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魔獣の存在

歩き続けるエメラルデラとピカイアの間では、引きも切らせず会話が続いていた。

ピカイアたちカラヴィンガは全て同時期に生まれ、老化をせずここで生き続けていることはエメラルデラに驚きを与える。

聖地から出たことのないピカイアにエメラルデラの生活を語って聞かせると、今度はピカイアが矢継早に問い掛けてきた。


狩猟の話や野生の肉、木の実の採取、ヒポグリフの話…食に関して特に興味があるのだろうか、味について語る度に瞳を輝かせるピカイアにエメラルデラは可笑(おか)しそうに笑った。


「食事にそんなに興味があるのか、ピカイア」


「はい、僕には五感はありますが食べたことがなくて」


生命の営みの中でも重要な位置を占める《食べる》、という行為を必要としないカラヴィンガという存在に、エメラルデラは驚きを隠せずにいた。


「食事をせずにどうやって生きていくんだ?」


「一定時間、神樹の元に戻って眠れば動けるようになるんです。僕達にとって眠気というものが、食事に近いのかもしれません。食べたい、と思ったのも今日が初めてでしたし…」


「そうか、私が興味を持たせてしまったんだな」


欲望(食欲)を自覚させてしまったなら、その責任は取らなければならないだろう。

エメラルデラは一瞬だけ考える間をおいてから、切れ長の双眸を少しばかり細めて、ピカイアに誘いかける。


「…では、聖地にいる間に私と食事をしようか。滞在中に狩りに出ても良いなら、だが」


途端にピカイアの瞳は驚きに瞬き、遅れて輝くような笑顔が顔に広がっていった。


「本当ですか!僕、嬉しいです!竜と竜の番いのお方は、神樹に害をなさない限り行動に制限はありませんから、どうぞ自由になさって下さい────…でも…」


夢中で話すピカイアの喜びの表情が不意に(かげ)ると、打って変わって真剣な眼差しで真っ直ぐにエメラルデラを見詰める。


「…聖地周辺の森に、近年魔獣が現れるようになりましたから、ご注意下さいね」


ピカイアが口にした思わぬ単語に、エメラルデラは瞠目(どうもく)することとなった。

魔獣は獣とは一線を画す存在であると言われている。理性を持たず、知能が低い、醜悪な存在。そして竜に匹敵する胆力を持ち、あるものは飛翔して襲い来る。

ただし、その記録が残るのは創世戦記の中でのみだ。エメラルデラにとっては、神話の世界の生き物であった。


「魔獣…が、存在するのか…」


「はい。ここ数年聖地に入り込もうとする姿が見受けられましたので、確かに存在するのだと思います」


魔獣の存在を事実として告げられれば、エメラルデラの中で不安がふと頭を擡げる。


「ピカイアは大丈夫なのか?」


「僕は大丈夫ですよ!この聖地からは出ませんし、これでも強い方なんです」


小さな身体ではすぐに食べられまうのでは、そんな恐れを吹き飛ばすよう、快活に笑うピカイアは細腕に力こぶを作って笑ってみせた。


無理をしそうで、余計不安になる。


やはり何かあれば自分が前に立とう…そう決心するエメラルデラの身体に、急に衝撃が走った。


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