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奇異


翌日。

レティアに与えられた部屋は、内も外も、すっかり氷で満たされた。

しかし前日のように、氷が溶けて水浸しになることはなかった。

部屋の中にレティアがいる間は、氷が溶けだしたりしないからである。

強いて溶けるところがあるとすれば、部屋の外か。

突き出すように外側へ長く生え出た氷は、その先端がわずかに溶けていた。


三人の侍女たちは、部屋の外に出た氷を定期的に取り除いた。

取り除いた氷はすべて、貯水槽へ移された。



「気味が悪いな」



心無い貴族の男が、凍りついたレティアの部屋を見て言った。

彼と共にいた別の貴族も同意して、やや身を引いている。



「王陛下のお客様に、なにか?」



遠巻きに部屋を見ている貴族の男に、アルトが声をかけた。

すると貴族の男が恐れて、逃げるように立ち去った。



「失礼が過ぎます、本当に」



逃げる貴族の背を見て、ホミンが憤慨した。

そうして、レティアの部屋の様子を訝し気に見ている別の貴族たちをも睨んだ。

ホミンの威圧に、ほとんどの貴族が逃げ去った。

残っているのは、一人か二人。

悪感情を持たず、レティアに純粋な興味を持っている貴族だけが留まった。



「……どうすれば、いいですか」



アルトたちがレティアの寝室に入ってきたとき、レティアは尋ねた。


レティアは部屋の中に居ながらも、多くの人々の感情を過敏に察していた。

誰もが、レティアを気味悪く思っていると分かっていた。

当然だ。

呪われているのだから。


諦めが身に染みているレティアは、人々の感情を受け入れていた。

しかしこれまで同様に、ただ受け入れるわけにはいかないことも分かっていた。

レティアへ向けられている感情は、いずれレティアの周囲へも向く。

侍女たちやグイラムたちにも、一部の感情が向けられることだろう。

それだけは嫌だと、レティアは苦悩していた。



「気になさらないことです」



テラが言った。

テラは三人の中で最も冷静な侍女であった。



「……ですが」


「レティア様は王陛下のお客様です。彼らよりも上の立場なのです」


「……そんな、ことは」


「いいえ、そう思うべきです」



テラがぴしゃりと言い切った。

レティアはそれ以上なにも言わず、「分かりました」と頷いた。



とはいえ、貴族たちの中には優しい人もいた。

レティアを気味悪く思っているのは、主に有力な貴族たちのみ。

身分の低い貴族たちは、レティアをのことを貴重な存在と認識していた。

砂漠の国に水と氷を生みだすのだから、期待を抱くのも当然であった。


レティアに挨拶するため、尋ねてくる貴族もいた。

もちろん最初は氷と冷気に驚いていたが、すぐに慣れてくれた。

冷気を放つレティアとしばらく談笑する貴族もいた。

グイラムや王様のように、手を取ってくれる貴族もいた。

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