アルのお土産 9
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私が心を決めてしまった隣で、アルはジュリアンさんに更に質問をする。
「手が痛くなった時、どこか変わった場所に行ったのか? だれかに会わなかったか?」
アルの質問に、不思議そうにするジュリアンさん。
まあ、質問として変だもんね。
だって、普通、手を痛めた理由として、何をしたか聞かれるのならわかるけれど、アルは、どこで、だれから邪気をつけられたのかを探る質問をしてるもんね。
でも、不思議そうにしながらも、ジュリアンさんは少し考えている様子。
「あっ…、そう言えば、グリシア侯爵家に行った時からだ」
「グリシア侯爵家?」
アルの瞳が、一気に鋭くなった。
グリシア侯爵家っていえば、ひきこもりの私でもさすがに知っている。
というのも、第二王子の母である側妃アメルダ様のご実家。
今のグリシア侯爵様は、アメルダ様のお兄様にあたる。
今の王様には三人の王子様と一人の王女様がいらっしゃる。
王妃エリザベス様の息子であるイグアス王太子様と隣国の第二王子に嫁がれたローザリア王女様。
そして、側妃アメルダ様の息子、第二王子のフレッド様。
それから、側妃コリーヌ様の息子が、第三王子のアルフォンス殿下ことアル。
私はアルと婚約を結んだ時、国王様にご挨拶するため、王宮へ行った。
でも、そこには、側妃アメルダ様と第二王子のフレッド様はいらっしゃらなかった。
そのあたりを聞こうとすると、アルの表情が凍った。
「ライラは知らなくていい。俺も王子をやめて、辺境伯になるし、完全にあいつらとは縁がきれるから」
確か、そう言ったよね。
「ジュリアン。グリシア侯爵の屋敷によばれたのか?」
アルが、冷え冷えとした声でジュリアンさんに聞いた。
その声に、ぶるぶるっと震えるジュリアンさん。
「アル、怖いって…。ライラちゃんに嫌われるよ? 確かにグリシア侯爵の屋敷には行ったけど、グリシア侯爵には会ってない。その娘に招かれて、お茶をしただけだから」
グリシア侯爵家の娘って…? どっかで聞いたような記憶が…。
「あっ! あのゴージャスな美人の…。確か、イザベル様…?」
私が古い記憶からひっぱりだして言った。
「あれ、ライラちゃん。イザベル嬢を知ってるの? 絶対アルが会わせないと思ったけど…」
「…いえ、えっと、アルと婚約する前というか、あの…色々あったパーティーで、元婚約者に紹介されて挨拶をした方の一人だったので…」
と、しどろもどろになりながら答える私。
「ああ、なるほど。ごめんね、変なこと聞いて」
と、ジュリアンさんが気まずそうに謝ってきた。
「いえいえ」
と答える私だけれど、隣のアルの眉間のしわが深くなっている。
そう、グリシア侯爵家のご令嬢イザベル様と会ったのは一度だけ。
アルに助けられた、あのパトリックの家のパーティーで会った。
パトリックとアンナさんの事件がおきる直前、パトリックに婚約者として紹介されながらホールをまわった時、ご挨拶をした一人だった。
なんで、記憶に残っていたかというと、派手な雰囲気の美しい人だけれど、態度がね…。
公爵家の子息のパトリックに対して、すごく、えらそうな態度で驚いたから。
貴族社会に疎い私でも、さすがに、貴族社会の序列は身に染みている。
親しいわけでもないのに、侯爵家の令嬢が、公爵家の子息にあんな態度を示すなんてありえない。
驚いている私に、パトリックが、側妃アメルダ様の姪で、貴族社会で幅を利かせているグリシア侯爵家の娘だからと、説明したような記憶がある。
アルは、ジュリアンさんに冷たい声で言った。
「あれが、ジュリアンの婚約者候補という噂は本当だったのか…。おまえ、趣味が悪いな…」
ちょっと、なんてことを言うの、アル!
しかも、友達に向けるとは思えないほど、ものすごい冷たい目をしてるよ?
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