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王宮で探る 8

お花が素敵に飾られたテーブルに案内されて、席に着いた私たち。

コリーヌ様が、ジュリアンさんに向かって微笑んだ。


「ジュリアンもお久しぶりね。アルから聞いたけれど、あなたもライラちゃんに助けられたのだって?」


「そうなんです! ライラちゃんに邪気をとってもらわなかったら、どうなっていたことか……。あの痛みが続いたかと思うとぞっとします。ということで、俺はライラちゃんに忠誠をつくしました」


「まあ! 人当たりがよさそうに見えて、用心深いジュリアンが?」

と、コリーヌ様が驚いたように目を見開いた。


「ええ、俺を助けてくれたライラちゃんがかっこよくて、ハートをがっちりつかまれましたからね。アルがライラちゃんに愛想をつかされる時を狙っています」


そう言って、挑発するようにアルを見たジュリアンさん。


「おい、ジュリアン? 何、ふざけたことを言ってる。金輪際、ライラに近寄るな」


アルが冷たい声でジュリアンさんに言った。


「へええ。アルは、自信がないんだ?」


やけに楽しそうな顔で言う、ジュリアンさん。

アルを怒らせて遊んでるみたい……。


「そんなわけないだろ? 俺が愛想をつかされるわけがない」


アルが冷え冷えとした声をだした。


コリーヌ様が優しく微笑んだ。


「ジュリアンの気持ち、わかるわ。全力で助けようとしてくれたライラちゃんに私も感動したもの」


「そうなんです! コリーヌ様」


ジュリアンさんが大きくうなずいた。


「いや、そんなことないです……」


私は、とりあえず、ふたりをとめようと声をあげた。

このままだと、褒め殺される……。


が、コリーヌ様とジュリアンさんは、私が邪気を取った時の様子を褒めまくりながら話し合っている。


一体、それは、だれのことですか? という感じでいたたまれない。

おそらく、苦しみから逃れたため、ものすごく美化された私がおふたりの記憶に残っているんだね……。


それにしても、ジュリアンさんとコリーヌ様って、とっても親しそう。

その様子に少し驚いていると、アルが私の疑問を察したように言った。


「ジュリアンは、小さい頃から、用もないのに母上に会いに来て、俺の言動を言いつけるんだ。母上の手先みたいなもんだな」


「まあ、アル、失礼ね。私にとったら、ジュリアンも息子同然よ。それに、言いつけるのではなくて、アルが何も言わないから、ジュリアンが教えてくれるの。そうそう、ライラちゃん。前に手紙に書いたけれど、アルが庭や植物の本を読んで勉強しているって教えてくれたのも、ジュリアンなのよ」


「は? おい、ジュリアン。そんなことまで、母上に言ったのか!?」


「だって、氷の王子と呼ばれるアルが、『尊敬される庭師になるために』なんて本を真剣に読んでいた時の衝撃。どこを目指してるんだって思ったら、おもしろくって、黙っていられないだろう? 今までは、アルのおもしろ情報は、コリーヌ様にしか言えなかったけど、これからは、ライラちゃんにも教えられる。報告、楽しみにしててね、ライラちゃん」


そう言って、甘い笑みをうかべたジュリアンさん。


「ジュリアンはライラに接近禁止だ!」


アルが言ったところで、扉をノックする音がした。

入ってきたのは、メリルさん。お茶の準備してくれたみたい。


そして、目の前におかれた透明のティーポットをみて、思わず声をあげた私。


「うわあ! 素敵……!」


お湯の中で、色鮮やかな花がいくつも咲いて、揺れていたから。


「このお茶は虹の花茶って言うの。一つの枝に7色もの花が咲く植物のお茶よ」


「もしかして、それはララーユですか?」


この国にはない、珍しい植物だ。

前に本で読んで、いつか本物を見たいと思っていたんだよね……。


「さすが、ライラちゃん。他国の植物にも詳しいのね。これは、エスリル国のお客様が来られた時に、お土産にいただいたお茶なの。とても美味しかったから、ライラちゃんにもだしたくて置いていたの」


「コリーヌ様、ありがとうございます! まさか、ララーヌが見られて、しかも、味わえるなんて……。ものすごく嬉しいです!」


嬉しすぎて、ゆるみきった顔でお礼を言うと、隣の席で、アルが悔しそうにつぶやいた。


「こんなにライラを喜ばせるものを用意してるなんて、ずるいな、母上は……」


ブハッとふきだしたジュリアンさん。

コリーヌ様も楽しそうに微笑んだ。


「ライラちゃん、お土産用にも準備してあるから、持って帰ってね」


ええっ、それは嬉しすぎる!


思わず、大きな声でお礼を言った。


「コリーヌ様! ありがとうございます!」


「ほんと、母上、ずるいな……」

と、アル。


「なに、その変な嫉妬? 氷の王子がどんどん崩壊していく! 笑える……」


そう言いながら、ジュリアンさんは笑いころげはじめた。



美味しいララーユのお茶を存分に堪能したあと、アルが言った。


「じゃあ、ライラ。聞きたいことがあれば、母上に確認してくれ」


「うん。その前に、さっき、イザベル様からとれた種を確認してみるね」


私は、さっきとったばかりの種を、ひとつかみ、ポケットからとりだして、テーブルの上においた。



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