アルのお土産 6
よろしくお願いします。
午後になり、アルのお友達が訪ねてきた。
アルと一緒にお出迎えをする。
「はじめまして。アルの親友でジュリアン・ロンバルディーです」
私もカーテンシーをして、ご挨拶をする。
「遠いところ、ようこそいらっしゃいました。ライラ・シャンドリアと申します。お会いできてうれしいです」
普段は、庭仕事ばかりしている私。久々に貴族令嬢っぽい挨拶をすると、舌がもつれそう。
そう思った瞬間、何故か、アルが私の頭をなでてきた。
「ライラ。こいつに気をつかう必要なんてない。もちろん、こいつの名前も覚えなくていい。必要ないからな」
そう言って、私に微笑みかけてくる。しかも、頭をなでながら…。
「ちょっと、アル? なに、失礼なことを言ってるの?! それに、頭をなでるのはやめて! 小さい子どもみたいではずかしいでしょ!」
私が小声で抗議する。
アルのお友達が、あっけにとられたように目を見開いたあと、ぷっとふきだした。
「なにこれ?! おもしろすぎるんだけど…?! そうだ、俺のことは、気軽にジュリアンと呼んで。俺もライラちゃんって呼ばせてもらうから。ほら、アルの大事な人は、ぼくにとっても大事だから、仲良くしたいんだ。これからよろしく~」
筆頭公爵家のご子息だけれど、随分気さく…というか、軽め…?
でも、親しみやすくて、なんだか気が楽になった。
アルのお友達とは私も仲良くなりたいし、遠慮なく、ジュリアンさんと呼ばせてもらおう。
が、何故か、そんなジュリアンさんを鋭くにらんでいるアル。それを笑って受け流すジュリアンさん。
アルが硬質な美貌なら、ジュリアンさんは甘い美貌。醸し出す雰囲気も全然違うけれど、お互い信頼して素で接しているのが伝わってくる。
アルに、仲の良いお友達がいて良かった…。
私は心の底から嬉しくなって、にっこり微笑んで言った。
「こちらこそよろしくお願いしますね、ジュリアンさん!」
「へえ…。アルがなかなか会わせてくれなかったけど…うん、なるほど。アルの気持ちもわかるな…」
そう言って、私をものめずらしそうに、じっと見るジュリアンさん。
そのとたん、アルが、私とジュリアンさんの間に、すばやく体をいれてきた。
つまり、私の視界いっぱいに、アルの背中。
「ええと、アルは何をしてるの?」
驚いた私は、アルの背中に向かって言った。
すぐに、顔だけ振り返って、アルが答えた。
「やっぱり、ライラのその顔は、ジュリアンには見せられない。もったいない。俺が盾になる」
真顔で言うアル。
いやいや、見せられないって、なんで?!
ジュリアンさんがふきだした。
「アルが必死すぎて、笑える! 心がせますぎて、笑える! 気持ち悪すぎて、笑える!」
と、笑えるを連発するジュリアンさん。
アルの背中からでて、ジュリアンさんを見ると笑いすぎて涙がでたのか、ハンカチで目元をぬぐっていた。
こちらを見ていない。今だわ。
私はジュリアンさんに聞こえないように、こっそりとアルに言った。
「邪気、すごくついてるよ」
私の言葉に、アルの紫色の瞳が輝いた。
「そうか! 良かった!」
思わず、声をあげたアル。
いやいや、良かったはおかしいよ? 一応、邪気だからね?
アルの嬉しそうな声が聞こえたらしいジュリアンさん。
笑うのをやめ、不思議そうにアルにたずねた。
「何が良かったんだ、アル?」
「おまえをライラに会わせて良かったと言ったんだ」
きっぱりと言い放つアル。声が明るい…。
ジュリアンさんが、不審げな声でアルに言った。
「…アル、何か企んでるのか? その満面の笑みが怖すぎる…」
さすが、アルの親友。鋭いわ。
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