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セーブポイントの修理屋さん  作者: 蒼の月夜
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第一章 師匠と弟子


     『 人は、記憶によってのみ 己を自覚し、確認する事が出来る 。』





空が、海に溶けている。


これは、形容でもなく、抽象的な表現でもなく、詩でもなく

見たままの光景だ


目の前を流れる、川のような何か

宝石のように輝き、吸い込まれそうになるが

傍まで寄るとキラキラし過ぎていて、若干引く

この水を飲むのは、あまりオススメしない


川に長い棒を差し込み

何かを探っている老人がいる


痛そうな腰を、さらに酷使し

何かを拾い上げてこちらに歩いてくる。


ゼーハー、ゼーハーと息を切らして

何が楽しいのか

見ていると、なんとも切なくなってくる


この老人こそ、僕の師匠である。



「手頃なのがあった、これを試そう」



師匠と、あまり乗り気じゃない僕は作業場に帰っていく




「さあ、やってみろ まずは軽く叩け」


さっきまで、あんなに幻想的な宝石の花々、光の柱、クリスタルの川を

ごちゃ混ぜにしたようなところに居たのに

今は小汚いボロ小屋にいる


まあ、ここの方が落ち着くのは確かだが


ハンマーを渡される、見習い用だ

しかし、黒と青の美しい色をしており、装飾もなかなか豪華だ

羽のように軽い、だが 握ると力強さを感じた


「どの辺を叩けばいいのかもわかりません…」



「感じるまま、直感でいい ハンマーは通常壊したり、釘を刺す道具だが…直す、振動で反応を診る、そういう感覚で叩いてみろ」



はぁ‥‥と溜め息をついた

そして、空気を少し吸い込む

どうしたって緊張感が出る

これはある意味、人の、()()()()() なのだから…


パキーン


金属音?なのか、とにかく綺麗な音がした

心地よい、この音を聞く為だけに叩いてもいいくらいだ


パキーン パキーーーン!


今度はさっきより強めに


少し丸びを帯びた黒っぽい岩でしかなかったモノが

中の方から、色鮮やかな青い光の波を発生させている。


部屋の中に、その光の波紋が映し出される


何かが、見えそうになる

笑い声のようなモノが聴こえる、嵐のような激しい音も

いつやっても、不思議な感覚だ…


「よぉし…もういい…」


記憶の光に当たり過ぎるな、精神ごと もっていかれる…


師匠は、毎度言ってる忠告を付け加える

だが今では、その言葉の持つ意味と怖さが わかりかけて来た気がする…。




世界には、いや この世界以外の

あらゆる世界には記憶を、記録しておく場所、装置、道具、人物、現象が存在する。

神々の世界で、それは「セイヴフォート」と呼ばれ

それが今は『セーブポイント』と、人々の間では呼ばれるようになったという説を師匠から聞いた…


ここは、そんな ありとあらゆる記憶と経験が集まってくる場所

世界、と呼ぶにはおこがましいような、狭間の狭間、片隅の片隅…


「モシュネ、飯にするぞ…」



セーブの修理屋である。


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