、そして二つの声の主はそれぞれ男の部屋へと駆け出した。相手よりも少しでも早く男のもとにたどり着き自分の方が相応しいと証明したいのだろう。
男が部屋から出ると同時に、二匹は男の胸へと飛び込んだ。
寝起きの男は、朝から愛しい二匹のペットが飛び込んできたのを嬉しそうに受け止めていた。
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