アルのお土産 10
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冷たい気を放ちまくるアルに、ジュリアンさんが、すごい勢いで首を横にふった。
「いや、いや、アル、それ全然違うから! ちょっと理由があってお茶の誘いにのっただけだから」
「理由ってなんだ。言ってみろ」
あの…、アル? なんだか、犯罪者を問い詰めるようなんだけど…。
ジュリアンさんが、私をちらりと見た。
一瞬、迷うように、瞳がゆれた。
ああ、私が聞いたらダメなことなのね?
「じゃあ、ちょっと、私は席をはずしますので、お二人でごゆっく…」
と言いながら、席をたつ私。
が、その瞬間、ぐっと手をつかまれ、席に引き戻された。
「ちょっと、アル?!」
私の手をつかんだままのアルに抗議する。
「行くな」
と、真剣な眼差し。
「あのね、アル…。ちょっと、席を外すだけだよ? 私がいたら、話しずらいだろうから、空気を読んだんだけど?」
「ダメだ。ここにいろ。1週間ぶりにライラに会えたのに、意味もなく離れるのは、時間がもったいない。席を外すなら、ジュリアンのほうだ」
「はあ? それじゃ、せっかく来てくださったジュリアンさんに悪いでしょ?」
その時、グフッと変な声が…。
見ると、ジュリアンさんがふきだしている。
「いやー、もう、がまんできない! なに、そのライラちゃんに向けるすがるような目?! かわいすぎて、笑える! 王宮では、眼光が鋭すぎて氷の王子と呼ばれているアルが、親鳥から離れないヒナみたいなんだけど?!」
品の良さをかなぐり捨てて、ヒーヒー言いながら、笑い転げるジュリアンさん。
「氷の王子? アルが…?」
私が思わず繰り返すと、アルが射殺しそうな視線をジュリアンさんに向けた。
あ、なるほど…。
そんなアルの視線を受けながらも、笑い続けるジュリアンさん。黒い煙もゆれている。
うすめの黒い煙なら、楽しんだり笑ったりしていると、さあーっと離れていくのは、よくあること。
やはり邪気にとって、明るい陽の気は苦手なんだろうなと推察する。
でも、これだけ、がっしり絡みついていたら、こんなに笑い転げても、黒い煙がうすまることも、離れていく事もないんだね…。
なんて冷静に観察しているうちに、ジュリアンさんの笑いもようやく落ち着いたみたい。
ジュリアンさんが、私にむかってにっこり微笑んだ。
「ありがとう、ライラちゃん」
「…へ?」
いきなりお礼を言われて、とまどう私。
すると、ジュリアンさんは、やわらかい笑みをうかべたまま、話しはじめた。
「アルは第三王子で、誰が見ても優秀。そんなアルをうとましいと思う人間は、王宮には沢山いてね。だれが敵かわからない環境で育ってきたんだ。だから、アルは、いつだって隙を見せない。なのに、ライラちゃんには本心まるだし。こんなアルを見せてくれて、ほんと、ありがとうね。ということで、俺、ライラちゃんを全面的に信用します! 改めて、アルともども、末永くよろしくねー!」
なんだか、ジュリアンさんの圧がすごい…。
第一印象では、人当たりのいい外側とは違って、どこまでも冷静な人のように思えたけれど、こんな熱い性格だったなんて、びっくりね…。
でも、アルの大切なお友達に信用してもらえるのは嬉しいな。
「こちらこそ、よろしくお願いします! ジュリアンさん!」
「あ、そうだ。末永くよろしくするために、ぼくはライラちゃんの兄でいいかな?」
「…え?」
「ほら、俺はアルとは腐れ縁だから、これからも離れないつもり。つまり、ライラちゃんとも離れないことになるよね。だから、俺はライラちゃんの兄になろうかなって思って。ライラちゃん、ひとりっこでしょ? うん、ちょうどいい。自分で言うのもなんだけど、頼りになるからね、俺。さあ、ライラちゃん、遠慮なく、俺のことをジュリアン兄様と呼んでみて?」
一気にそう言うと、期待に満ちた目を向けてきたジュリアンさん。
「お断りだ! ライラに、そんな兄は不要だ。…っていうか、おまえ、気持ち悪いぞ。ライラを見るな!」
私の顔を隠すように手をひろげるアル。
ジュリアンさん、どうしたのかな…?
あ、もしや、邪気が脳に影響を与えているとか?!
なら、急いで、邪気をすいとらなきゃ!
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