アルのお土産 3
更新が遅くなってすみません!
それからは、いつもどおり、アルには庭でお手伝いをしてもらった。
「なあ、ライラ。このあたり、耕しといていいか?」
と、アル。
アルが指で示したところは、先日、無事、花が咲いて、花が散って、浄化されるように消えていった場所。
「あ、うん。お願い。次、そこに植えたいから」
私は、ビンの中で出番をまっている、邪気からとれた種たちを思い浮かべた。
庭仕事用のエプロンをして、手袋をはめたアルが、私にむかってうれしそうに微笑む。
アルは、自分用のくわを手に取った。
気づけば、アルの持ち込んだ庭用の道具は、私の持っている道具の数をすでに超えている…。
ここへ通い始めた頃は、私のお願いしたことだけをするという感じだったのだけれど、あっという間に、庭仕事についての知識も、私を越えてしまっているのよねー。
ということで、最近は、細やかにお世話をしてくれるアルに甘えっぱなし。もともと、だらっとした性格なので、私は植物に話しかけることに専念して楽してます!
ほんと、出会った頃の、きれいだけれど怖い王子様然とした姿からは、到底、考えられないよね!
土すら触ったことがなさそうだったアルが、庭師としてものすごい成長を遂げている。感慨深い…。
きっとアルなら、立派な辺境伯兼庭師になれると思う!
手慣れた様子で、土を耕し始めたアルを見ながら、そんなことを考えていると、体の奥のほうが、ほんわりとあたたかくなった。自然と、顔がゆるんでしまう。
なんというか、私、すごーく幸せよね…。
だって、私の庭は、私の変わった力によって生まれた種を植えている場所だから、信用できる人にしか見せられない。
だから、この庭をだれかと一緒に、楽しくお世話できるなんて、思いもしなかった。
ふと、アルが手をとめて、私の方を向いて言った。
「ライラ、なんで笑ってる? あ、もしかして、俺の土の耕し方、どこか変か?!」
あせったように言うアル。
「全然ちがうよ! アルが私の庭になじんで、お世話をしてくれることが嬉しいなって…。私、アルと知りあえて、ほんと幸せだなあって、しみじみ思ったんだよね」
満面の笑みで自分の気持ちを言った瞬間、アルが困ったような顔をした。
「あー、全く、いきなり、なんてこと言うんだ、ライラ。しかも、その顔…。やめてくれ…」
「え…?! 私、なんか、変な顔してた?!」
あわてて、顔を両手でさわって確かめる。
アルは首を横にふった。
「いや、ちがう…。ライラが言うことも、その顔もかわいすぎて、衝撃を受けただけだ…。邪心を持たないように、庭仕事に集中していたからな。完全に油断していた…」
「はあ…?」
ちょっと、意味がわからないんだけど…?
とまどう私を見ながら、更にアルは、ぶつぶつと言い募る。
「あー、その顔もかわいい。というか、全部かわいい。…やっぱり、ジュリアンを呼ぶんじゃなかったな。こんなかわいいライラを見せたくない…。あいつに見せるのは、やっぱり、もったいないだろ…。そうだ、ここへ着いた瞬間、王都へ送り返すか? …だが、あいつは、ライラへのとっておきの土産だからな…。あー、そうか、ジュリアンに目隠しをするか? それなら、あいつが、ライラを見ることはできないし、だが、あいつの邪気をライラは見える。よし、それがいい…」
「ちょっと、アル?! なに、わけのわからないことを言ってるの?!」
「あー、こっちの話。そうだ、ライラ。おれの土産は、後で届くから、楽しみにしといて」
そう言うと、アルは、それはそれは美しい笑みを見せた。
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