王宮で探る 1
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王都の屋敷で滞在しながら、邪気のことを調べるため王宮へ通うことにした私。
コリーヌ様の許可を得て、そのあたりの事情を私の両親と、王都の屋敷を管理している執事のライアンには説明した。
執事のライアンは、私が小さい頃、辺境の屋敷で家庭教師をしてくれていた。
そこをお父様にみこまれて、王都の屋敷の執事になった人。
王都に来た時しか会えないけれど、ライアンは、私にとったら兄のような存在。
もちろん、私の能力のことも知っている。
ライアンがいるから、私は安心して、王都の屋敷で滞在できるんだよね。
そして、今日、ついに王宮へ行くことになった。
コリーヌ様に呼ばれたのは、午後のお茶の時間。
ちなみに、王宮でコリーヌ様のところへ通う理由を、表向き、アルとの結婚のための打ち合わせということにしている。
コリーヌ様に説明するため、コリーヌ様の邪気からとれた種と、ジュリアンさんの邪気からとれた種もバッグに入れ、準備はばっちり!
王宮では邪気をつけた人も多いだろうから、大きな隠しポケットがついた、私のお気に入りのドレスを着ていくことにした。
これで、種がいっぱいとれても、ポケットにさっと入れられるし…フフ。
そう思うと、ちょっと楽しくなってきて、にやけながら、馬車にのりこむ。
すると、なぜか、ライアンがついてきた。
「ええと、ライアン…? 王宮は入口までアルが迎えにきてくれてるから、一緒に来なくても大丈夫だよ?」
「いや、ダメだ。王宮は怖いところだから、お嬢のことをくれぐれも頼むと、しっかり、アルフォンス殿下に釘をさしておかないと」
そう言いながら、馬車にのりこんできたライアン。
やけに使命感にもえた目をしてる…。
ライアンも、私に過保護なんだよね…。
しかも、迎えもライアンがくるらしい。
ライアンは、王都の屋敷を管理しているから忙しい。手間もかかるし、来なくていいよ、と言っても聞き入れなかった。
ライアンから、王宮での注意事項を色々聞いているうちに、馬車は王宮に到着した。
馬車から降りた私を、出迎えてくれたのは、なんとジュリアンさんだ。
「ライラちゃん! よく来てくれたね! アルは王様に呼ばれてるから、ぼくが変わりに来たんだ。よろしくね。それにしても、ライラちゃんに王宮で会うなんて新鮮! やっぱり、かわいいなあ。楽しくなりそうー!」
と、驚くほど、軽い挨拶をしてきたジュリアンさん。
隣にいるライアンから、警戒するオーラがたちのぼった。
ものすごい笑顔で、ジュリアンさんの前に立ったライアン。
「…ええと、ライラちゃん。この笑顔が怖い人、誰かな?」
とまどったように聞くジュリアンさん。
「シャンドリア辺境伯の王都の屋敷で執事をしております、ライアン・ノルドと申します。辺境伯様より、王都でのライラお嬢様の身の安全を頼まれております」
笑顔をはりつけたまま、答えるライアン。
珍しく攻撃的なライアンの口調に、ひんやりとした空気が流れる。
私は、場をなごませようと、あわてて付け加えた。
「ええと、ライアンは、私の兄みたいな人なの!」
「へえ、そうなんだ。俺はジュリアン・ロンバルディーです。ぼくも、先日、ライラちゃんの兄になったから、よろしく、執事さん」
と、余計なひとことをつけたことで、ライアンの気が更に不穏なものになった。
ライアンは、くるっと私の方をむいて言った。
「ライラお嬢様。やはり、帰りましょう。王宮は怖いところですね」
ライアンの言葉に、きれいな笑みを見せたジュリアンさん。
「あ、それなら大丈夫。ライラちゃんには、俺、忠誠を誓ってますから。何があっても絶対守るし。ということで、なーんにも気にせず、お帰りください。過保護な保護者さん」
ものすごい軽い口調に、さらっと毒を含ませたジュリアンさん。
「忠誠…?」
と、つぶやくライアンに、私が説明する。
「ジュリアンさんの邪気をとったから、感謝してくれたみたいで…」
「…ああ、なるほどな。お嬢…。むやみに邪気をとるのは、やめてくれ。変なのが懐くだろう?」
ライアンは顔をしかめ、ジュリアンさんに聞こえないように小声で注意してきた。
が、雰囲気で察したらしいジュリアンさん。
笑顔ながら、ライアンを見る目が一気に鋭くなった。
ふたりの間で、不穏な視線がバチバチとまじわる。
もしや、このふたり、天敵かしら…?
と、その時、王様の御用が終わったアルが、急いできてくれた。
ということで、やっと、王宮の中へと足をふみいれた私。
コリーヌ様のお住まいへ向かうため、廊下を歩いていると、「ゲッ…」と、ジュリアンさんが言った。
どうやら、向こうから歩いてくる女性を目にして言ったみたい。
すかさず、アルが私の前に立ち、私の姿を隠した。
アルの背中しか見えなくなった。
ええと、あの方は一体誰なのかな…?
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