パトリックの記憶 9
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ついに王都へ帰る日がやってきた。
すっかり体調もよくなり、のどの痛みも消えたぼく。
帰る準備をしていると、迎えにきたお父様が部屋に入って来た。
忙しかったのか、ちょっと疲れた顔をしたお父様。
ぼくを見た瞬間、
「パトリックのおかげで、あの男はつかまったよ。ありがとう」
そう言って、優しくだきしめてくれた。
あの怖い男の人、つかまったんだ。良かった…。
安心して王都に帰れる。
でも…、やっぱり、ライラと離れるのは寂しい。離れたくない…。
だから、ここ数日、ずーっと考えていたことを、お父様に思い切って言うことにした。
「お父様、お願いがあるんだけど」
「なんだ、パトリック?」
お父様が、優しく微笑んだ。
「ぼく、ライラと婚約したい!」
「は…?」
お父様が、驚いたように目を見開いた。
「まあ! ライラちゃんと?!」
近くで荷物のチェックをしていたお母様が手をとめて、嬉しそうな声をあげた。
ぼくは、もう一度、力をこめてお父様に言う。
「ぼく、ライラと婚約したい! 婚約させて、お父様!」
「え? いや、待て待て待て待て、パトリック! そのライラちゃんとは、ここの令嬢のことか?」
あわてたように言う、お父様。
「そうだよっ!」
「パトリックは、…その…、なんだ、ライラちゃんが好きなのか…?」
とまどいながら聞いてくるお父様。
「うんっ! 大好き!」
ぼくは大きくうなずいた。
「まあ! パトリックったら!」
と、にこにこするお母様。
お父様が、
「なんというか、いい返事だな…? パトリックがそんなに自分の意思をはっきり言うなんて、珍しい。よほど、ライラちゃんのことが好きになったんだな…」
「わかるわ。ライラちゃんは、かわいくて、優しくて、本当にいい子なのよ」
と、お母様。
「うん、だって、ライラは、すごーくかわいくて、すごーくやさしい、ぼくの妖精だもん」
「妖精…って、あの物語とかにでてくる妖精のことか…?」
お父様は驚いたように、ぼくを見た。
「うん! 妖精って、本当にいるんだね」
ぼくが自信をもって答えると、お母様が楽しそうな笑い声をあげた。
びっくりしていたお父様が、真剣な顔で聞いてきた。
「なあ、パトリック。ライラちゃんを好きになったのはわかった。だが、婚約はお友達になるのとは違うんだぞ? 将来、お父様とお母様みたいに結婚して家庭を持つ約束をすることだ。やっぱり、やめた、なんて言えないんだぞ」
「わかってるよ! ぼくは、ずーっと、ライラと一緒にいたいもん」
「そうか…。それなら、パトリック。もうひとつ聞く。ライラちゃんは辺境伯の一人娘だ。つまり、婚約するということは、婿入りすることになる。辺境を治めるのは、王都とはまた違う難しさがある。沢山勉強して、沢山努力しないといけない。パトリックにできるのか?」
「できるよ! ライラと一緒にいられるのなら、ぼく、がんばる!」
ぼくの真剣さが伝わったのか、やっと、お父様がうなずいた。
「わかった、パトリック。友人の辺境伯の令嬢なら、私としては願ったりだ。だが、とても大事なことだから、改めて辺境伯に申し込む。それまで待ちなさい」
「はいっ、お父様。ありがとう!」
大きな声で答えるぼく。お父様がクスっと笑った。
「そんなに元気になって、本当に良かったよ。パトリック」
そう言って、ぼくの頭を優しくなでてくれた。
パトリック視点が続きます。
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