アルのお土産 2
引き続き、アルのお土産編です。
いつも来る時間よりずっと早いから、びっくりして私が聞いた。
「アル、今日は来るのが早かったね!」
「先日知らせたように、今日は、あとから土産…じゃなくて、俺の友人がくる。あいつがくる前に、ライラとの時間が欲しいと思って、昨晩、出発したんだ」
「え?! じゃあ、眠ってないの?! 大丈夫?」
「馬車の中で寝たから大丈夫だ。それより、急に友人がくることになって悪かったな」
私は、ブンブンと首を横にふった。
「アルのお友達に会うのは初めてだから、ちょっと緊張するけど、嬉しいよ!」
アルの切れ長の目が、スーッと細くなった。
「あいつに緊張なんか、しなくていいぞ。もったいないからな。ライラは微塵も気を使うな。もったいないからな」
「あの…アル? もったいないの使い方が、なんか変なんだけど?」
「いや、ほんとは会わせたくないんだ。ライラがもったいないからな…」
と、もったいないを連呼するアル。
やっぱり、もったいないの使い方が間違っているような…。
でも、それよりも、花を見せなきゃ!
「ねえ、アル! アルの邪気からとれた種が咲いたんだよ! ほーら、素敵でしょう!」
私の声に反応した花が、いっせいに私のほうをむく。
うわ、かわいいっ!
アルが、花をじっと見ると、なんとも言えない顔をした。
「…いつにもまして、すごいインパクトだな…。しかも、ライラの声に反応してるだろう? 聞こえてるってことだよな…。この不気味な花が、俺についていた邪気から生まれたと思うと複雑だ…」
せっかく咲いたのに、種になる邪気をくれた人がその反応じゃ、かわいそう!
ということで、この花の良さを力説しておこう。
「今回の花は、特に色が素敵だよね? グレーに赤い色が流れるよう。マーブル模様みたいで、おしゃれだよね? ほらほら、よーく見て!」
「マーブル模様? …おしゃれ? …いや、どう見ても触ってはいけないような、危険を感じる色だろ。なんというか、血が流れているみたいに見えるんだが…」
「えっ、そう?! アルって独特な見方をするねー」
私が感心して言うと、
「いや、俺はごくごく普通だ。ライラのほうが、ずーっと独特だ」
あきれたように言う、アル。
そうかな? いや、私は普通だと思う。
それにしても、なかなか、この子の良さが伝わらないね?
あっ、そうだ! もっとすごいチャームポイントがあったわ!
「じゃあ、これならどう。頑固なアルも、絶対に、かわいいと認めると思う!」
私はそう言うと、花に水をあげはじめた。
さっきと同様、水にむかって、いっせいにのびあがる花。
ゴクゴクと飲む音が聞こえてきそうなほど、水をすいこみはじめた。
「ほら、美味しそうにお水を飲んでる様子、すごーくかわいいでしょ?! ね、ね、ね?!」
得意になって、アルに花を見せびらかす。
そのとたん、アルが目元をゆるめ、微笑んだ。
「おっ! さすがのアルも、ついに、この花のかわいさを認めたわね?!」
うれしくなって、笑いながら言う私に、アルが無言で手を伸ばしてきた。
そして、ぐりぐりとわたしの頭をなではじめた。
「…ちょっと、アル?! いきなり、なにするの?!」
驚いてアルを見ると、アルが、はーっとため息をついた。
「ライラには悪いが、その花のかわいさは全くわからない。でも、嬉しそうに水をやるライラがかわいいのはわかる。だから、ライラ。俺に構わず、その花を愛でてくれ。俺はライラを愛でるから」
そう言って、私の頭をなで続けるアル。
端正な顔で甘く微笑むアルを見ると、ぶわっと顔が熱くなった。
ドキドキする!
「顔が赤い。かわいいな…」
そう言って、アルは、今度は私のほっぺたをやさしくなでた。
ドキドキを通り越して、バクバクしはじめた私の心臓!
ちょっと、どうしたの、アル?!
危険なのは、花の色じゃなくて、アルだよね?!
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