2.決意(初め篇:終了)
煙が徐々に晴れると、そこは自分の家の和室だった。
"夢……だったのか?"
いよいよ危なくなってきたかと老人の性に悲しくなりつつも、先に逝ってしまった夫の仏壇に手を合わせる前に、上に飾ってある遺影に手を合わせよう見上げた時だ。思わず縁起が悪いというように身震いした。
そこには夫と並ぶ自分の写真があったのだ。だがその写真は今の自分よりかなり老けていている。なら自分じゃないのかといえば、確かに自分だと感じた。おかしいと目についたカレンダー。そこに書かれていた西暦は今より二十二年後であった。
生きていたら九十九歳……長く生きた方だとは思いつつ、気になるのは清志のこと。立派なお父さんにでもなっている年頃だ。
初枝はこれはきっと夢か、誤って黄泉の世界にでも迷い込んだと思うことにしたので、楽しむことにし、清志の部屋を目指した。
切り替えが早いおばあちゃんなのでその他諸々も気にせず、あの人物が言っていたことも忘れて……。
清志の部屋の前に着き。ドアを開けようとしたが透けてしまい、ノブを掴めなかったので、鍵がかかっていたとしても好都合だと初枝はそこをすり抜けた。
初枝としては清志は結婚してしまっているだろうし、この部屋にはもういないかもしれないから名残を……などと思っていたのだが、昔とは違い酷く散らかったそこには、清志が変わらずにいた。
出会いが無かったのかと悲しくなるも、夢だ幻覚だと割り切る。よく近づき孫の顔を拝もうとした時だ。初枝の前で時間が止まる。
初枝の前に絶望の二文字が浮かび上がる。
「ど……どうしてだい?」
形勢逆転とでもいうように、人物はニヒルな笑みのつもりの、嫌な笑みを浮かべささやく。
「ばあさん、アンタのせいだ」
また煙で辺りは隠しさられ、二人をつつみ込んだ。
晴れると先ほどのゴミ捨て場の近く。初枝と人物は向き合うように立ち尽くす。
「良い子ちゃんっていずれ爆発しちゃうんだよねえ。ああ、可哀相に」
呆然とし俯く初枝に人物は続ける。
「健全な男子高生なんだから、ちょっとしたエロゲぐらい許してやれば良かったのに。あんな一人寂しく死んじまうよりはさ」
初枝は頭を抱えて力が抜けたように座り込む。
「今は規制、規制、規制って何でもすれば良いって思ってるみたいだけど、そういうことにならないためにだ……」
「五月蝿い!!!」
あまり語りすぎたので、気の短い初枝の逆鱗に触れてしまい、人物は強制的に気迫に押され黙らされてしまった。
「ワタシはいったい、どうしたら良い……清志を救うには」
「……方法は一つだけある」
なめられてもいけないと人物は気をまた落ち着かせ、神妙な面持ちで話を持ちかける。残念ながら間抜け面に近かったが。
「ばあさんがあのゲーム等を取り戻せばいいのさ」
「どうやって……?」
そのゲーム等はゴミ収集車で運ばれいってしまった。今更無理だろうと再度頭を抱えた初枝だったが、人物は「ノン、ノン、ノン」とカッコをつけ、首を横に振る。
「ばあさんんが、そのゲーム等をクリアすればいいだけさ」
「はい……?」
人物が初枝に銃を向ける。弾が出ないとは分かっていても怖いものは怖いし、万が一ということもあるので仏に祈るように手を合わせ初枝は目を閉じた。
「オレは神様……とでも名乗っておこうかな? また会おうばあさん」
銃声と共に初枝の意識は途絶えた。