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初枝ふぁんたじい  作者: 宇治崎
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3.ワタシはナイト(お嬢様とM奴隷?篇:1)

『生涯M奴隷宣言~「雌犬」の刺青はお嬢様との絆~』


 人里知れぬ山の中にある大きな洋館。そこには人嫌いの館主、旦那様が王の様に君臨しておりました。

 奥様はすでに亡くなられていて、代わりに一人娘のカズキお嬢様が女王の如く暇つぶしにと、街の孤児たちをメイドとして引き取り過度な労働、虐待の限りを尽くしていたのです。それぐらいしか屋敷には楽しみがないから、痛ましくお思いになってはいるけれど、その姿は亡くなられた奥様にそっくりで……僕は……。

 昔からの付き合いで、代々執事兼教育係として仕えている僕の家系は、それを当たり前の様に過ごしていて年の近いカズキ様は、昔からの幼馴染でただの遊び相手だった。

 だが父であり先代の執事が急死し後任になった時、ひょんなことからカズキ様に苛められて喜ぶのが性癖であることを知られてしまう。"遊び相手"から"新しい遊び道具"になり堕落してしまった日々。でも僕はこうなることをずっと夢に見ていたのかもしれない……。

(あらすじの語りべ・主人公(デフォルト名:ナイト ))





 初枝が初めに飛び込んだ世界は、事の発端ともなったといえる成人指定ゲームの世界だった。

「何だか……清々しいのう」

 朝の日差しに包まれ、眩しさにいつの間にか寝ていたベッドから上半身を起こして背筋を思い切り伸ばす。

 そんなことをしたのは何十年ぶりである為、初枝は体が軽くなり、折れ曲がっていた腰がしっかりと上へ向かって伸びているのを感じていた。

 今まで重く自由が利かなかった身体が嘘のようだと当惑する反面嬉しく思っている。まるで体中にぶら下がっていた鉛を全て振り落とすことができたかのような感覚であった。

初枝はまだ気が付いていないが、それもそのはず。七十七歳のおばあちゃんの面影は消え十八歳ぐらいの青年の姿になっているのだから……。



「お、ばあさん目が覚めたか?」

 そんな初枝の目の前へ、半透明の霊体のような身で宙に浮いているあの自称神が現れた。

「神さん……死んじゃったのかい?」

「はあ? 俺はこの世界の住人じゃないから実体がねえんだよ」

 怪訝な表情を自称神は作るも、すぐにニヤリとニヒルな笑みのつもりである極めて邪悪な笑みを浮かべた。

「それにしても、良いお姿になって……」

「そうかい? ワタシもなあ、凄く身体が軽くて満足だあ!」

 自称神はこれからのことを思って嫌味を言ったのだが、まずこれからを知らない初枝には褒め言葉にしか聞こえなかった。

 そのことを忘れていた自称神。一瞬また怪訝な表情を浮かべ、元の世界へ戻ろうとするも説明忘れを思い出し、気取った咳払いをしつつ今回のゲームについて説明することにした。

「そんなことより。まずはばあさん、自分がどんな姿か知ってるか?」

「……知らんなあ、あそこの姿見でみてくるとしよう」

 初枝はベッドを軽々と降りて、身体の軽さを噛み締めるように、気持ちのよさそうな足取りで少し離れた所にある姿見まで歩く。

 姿見を前にして、初めは自分だと気が付かず仁王立ちのまま立ち尽くすが、凛々しい青年の姿しか映らないのでようやく驚きの表情を表した。

「これが、ワタシかい?」

「ああそうさ」

 体の軽さと自由をやっと理解した初枝は戸惑いもあったが、嬉しさに部屋中を走り回る。青春を取り戻したような嬉しさであり、男だろうと女だろうと若いことが素晴らしく思えていたのだ。

 自称神はこれからのことを嫌味を交えつつ説明するも、全く聞いてもらえなかったので消えようとしていたが、階段をかけあがる足音が聞こえて初枝が気をとられている隙に手短に説明した。

「ばあさんはここで使用人になって、お嬢様に虐げられながら生活するのさ! じゃあな!!」

 初枝は足音に気をとられ過ぎていて、また説明を聞き逃していたが自称神は消えてしまった。

半透明の霊体ではあるが姿は見えてしまうので、ここの住人に見られては駄目だという理由からだ。



 足音が初枝の部屋の前で止まり、乱暴にドアが開かれた。

「もう! 朝から騒々しいしいわ!! 」

 甲高く、耳に纏わりつくような声が響き渡る。艶やかな、肩まで伸びた栗色の髪の毛を巻いた女性が部屋へ入ってきた。

「ナイト! 朝から何が楽しくて走り回っているの!? 静かに読書もできないわ!!」

 ナイトというのはこのゲームの主人公のデフォルト名なので、今の初枝へ示す名である。自称神の説明を聞かなかった為、状況が飲み込めず呆気に囚われていて無反応の初枝に女性は眉をひそめた。

「……ナイト、返事はどうしたのよ?」

 この女性こそがお嬢様であるカズキなのだが、自分の問いかけにも反応を示さない執事でもあり幼馴染の初枝ナイトにあまり表したことのない心配という気持ちが芽生える。

「どうしたの? 具合でも悪いの?」

 表情には示さないが若干声が優しくなったカズキへ、申し訳なさそうに初枝は問いに答えることなく、逆に問いかけた。

「お嬢さんはいったい……誰だい? すまないが教えて欲しいのですが」

 その一言で初枝は記憶喪失であるということになり、初日は部屋で取りあえず大事を取らされるのであった。

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