パトリックの記憶 5
不定期な更新ですみません!
今朝、目覚めると、お父様くらいの年にみえるお医者さんがいた。
ここの主治医の先生で、辺境伯と同級生なんだそう。
昨日も診てくれたらしいけれど、ぼくは全然覚えてない。
ぼくの様子をじっくり診察して、首をかしげた。
「熱もさがりましたね。のどにしめつけるような痛みがあるということですが、のどに異常は見当たりません。風邪かと思いましたが、風邪でもないようです。遠出で疲れがでたのかもしれませんし、引き続き、様子をみましょう」
そうお母様に伝えると、ここの執事さんに食事のことなどを細かく指示をだして、帰っていった。
でも、その間も、ぼくは、ずーっと、昨日会ったライラのことを考えていた。
また、会いたいな…。今日もきてくれたらいいな…。
少しして、ノックの音がした。
「どうぞ」
つきそってくれているお母様が答えた。
「しつれいしまーす」
そう言いながら、ドアが開き、コトコトコトとワゴンが入ってくる。
その奥に、金色に輝く光のかたまり。
ライラだ!!
ぼくは、あわてて、上半身をベッドから起こした。
「まあ、ライラちゃん? さっき執事さんに頼んだお水を持ってきてくれたの?」
お母様が、あわててかけよる。
ライラは、にっこり笑った。
「はい、そこで、執事のジュードから、うばい取って…じゃなくて…、あずかってきました!」
胸をはって答えるライラ。
かわいすぎて、笑ってしまう。
お母様も微笑んで言った。
「まあ、ありがとう、ライラちゃん。…ほんとに、女の子ってかわいいわね」
「ちがうよ。女の子じゃなくて、ライラが、かわいいんだよ」
すぐに、ぼくは、お母様の言葉を訂正した。
びっくりしたように、ぼくを見たお母様。
本当のことを言っただけなのに、何をおどろいているんだろう?
それから、お母様は、それはそれは楽しそうに微笑んで、うなずいた。
「パトリックの言うとおりだわ。ライラちゃんが、かわいいのよね! …そう、二人はもう会ってたのね。これは楽しくなりそうだわ…。フフフッ」
すると、ライラが、ワゴンからグラスをもちあげて、両手でおさえて、ぼくにさしだした。
「お兄ちゃん、はい、どうぞ」
「ありがとう、ライラ」
ぼくは、大事なものを受け取るように、ライラからグラスを受け取った。
実のところ、ぼくは、さっき、お茶を飲んだばかりだ。
たぶん、このお水は、お母様が飲みたくて頼んだものだと思う。
でも、ライラがぼくのために持ってきてくれたのだから、このお水はお母様には渡せない!
ぼくは、グラスのお水を全部飲みほした。
お母様が笑っているのが聞こえる。
「すごくおいしかった。こんなおいしいお水、初めて飲んだよ」
ぼくの言葉に、お母様の笑い声が大きくなった。
でも、ぼくは、ライラしか見ていない。
ライラは、澄んだ緑色の目をきらきらさせて、うれしそうに笑った。
「ライラちゃん。パトリックがあんまり美味しそうにお水をのむから、私もお水が飲みたくなったわ。食堂でいただいてくるから、その間、パトリックを見ててくれるかしら?」
ライラは、こくんとうなずいた。
「はい、いいよ! …じゃなくて、いいです!」
「じゃあ、パトリック。お母様は食堂まで行って、お水をいただいてくるわ。ライラちゃんとお話しててね」
「うん、お母様。うーんと、ゆっくりしてきていいからね」
「わかったわ。うーんと、ゆっくりお水を飲んでくるわね」
お母様はそう答えると、笑いながら、部屋から出ていった。
読んでくださっている方、ありがとうございます!
ブックマーク、評価、いいねをくださった方、励みになります!
ありがとうございます!