アルのお土産 13
よろしくお願いします!
「つっ…、痛っ! 手が痛いっ!」
ジュリアンさんが、うめいた。
「おい、ジュリアン! 大丈夫かっ?!」
アルがあわてて声をかける。
私はすぐに椅子から立ちあがり、ジュリアンさんのそばにかけよった。
ジュリアンさんの右手を、黒い煙が、まるで生きもののようにずるずるとはっている。
黒い大蛇が右手に絡みついているように見えた。
相当な力でしめつけているのか、ジュリアンさんの顔は冷汗がでている。
すごく、強い邪気…。
ジュリアンさんは不審に思うかもしれないけれど、説明はあとにして、先に邪気をすいとらなきゃ!
「ジュリアンさん、大丈夫だから!」
私はそう言うと、ジュリアンんさんの右手にむかって、手のひらを近づけた。
そして、黒い煙をすいとるように、動かし始める。
私の様子を見て、アルは席をたち、部屋中の花を私のそばに運びはじめた。
あ、コリーヌ様の邪気をすいとって、私が倒れた時のことを覚えてたんだね。
私が、花から力をもらえるってこと。
ちょうど、この応接室には、アルが持ってきてくれたコリーヌ様からのお土産のお花が、沢山飾られている。
アルは、そのお花を、てきぱきと移動させはじめた。
「…うっ、…え…、ライラちゃん…? 一体、何を…? それに、アルも…。何をしてる…?」
苦しそうな顔のまま、驚いたようにつぶやくジュリアンさん。
「ジュリアンさん、あとで、全部説明しますから。今は、私にまかせて」
両手を動かしながら、ジュリアンさんに言う。
「大丈夫だ、ジュリアン。ライラにまかせろ。俺も救われたことがある」
と、アルも花を運びながら、ジュリアンさんに声をかけた。
「…くそ、アル…。…救われたって、なに…? 俺にまで、かくしてたわけ…? ライラちゃんのこと、隠しすぎだろ…? あとで、きっちり聞かせてもらうから…っ」
と、苦しそうに言うジュリアンさん。
私は集中して、両手を動かしながら、黒い煙を、どんどん、すいとっていく。
すぐに、手のひらからボロっと種が生まれた。
しまいこむ余裕はないから、テーブルに置く。
ジュリアンさんが、その種を凝視しながら、苦しそうにつぶやいた。
「ライラちゃん…、…今のなに? …もしかして、手品…?」
私が答える前に、アルが言った。
「後で説明する。今は、ただ、ライラに任せろ」
「…わかった…。ライラちゃん、わるいけど、よろしく…」
「はい、わかりました。大丈夫、すぐに、楽になりますからね」
と、私はジュリアンさんを安心させるように声をかけた。
それから、私は、動いている黒い煙にむかって、必死に両手を動かした。
時折、手のひらから種がうまれていく。
テーブルに置いた種が、こんもり山盛りになったころ、手首から先を残して、邪気は全部すいとれた。
もう、黒い煙の動きは止まっている。
ジュリアンさんが、ふーっと息をはいた。
「うわあ、すごく楽になったよ…」
見ると、顔色もよくなっている。ひとまず良かった…。
でも、手首から先はまだ真っ黒なんだよね。ここもなんとかしないと。
でも、強固な邪気で、なかなかすいとれない。
どうしようかな…。あ、そうだ!
私はジュリアンさんに言った。
「手首から先を、ちょっと、触らせてもらいますね?」
「え…?!」
と、ジュリアンさん。
「は…? 触る?! おい、待て、ライラ?!」
こっちは、アルの声。
が、まるっと無視して、私はジュリアンさんの真っ黒な手先に、自分の手のひらを置いた。
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