アルのお土産 4
不定期な更新ですみません!
庭仕事を終え、屋敷の中に入った私たち。
アルには応接室で待ってもらって、私は着替えて、応接室に急ぐ。
ドアを開けた瞬間、
「うわあ! きれい…!」
驚きすぎて、ポカンと口をあけてしまった私。
というのも、応接室が、華やかなグリーンのかわいらしいお花が、沢山飾られていたからだ。
「母上からライラへの土産だよ。花だけじゃなくて、ここにあるのもそうだ」
と、アルが手で示したテーブルの上には、リボンがかかった箱やら、バスケットに入ったお菓子など、ところせましと並べられていた。
「コリーヌ様から、こんなに沢山?!」
「ああ。母上から土産の説明を預かってきたから、読むぞ」
アルはそう言って、ポケットから紙をとりだした。
「まず、このグリーンの花は、隣国のベルダー国の小さな村の特産の花で、シャンという名前だそうだ。その小さな村というのは、先日、ライラへの手紙に書いた、『マーラが邪気を食べる生き物』と言い伝えられている村とのことだが…、ライラ、この説明でわかるのか?」
と、アルが不思議そうに聞いてきた。
「…あっ! あの?! 以前、コリーヌ様へのお手紙に、隣国の邪気からとれた変わった種のことを書いたの。ほら、アルも知ってるでしょ? 触ると痛くて、アルが心配して捨てろって言った種」
アルが、顔をしかめた。
「ああ、あの種か。俺が捨てろっていうのに、ライラは痛がりながらも、いろんな手袋をしてまで触ってた種だろ。結局、マーラの毛の手袋で触ったら、何故か痛くなくなった、よくわからない種だったよな?」
「そうそう、それ! そのことをお手紙に書いたら、コリーヌ様がマーラについて学者さんからお話を聞かれたんですって。そして、すごく興味深い考察を書いてくださったんだよ!」
思いもかけないお手紙の内容を思い出して、その時の興奮がよみがえり、つい声が大きくなってしまった私。
「へええ? …ずるいな、母上。俺には教えず、自分だけでライラを喜ばすなんてな。…まあ、いい。俺も隠し玉の土産がある…」
拗ねたような顔で、つぶやいたアル。
「アル? どうかした?」
アルは、意味ありげに微笑んだ。
「いや、母上には負けない、そう思っただけだ。…じゃあ、続きを読むぞ。その花は、今では生息していない野生のマーラが好んで食べていたと言われている花で、ライラの瞳の色に似て、きれいだから土産に選んだそうだ。それと、他には、マーラについて書かれた資料と、マーラの毛で編んだ帽子もあるみたいだ。ほら、その大きなリボンがかかった箱に入ってる」
「うれしい!! あけていい?!」
私が聞くと、アルが微笑む。
「もちろん」
ワクワクしながら、リボンをほどいて箱をあけると、漆黒の帽子がでてきた。
マーラの毛は、光沢のある美しい黒色で、手触りは抜群。
早速、かぶってみる。
「うわあ、やっぱり、手袋と同じで、あったかいねー!」
思わず声をあげると、アルが、まぶしそうに目を細めた。
「よく似合ってる。ライラのまぶしいくらいの金色の髪に、漆黒は映えるな」
「ありがとう、アル。…あっ!」
「どうした、ライラ?」
「このマーラの毛の色って、アルの髪の色に似てるよね! アルの髪も漆黒で艶があって、きれいでしょ。つまり、この帽子をかぶれば、アルとおそろいになれる!」
われながら、なんて、いい思いつき!
うれしくなって、アルを見る。
「くそっ…、かわいいな…。やっぱり、ジュリアンが邪魔すぎる…。だが、土産の為だ…」
と、苦々しい顔でアルがつぶやいた。
楽しすぎて笑いがとまらない私とは、正反対の顔をしてる…。大丈夫、アル?
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