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水氷の行方 ~氷の呪いを受けし奴隷少女、売られた先で大切にされ、砂漠の国を救う~  作者: 遠野月
歩み寄る

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15/17

過分



「王陛下がお越しです」



テラの声に、レティアは我に返った。

顔を上げると、すでに扉は開かれていて、王様がこちらを覗き込んでいた。

「入っても?」と、伺うように言うので、レティアはすぐさま頷く。

王様の後ろにはグイラムもいて、レティアの顔を見るや、優しい笑顔を見せてくれた。



「不便はないかな? レティア嬢」


「……な、なにも。す、すごく、良くし過ぎて、もらって」


「良くし過ぎている?」



王様が首を傾げ、アルトに向いた。

アルトは静かに、首を横に振る。

すると王様が、ほっとした表情を浮かべた。



「レティア嬢、我らには、そなたから受けた恩を返しきることはできないのだ。はじめて会った時から、これまで。そして、これからも」


「……そ、そんな、こと」


「ありがとう、レティア嬢。そなたは本当に優しく、貴い子だ。そなたの声を聞いていると、温まる気がする」



王様がにこりと微笑んだ。

しかし、その息は白い。

レティアの冷気に触れ、顔も少し青白くなりつつある。

それを見てレティアは恐れ入り、小さく俯いた。


それからしばらく、王様とグイラムが感謝の言葉を伝えてくれた。

けれどその言葉は、まるで霞がかかったように聞こえた。

レティアもまた、彼らに感謝の言葉を返す。

だが、足りない気がした。

むしろ、感謝の言葉を返すほどに、申し訳ない思いが募る。



(……このままで、いいわけ、ない)



王様たちが感謝しているのは、レティアから生まれる氷に対してのはずだ。

その氷は、相変わらず勝手に出て、貯水槽へ運ばれていく。

それは、レティアの想いと関係ない。

自らそうしたいと願ってのことではない。


その想いとは裏腹に、周囲の状況はさらに改善していった。

王様がレティアの部屋を数度訪ねたことで、貴族たちも訪ねてくるようになったからだ。

彼らに対しても、レティアは出来るかぎり感謝の言葉を伝えた。

その純真さに触れ、貴族たちはレティアを敬うようになっていった。



「なのに、レティアのやつ、あんまり元気ないな。どうしたんだ……?」



表情を暗くしていくレティアに、ラスタもまた暗い声をこぼす。

ラスタに同調するように、ホミンもがくりと項垂れた。

しかしアルトとテラが、ふたりの背を叩く。



「ですが、私たちが暗くなってどうします。しっかりしなさい」



アルトの言葉に、ふたりが顔を上げる。

気を取り直したラスタが、自らの頬をぴしゃりと叩き、にかりと笑った。

次いで、ホミンと顔を見合わせる。



「そうだよな。俺たちがレティアの笑顔を作るんだ!」


「はい!」



想いを新たにして、四人がこぶしを握る。

その熱が、少しでもレティアの氷を溶かすことを信じて。

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