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セーブポイントの修理屋さん  作者: 蒼の月夜
3/3

喪失の女騎士


       「我々が追い出されずに済む、唯一の楽園は ”思い出”である。」


                             ジャン・パウル





必要だった日用品は大体買えた


あとは、この女商人との会話を如何にして切り上げるか…



「毎度アリー!またよろしくね~、虚空爺さんは?大先生は元気かいー?」


この静かで寂しい場所には似つかわしくない、声量と態度だ。


「師匠なら、いつもの場所かな? また石を拾ってるよ」


「さすが、先生~立派だねぇ!あんたもしっかりお手伝いして学ばないとダメだよ!少年!ンハハハハハ☆」



ああ、うるさい…


外からの来訪者が少ないここでは、行商人の彼女との交流は貴重な刺激になるのだが


彼女はボクには陽気過ぎる…


「いつも最低限な日用品ばっかりだけどさ~!娯楽も大事だよ~? 酒とかタバコ、カードとかもいらない??」


「爺さんが使って良い分のお金はしっかり管理して渡してるから…必要な分ピッタリしかないんだ。」



僕が買い物する為のお金は、師匠が用意した缶の入れ物に入っていた


どこからお金を稼いでいるのかわからないが


師匠はここで生きるのに、充分な蓄えは持っているようだった。



というか、こんな場所でもお金が必要とは


宝石のようなキラキラした石が、そこら中に転がっているというのに

なんとも世知辛いことだ


それとも、貨幣とは違う意味が ここではあるのだろうか?




・・・・・信じられない


ボクはもう帰ってくれ、という空気を出しながら、会話の返事もしていないのに


あれから2時間彼女は ほぼ一人で、しゃべり続けている…


「でさー、あたしは言ってやった訳!そこは、右回りのネズミじゃなく、左回りのトカゲでしょ!ってね!!」



なんの話をしてるのか、サッパリわからない…


行商なんだから、次にまわる場所があるんじゃないのか?



「そういえば、あの白い騎士さん またあの場所に居たよ」


「ああ、あの女騎士さん・・・元気そうでした?」


この地域にある、いくつかの湖?というか池といえばいいのか


そのひとつに、佇む騎士が居た


いつ頃からかはわからない、ある日突然現れた


まあ、ここでは良くある事ではある。



「元気ではないね、幽霊一歩手前だよ 私が話しかけても全く無反応~ 飯食べてんのかね~??」


「あの人は、一種の思念体のようなモノだって師匠が だから、食事を摂らなくても飢えはしないって…」



白銀の結晶石が水底から、いくつも突き出した、その美しい池のほとりで

何かを見つめる美しき女騎士…


師匠は、今はまだ様子を見ようと言っていたけれども



「ん?何をしてるの??」


「さっき、米も買ったんで、おにぎりでも作って、その人に持って行こうかと…」


米を袋からだし、水で研ぎ始める


「さっき、食べる必要ないって言ってたじゃん、しかもアンタおにぎりとか知ってるんだ。 へ~西洋の文化圏出身とばかり思ってたよ」


確かに、自分がなぜ おにぎりを作ろうと思ったのか、その作り方を知っているかは謎だ

また、セーブの光に中てられたのだろう


しかし、おにぎりは 爺さんも時々作ってくれた。



「食べる必要はないけど、食べられない訳じゃないはずだから…まあ、食べてはくれないと思うけど」


「ふーん、いいね アタシも手伝うよ!」



おにぎりを作る間は、その行商人は静かになっていた……。









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