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パトリックの記憶 4

不定期な更新ですみません!

目が覚めると、心配そうな顔でお母様がのぞきこんでいた。


「パトリック、大丈夫?」


ぼくは、ゆっくりとうなずく。

まだ、頭はぼんやりしているけれど、だんだん、思い出してきた。

あの怖い男の人のところで、気持ちが悪くなって…。


もしかして、まだ、あの男の人のところ?!


ぼくは、あわてて、おきあがろうとした。

「うっ…」


体に力が入らない。目だけを動かして、あたりを見まわす。知らない場所だ。


「…ここ、どこ…?!」

なんとか、声がでた。


お母様は、ぼくの汗をふきながら、安心させるように優しく微笑んだ。


「ここは、お父様のお友達で辺境伯様のお屋敷よ。だから、安心して」


よく見ると、優しい色合いの部屋で、あたたかな感じ。

あの男のいたところとは、まるで違う。


良かった。あそこから出られたんだ…。


すると、お母様が、泣きそうな顔で言った。

「パトリック。あなた、高い熱があったの。気づかなくて本当にごめんなさい」


「熱…?」


「ええ。辺境伯様の主治医の先生に診ていただいたら、風邪だろうっておっしゃっていたわ。お薬で、熱は、さがったけれど、苦しかったでしょう?」


風邪? あの男を見るまでは、元気だったのに?

でも、声がでなかったのは、もしかして、風邪だったから…?


ぼんやりした頭で考えても、よくわからない…。

でも、これだけは言っておかなきゃ。


「お母様…、お父様に伝えて…。ぼく、さっきの屋敷で聞いてしまったの。あの男の人、悪いことしてる。お父様に気づかれたくないみたいだった…。お父様に、気をつけてって言って…」

話しをすると、また、のどがしめつけられるように痛い。


お母様は、驚いたようにぼくを見て、それから、しっかりとうなずいた。


「わかったわ、パトリック。お父様に伝えるわ。だから、大丈夫。ゆっくり休みなさい」

お母様はそう言って、ぼくの頬をやさしくなでた。


安心したら、目があかなくなって、ぼくは眠ってしまった。




次に目が覚めると、だいぶん、体が楽になっていた。


でも、のどが痛い…。


ふと、ベッドの横を見ると、椅子がある。椅子には、お母様の愛用しているひざ掛けがあって、サイドテーブルには、まだ湯気のたっているカップがあった。


ずっと、つきそってくれていたのかな?


ちょっと、体をおこしてみる。ゆっくりだけれど、ベッドの上で上半身だけ、起き上がれた。


その時、そーっと部屋の扉が開いた。


「お母様…?」

声をかけてみる。


と、きらきらしたものが、するりと、部屋に入って来た。

ぼくのほうに、飛び跳ねるように、近づいてくる。


お人形のようにかわいい顔をした、小さな女の子だ。


金色に輝く髪の毛は、ふわふわとはね、きれいな緑色の大きな目をくりくりさせて、楽しそうにぼくを見ている。


なんだか、見たことあるような…。

あ、小さい時に、お母様に読んでもらった絵本にでてきたあれだ。


「もしかして、きみって妖精…?」

ぼくは聞いてみた。


すると、女の子は、クスクスっと笑って言った。

「妖精じゃなくて、ライラだよ。ここの家の子なの」


「ライラ…」


「うん、そう!」

にこにこと、元気に答えたライラ。


まぶしい…、そう思ったら、のどの痛みがましになっていることに気がついた。


自然と、のどに手をやって、なでていると、ライラが、じーっと見ていた。

「お兄ちゃん、のど痛いよね? でも、大丈夫。なおるからね」


そう言って、ぼくののどにむかって、なでてくれるように手を動かした。


なんて、優しい子なんだろう。

ぼくの体の奥が、ほんわりとあたたかくなる。


ライラか…。ライラ、ライラ…。


気がついたら、ぼくは、ぼくの体に染み込ませるように、何度も何度も、心の中でライラの名前を呼んでいた。


光が体にいっぱい入ってくるみたいで、どんどん、体が楽になっていく。

ライラ、きみは、やっぱり、妖精なんだね。


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