王宮で探る 6
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「種は、とれたのか?」
と、アル。
「うん、いっぱいとれた!」
にまにましながら、ポケットをポンとたたくと、何故か、アルに頭をなでられた。
「じゃあ、あの女が動き出す前に、ここを立ち去るぞ」
と、アル。
なぜか、アルは私の手をにぎったまま歩き出した。
動かないイザベル様は、その場に放置し、ジュリアンさんも、笑いながら追いかけてきた。
「あーもう、ライラちゃん、最高! 今の邪気をとってんたでしょう? それにしても、イザベル嬢の目の前で、あの動き! おもしろすぎて、夢にでそうなんだけど!」
アルが、ジュリアンさんを見ることもなく、ひやっとした声で言った。
「ライラの夢を見るな。見たら、殺す」
「いやいや、夢で見るのは不可抗力だよね?! ライラちゃん、アルが横暴!!」
「むやみにライラの名を呼ぶな。それと、夢くらいコントロールしろ」
「そんなのできるか!」
「俺はできる」
などと、言い合いながら歩いているふたり。
本当に、ふたりって仲良しだよね。
私には友達がいないから、うらやましいな。
が、今は、それよりも、アルに手をつながれたままのことが気になる…。
「ちょっと、アル! 手を離してよ! 恥ずかしいんだけど?」
「無理だ。ライラは何をするかわからないからな。心配だ。王宮内では手をつないで歩くことに決めた」
「え?! なに、その決め事?! 私、小さい子どもじゃないんだから! ほら、みんな驚いてる!」
王宮で働く人たちが、すれちがうたび、アルに頭をさげるけれど、一瞬、驚いたような顔をする。
「気にするな」
いや、気にするよ…。
「あー、ライラちゃん。それは仕方ない。だって、普段、王宮でのアルを見ている人からしたら、今の状況が考えられないからね。常に淡々として、隙もなく、冷静な氷の王子アルが、今は過保護全開で、婚約者を守るように手をつなぎ、まわりを威嚇しながら歩いてるんだよ?」
「え? 威嚇…?」
「うん、目を光らせながら歩いているから、目があった人は、怖いと思うよ。…あ、そうそう、さっきのイザベル嬢へ、アルが言い返したのもびっくりしたよね。ほら、アルって、素は毒舌だけど、そういうのも絶対に見せないし。普段は、たとえ失礼なことを言われても、冷静な王子の仮面をぬがないからね」
「あの女、ライラに暴言を吐いたんだぞ! 許せるわけがない。本当は、もっと言ってやって、今後、ライラを見たら逃げ帰るくらい打ちのめそうかとも思ったが、ライラを早くあの女から離したかったから、あれくらいでやめた」
私の手をがっしりにぎったまま、憤った様子で話しながら歩いていくアル。
アル…。
あのね、私を見たら逃げ帰るくらいって、そんなことをされたら、私も傷つくけど…。
まあ、アルがやめてくれて良かった。…と、ほっとしたが、ふと、ジュリアンさんのさっきの言葉がひっかかった。
「ジュリアンさん。今、『たとえ失礼なことを言われても、冷静な王子の仮面をぬがない』って言ったよね? イザベル様以外にも、アルに、失礼なことを言う人がいるの? アルは王子様なのに?」
私の問いに、ジュリアンさんは、声をひそめて返してきた。
「ああ、これがいるんだな…。人への礼儀も常識もない、やっかいな奴たちがね。さっきのイザベル嬢もだけど、それよりひどいのが、その父親のグリシア侯爵。それに、その妹である側妃アメルダ様。そして、その子どもの第二最低王子のフレッド。何故か、アルを下に見ている。だから、イザベル嬢も自分はたかだか侯爵令嬢のくせに、第三王子のアルとその婚約者のライラちゃんに向かって、あの口調なんだ。バカでしょう?」
と、笑顔で毒を吐くジュリアンさん。
しかも、途中、さりげなく、第二最低王子って言わなかった…?
「…アル、大変だったんだね」
「いや、口だけなら、怖くもなんともない。そもそも聞いてもないし、忘れた。…が、ライラに対して言ったことは、一言一句覚えている。絶対に後悔させてやる」
「…いや、アル。それも忘れていいから」
あわてて私が言う
すると、ジュリアンさんが、「アル、こわっ! でも、俺も手伝う。忠誠を誓ったライラちゃんへの侮辱、黙ってられないからね」と、ものすごく楽しそうに微笑んだ。
いやいや、ふたりとも。
私はなんとも思ってないから、ほんと、やめてね。
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