王宮で探る 5
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そんなイザベル様に、射殺すような視線をむけたアル。
絶対零度の声で言った。
「野蛮なのはそっちだろう。知りもしない相手に面と向かって、罵詈雑言を言うなど、品位を疑う。しかも、辺境を田舎だと? 侯爵家の人間としてあり得ない。他人のことをどうこう言うより、まずは、勉強しなおしてきたらどうだ?」
え、ちょっと?! アル?!
いくらなんでも、真顔でなんてこと言うの?!
あ、でも、イザベル様も私にそんな感じだったし、もしかして、これが、王都の社交界では普通なの?!
こんな恐ろしい会話が当たり前だったりするの?!
思わず、そばに立っているジュリアンさんを見た。
小声で、「これ、普通なの?!」と、聞いてみる。
すると、ジュリアンさんが驚いた顔で首を横に振った。
「いや…、アルが、これほど、素の毒舌を披露することはないかな…」
ぼそっと答えた。
ジュリアンさん…。素の毒舌を披露って…。
イザベル様が衝撃を受けた顔で、固まっている。
まあ、こんなこと、言われたことなんてないだろうし…。
が、背後の黒い翼のような邪気が大きくはばたいたとたん、顔が怒りで染まった。
「なんですって…! もうじき、田舎に婿入りして、王子じゃなくなるくせに、えらそうに…」
ちょっと、イザベル様?! これまた、なんてことを!
アルは、まごうことなき王子様だよ?
うちに婿入りはするけれど、生まれも育ちも王子様だよ?!
いくらなんでも、王子様に向かって、それ言う?
確かに、アルの言い方もひどかった。腹が立ったのもわかる。
が、言い返すのなら、せめて、もっと、やわらかい言葉でくるんで欲しい。
聞いているほうが、びっくりする。
と、その時、背後の大きな邪気の翼が、一層激しく羽ばたきだした。
イザベル様の怒りの感情をエネルギーにして、喜んでいるよう…。
そんなまがまがしいものを、アルにつけられたら困る!
と思った瞬間、黒い煙が、アルのほうへ飛んできた。
私は、とっさに、アルをかばうように右手をさしだした。
そして、手のひらをイザベル様にむけて、さささっと邪気をすい取るように動かす。
変な行動だと思われてもいい! 絶対に邪気をアルにつけたくない!
よほど、強い邪気なのか、すぐさま、手のひらから、種がうまれそうな気配がした。
すばやく右手をポケットにいれる。
私は、体の向きを少し変え、今度は左手でアルをかばう。そして、手のひらをイザベル様にむけて、さっきと同様に、さささっと動かしながら、邪気をすいとる。
その間、ポケットのなかで、右手の手のひらから、種が転がりでてきたのを感じた。
すると、左手も、はやくも種がでてきそう。
ということで、ドレスの左のポケットに左手をつっこむ。
また、すぐに、種がころがりでてきた感じがした。
やっぱり、大きな隠しポケット付きのドレスを着てきて、正解ね!
と、その時、イザベル様が、ものすごい目つきで私を見ていることに気が付いた。
なんだか、不気味なものを見る目つきだ。
まあ、わかるけど…。
変な動きだったし、絶対に普通の令嬢はしないもんね。しかも、王宮で…。
イザベル様は、私をそんな目で見たまま、すっかり固まっている。
そのためか、黒い翼のような邪気が、すっかり大人しくなっている。
とりあえず、防げたのかな?
そのとたん、グフッ、とふきだす声。ジュリアンさんだ。
「失礼…」
ハンカチをとりだし、口をおさえた。
背中を向けているが、肩がゆれている。存分に笑ってください…。
アルは、私の手をぐっとひいた。
「無理するな」
そう、心配そうな声でつぶやくと、私の手をにぎって歩き出した。
まだ、イザベル様は、固まっている。
おっと、これは、チャンスでは?
「アル、ちょっと待って!」
そう言うと、イザベル様に向かって、手のひらを動かして、邪気をとる。
にぎりこむと、種がうまれた。すぐさま、ポケットに入れる。
はたからみると、私がイザベル様に名残惜しそうに手をふっているように見えるかも。
ということで、それを何度か繰り返すと、早くもポケットがいっぱいになった。
よし、いい感じ!
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