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聖地へ

3ヶ月以上にも及ぶ旅の道程は三人になった途端、随分と気楽なものとなった。警戒せずに眠れるお陰で身体は軽く、緊張から浅眠を繰り返していたエメラルデラにとっては、彼らの存在はその正体は()(かく)として、有難いものとなっていた。


お互いの目的が分かっているお陰で会話は気安く、遠慮(えんりょ)もない。何より睡眠以外のもう一つの大きな恩恵が、旅に余裕を生む。その恩恵とは、食料だ。


朝目覚めると、いつも狩られたばかりの野うさぎや、鳥、卵が置かれている。最初に見た時はエメラルデラにとって不審(ふしん)な死でしかなかった。


「これは何だ、どうして…」


「たまにね、あるのよ。すぐに慣れるわ」


エメラルデラが不気味がる卵を、ヘルメティアは平然と取り上げてその日の朝食に出していた。


どうやら竜を信奉(しんぽう)するのは人間だけてはないらしい。


獲物は常にヘルメティアの傍らに置かれ、時には空の王者と呼称される白狼鷲の一群が、ヘルメティアの前に降り立ち、鋭い爪で狩り捕った野うさぎを数匹を置いていく姿まで見ることになった。

異常も続けば、正常になる。

最初こそ唖然(あぜん)としていたエメラルデラであったが、旅も終盤に差し掛かれば有り難くその恩恵に与ることにした。


道程の終着地点が近くなれば旅人の数は増えていき、人を警戒する生き物は近付いて来なくなる。

糧を捧げられることはなくなったが、反面、エメラルデラ達は人波の中に埋没し、賊の襲撃から守られることとなった。

ここまで人に埋もれてしまえば、皇弟であるシエスが見付かることもないであろう。ようやく、エメラルデラは肩の荷を下ろすことができた。


そこからはなかなか歩みが進まず、集団に紛れてから太陽が11回目の中天に届くなった頃に、三人の目に聖地の中心に鎮座する神樹の威容(いよう)が、姿を現したのだった。


「あれが聖地…」


エメラルデラは、初めて見る神樹の姿に息を飲む。大地を包み込むような雄大さは、いつからそこに存在しているのか(うかが)い知れぬ程に広々と枝葉を差し伸ばしていた。

葉と葉の間から溢れる陽光は天から地上に降りる階梯(かいてい)の様に、光の柱を幾筋も地に投げ掛けているのが遠くからでも見て取れた。



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