アルのお土産 19
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私は、手をパンッと打って言った。
「はい、2人とも種に集中!」
「あ、悪い、ライラ」
と、すぐに謝るアル。
「アルが素直すぎて、笑える…」
そう言って、ジュリアンさんが、また笑いだした。
が、すごい勢いでアルににらまれて、口を閉じた。
表情を変えて、私のほうへと向き直ったアル。
「以前、俺は、この種を調べたいから、植えるのを待ってくれ、とライラに頼んだ。…が、すまない。まだ、何もわかっていない」
アルが申し訳なさそうに言った。
「ううん。でも、植えずに保存しておいて良かった! まさか、ここで、つながってくるなんて本当にびっくり!」
今まで、違う場所で、違う人から邪気をすいとって生まれた種に、同じような模様がでたなんてことは一度もない。
とういうことで、今、私の好奇心がすごいことになっている。
どっちの種も、今すぐ植えて、成長を見比べながら観察したい!
もちろん、花も見たい!
一人で想像しながら、にまにましている私の目を、アルがのぞきこんできた。
「珍しい種のことになると、本当に楽しそうだな? ちょっと妬ける。…だが、楽しんでいるライラの瞳は、新緑の森のように輝いて、本当にきれいだ」
そう言って、アルが嬉しそうに微笑んだ。
冷たい美貌がゆるみ、甘さがでる。
私の顔が一気に熱くなった。
「ちょっと、アル! 真顔でなんてこと言うのっ?! 恥ずかしいよ!」
私が、熱い顔を片手であおぎながら、言い返す。
すると、アルは嬉しそうに、更に私に顔を近づけてきた。
宝石のような紫色の瞳にとらわれて、心臓がドキドキと音をたてる…。
アル! 私を殺す気なの?!
と、あせりだした時、ジュリアンさんが、盛大にため息をついた。
「おい、アル…。ライラちゃんが、真っ赤になって困ってるだろ? やめてやれ。…というより、俺の前でやめてくれ…。もはや、笑いをとおりこおして、うすら寒くなってきたわ…。で、ライラちゃん。アルのせいで大変なところ申し訳ないけど、ちょっと聞いていい? この邪気からとれた種を、もしや植えてるの?」
と、ジュリアンさん。
私は、アルのほうを見ないようにして、心を落ち着かせてから、答えた。
「ええ。私専用の庭があって、そこに植えてるの」
私の言葉に、ジュリアンさんがアルを見た。
「アルが庭師になれるほど本を読んでるのは、この邪気からとれた種を植えるのを手伝ってるから?」
「そうだ。奇想天外な花が咲くから、ライラの特別な力を知らない者には、見せられない庭だ。ライラは、ずっと一人で育てていた。今は、俺が手伝っている」
「まあ、こんなすごい力が知られると、ライラちゃんの身が危険だよな…。で、アルは、この種の何を調べようとしてたんだ?」
アルは、コリーヌ様の邪気からとれた大きな種を、ジュリアンさんの目の前に置いた。
「ジュリアン、よく見ろ。この種を見て、何か思わないか?」
ジュリアンさんは、アルの言葉を聞いて、じっと種を見た。
すると、はっとしたように、種をくるっとまわして、向きを変えた。
「こっちから見ると、この黒い模様が…、グリシア侯爵家の紋章みたいだ…」
「ああ、俺も同じ意見だ」
と、アルが目を鋭くさせて答えた。
え…?! この紋様が、グリシア侯爵家の紋章…?
つまり、コリーヌ様に邪気をつけたのも、グリシア侯爵家ってこと…?
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